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10年越しにNUMBERGIRLを見れて何度も死んだ話

どうも、This is さぐです。
フジロックのNUMBERGIRLを見終わったばかりのわたしは、動悸をやばいBPMにして目玉が転がり落ちてしまうのではというくらいに泣いていた。狂っててかっこよすぎて痺れて何度も死んだ。もしかしたら今脈が止まっていて、アドレナリンだけで生きている可能性もある。

 NUMBERGIRLとの出会いは高校生だった。美術系の高校に進学した。水を得た魚のようにオタクの勢力があまりに強すぎたクラスだった。おかげで好きなものは違えど友達になれることを知れたし、ありとあらゆる漫画やアニメを教えてもらえた。しかし当時ボカロ全盛期。アニソンも名曲揃いだった。故に、バンドが好きな友達はいなかった。本当はバンドをやりたいとうっすら思っていたものの、部活に入り損ねたし、そこで活動しているバンドが希望とか夢とかうわべだけの薄っぺらい歌ばかりでダサくて嫌いだった。高校生のわたしはとにかく「みんな死ね」と思ってバチバチに尖っていたので自分の好きなもの以外全部嫌いだったし見下していた。

 暗い部屋の片隅。孤独に粛々と音楽と映画にのめり込んでいく日々。暇さえあれば近所のTSUTAYAに通った。その時になんとなく手に取ったアルバム。ブレた躍動感のある写真にギザギザの赤いフォントでNUMBERGIRLと書かれたジャケット。

脳天を撃ち抜かれたようだった。

 聞いたことのないノイズ、初めて聞くリズム、よくわかるようなわかんないような歌詞、なのにノスタルジックな情景が浮かぶ。夕焼けの眩しさ、夕飯の匂い、漫画の紙の手触り、四季の風、汗が肌をつたう感覚。気持ち悪くない、いや、気持ち悪い、狂っている。それがとんでもなくかっこいい。

 数々のミュージシャンがNUMBERGIRLに影響を受けてどんどんかっこいい大人になっていく。わたしにとってその誰もがヒーローだった。すでにNUMBERGIRLを手にした時には解散して数年経っていた。各メンバーが別のバンドで活躍していてそれもめちゃくちゃ良かったけれどNUMBERGIRLから受けたぶち抜かれた脳みそは戻ってこなかった。

 とにかく狂ってやるぜ!と、今まで誰にも認めてもらえなかった負の感情をエネルギーに変換できたわたしは覚醒した。かなりかぶれまくった。向井秀徳がよく使うフレーズを使いまわし、NUMBERGIRLの怪しくインパクトに残るMVのモチーフ(狐のお面、女子高生、天狗とか)を取り込んだ駄作のイラストを描いてみたりした。

とにかくNUMBERGIRLそのものになりたかった。

 NUMBERGIRLに影響を受けまくりすぎて駄作を量産している最中、学年にたった1人だけNUMBERGIRLが好きだという同級生がみつかった。

 いやぁ、ほんとにいるんですよ。「天才」って。彼女は見たものをコピペかのように精巧に描け、センスも学年1飛び抜けていた。色彩感覚、モチーフの意外性、誰の真似事でもない彼女しか出せない世界観。以来、あまりNUMBERGIRLが好きだって進んで公言できなくなった。彼女は難関大学の1番倍率の高い学部に現役であっさり受かり、画家として国内ならず海外でも活躍している。天は二物以上あっさり与える。

 大学の演劇サークルで、自分で作・演出・出演の舞台をやった。初めてやったことを、初めて多くの人に褒めてもらえた。「天才だと思った」と言ってくれた人もいた。泣いた。

出囃子は「NUM-AMI-DABUTZ」だった。

思い出してる 思い出してる 思い出してる

なにもかもうまくいかなかったこと。悔しかったこと。全て狂ったもん勝ちで狂ってやろうとすればするほど真面目さが邪魔をして空回りしたこと。

 念願の10年越しに観られたNUMBERGIRL。独特の向井秀徳のMCでもう次なんの曲にするかわかってしまうナンバガあるある。一曲一曲演奏するたびに律儀に深いお辞儀をしてすぐマスクする向井秀徳。えげつないギターさばきをするのに涼しい顔でぴょんぴょん跳ねる田淵ひさ子。アンプに置いてあるお〜いお茶。時々笑顔を見せつつ向井秀徳の長めのMC中にかなりしっかり汗を拭くアヒト・イナザワ、淡々と、ときに激しく演奏、メンバー紹介でなぜか年齢を発表される中尾憲太郎47歳。解散ライブでは28歳だったらしい。(後々ツイッターで知った。情報違ってたらすみません)

10年。

 暗い部屋の片隅。孤独に粛々と音楽と映画にのめり込んでいく日々。暇さえあればNetflix、アマプラ、TVerを隅々まで漁った。有名になった同級生を疎み、自己嫌悪し、夜は眠れず朝は起きれず、働けども働けども行き先はいつもストレスによる病。

 念願のNUMBERGIRLが観れたわたしは塞ぎ込んだ毎日を送っていた。高校生のときのわたしが今の私を見たら、一体なんて言うんだろうと思うと涙が止まらなかった。

 関東地方、涙、のち酒。日常に生きる少女から女性になった。バリやばい毎日は続いているが、少女さぐよ。お前はがんばらなくてもほどほどに狂った大人になる。むしろ普通の大人になれず苦しむ。なんでなのかはマジでI don't knowだ。

 でもな、悔しいことばっかりなんだけど、無駄なことはなかったよ。こうやってNUMBERGIRLについてめちゃくちゃ熱く語れるし。中学・高校生の時の自分が「これはかっこいい!!面白い!!」って痺れされるようなことができる大人になりたいと思い出したよ。

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