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つづく日々の無職の先を塞ぐ影に誕生日

たった今、ちょうど20分前くらいに1つ歳をとった。

ここでバシッと年齢を表記するのは簡単なのだが、どうにもウッとなって本当に体調が悪くなりそうなので一旦やめておく。別に書いてもいいんだけどウッてなるとこの先の文章進められないからさ、一旦、一旦、ね、置いておこう。

どこに置いていても歳は取る。
今この文章を書いている分厚いMacbookも、10数年の付き合いだ。高校生の時にデザインソフトを使わなければならず、渋々買ってもらったものだ。どれくらい古いかというと、CDプレイヤーが内蔵されている。起動してページを立ち上げるまでに誇張なく5〜10分は時間がかかる。文章を打ち込むとなると、これも最初の1文を打ち込むのに誇張なく3分くらいかかる。こんなポンコツPCだが、長く一緒に時間を共にしてきた。

誕生日を迎えた瞬間、このPCを開いたものの、この文章を書けるまで20分かかりました。ポンコツにも限度がありますよこの野郎。時間が経つと、劣化するのです。生き物も、機械も、形あるものには仕方のないことだ。

これを買った時はちょうど10年前くらいだから、10年前の自分に思いをはせてみる。10年前の誕生日、何をもらって、何を食べ、誰といたのか。全く覚えていない。でも、希望に満ち溢れていたのは覚えている。もっともっとたくさんの作品を見て、吸収して、自分も同じくらいたくさんの作品を作って、自分のような今まで世間にはなんの評価もされてこなかった、さらにはモテなかった、さらにはいじめられていた。そんないわゆる日陰者たちのヒーローみたいな存在になりたいと何も疑わずに思っていた。今言葉にすると恥ずかしい限りだが、その気持ちに寄り添い、向き合うまでにここまで時間がかかってしまった。

だからこそ、このPCが買い換えられることがなかった。
何も、作っていなかったからだ。
作ることから逃げていたからだ。
だからこのオンボロPCで何か取り戻すかのように文章を書いている。

取り戻せない。何も。
ただ文章を書いているだけで取り戻せるものならばとっくにやっていた。
とっくにやっていたならば、自分をもっと信じていれば、自分の可能性を試していたら、10年後の今、最新のPCでもっと違うことをしてもっと働いて・・・東京タラレバ娘よりもアクの強いたらればをぶつぶつ考えながら、思わず泣いている。

スマホには先日2次面接まで受けた御社からのメールが届いていた。
見事に不採用だ。

わざわざ誕生日前日に不採用とは。こりゃあツイッター映えですね、しめしめ。そう思えるはずだったのに心には確実に強力な打撃が打ち込まれていた。単純に、打たれ弱すぎる。

誕生日、最初に聴いたのは10月12日放送の星野源のオールナイトニッポン。
星野源のラジオを聴くのが最近習慣になりつつある。

癒し・下ネタ・音楽の中に創作のヒントみたいなものが転がっていることが度々ある。やはりわたしの人生の中には星野源が必要だ!!!!!と強く思う。わたしだって、いつか、星野源のラジオに出たい。でも埼玉県出身でもなければ、一人っ子でもないし、楽器も弾けないし、AB型でもないから、仲良くしてもらえるんだろうか。(星野源は「一人っ子のAB型の人と仲良くなりがちなんですよ」と言っていた。三浦大知とかそうらしい)
スタッフの名前も記憶してきた。いじられキャラとして愛されるAD落合君である。声から読み取るに、気弱で優しい青年のようだ。深夜ラジオなんて昼夜逆転で大変な仕事だろう。

いつものことのようにAD落合君が「ブースにおいでよ〜」と星野源に呼ばれる。星野源が「落合君にインタビューだ!」と言い出すと、落合君のラジオで働いている経緯をインタビューしだした。
「宮藤官九郎さんのラジオが好きでよく聴いてました。池袋ウエストゲートパークがきっかけて、そこからあまちゃんを見て。ドラマで初めて泣きました。舞台も観に行ったり」
「そうなんだ。じゃあ、ラジオで一緒にできるといいね」
「はい」

「はぁぴばぁすでぇいとぅーゆ〜〜〜はぁぴばぁすでい、とぅーゆう〜」

星野源がおちゃらけてクセスゴバースデーソングを歌う。

さぐは激怒した。


「あ、ありがとうございます」
薄いリアクションの落合君、いや、落合に激怒した。
「今、テーブルにチョコレートケーキを置いてます。落合君、誕生日とのことでね!おめでとう!今日のメールテーマは『誕生日に困ったプレゼント』です!」


なあ〜〜〜〜にい〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!


落合!!!!てめえ!!!!!わたしだってめちゃくちゃにクドカン大好きだし、それで映像やりたいって思ったし!!!!!!演劇も好きだし!!!!!それをなんでお前は自分の好きなラジオの会社で働けて星野源に誕生日祝われて!!!!!!!!それなのにわたしの誕生日は不採用通知だぞ!!!!!!!しかもお前年下か!!!!!!!!チッ・・・・・・もう・・・・・・・・俺は・・・・・

(落合君は何も悪くありません。嫌っているわけでもアンチでもありません。ただただ、100%こちらの身勝手な言いがかりです。今日だけ、今日だけ許してください)

落合とわたし、何が違うんだ。
わたしはオンボロPCで文章を書きながら不採用通知の恨み辛みを書き殴り、落合は星野源にバースデーソングを歌ってもらっている。

なあ、きっと、これも自分を信じてこなかったツケなんだろう?


メソメソしていると、ラジオから流れてきたのは 星野源「アイデア」。


独りで泣く声も
喉の下の叫び声も
すべては笑われる景色

生きてただ生きていて
踏まれ潰れた花のように
にこやかに 中指を

星野源 「アイデア」



誕生日プレゼントにもらって困ったのは、不採用通知です。


10年後は最新のMacBookで感謝を述べられるだろうか。

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