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いま、両利きの経営はなぜ必要なのか?

両利きの経営は、意図せず「両天秤の経営」になってしまいがちです。

新規事業は既存事業と性質が異なり、成果がすぐには見込めません。そのため経営資源の配分はどうしても既存事業のオペレーションに偏ってしまう傾向があります。

しかし、企業を今後30年、50年と存続させるには事業を多角化し、新しい市場機会の探索と既存事業のオペレーションを並行する必要があります。

今回は事業の多角化を実現するために必要な考え方である「両利きの経営」について考えを記してみます。

「両利きの経営」はなぜ必要なのか?

2016年、大先輩で元ソニーCIOの長谷島眞時さんが上梓された「変革せよ! IT部門」の中でバイモーダル戦略という内容があり、
勝手に図解させて頂いて下記の図を持って「僕たちキュレーションズはリターンサイドの『出島戦略』の部分を取り組んでいます」とご報告に伺ったことがありました。

なぜ「出島」が必要なのか?バイモーダル戦略を用いて解説
(キュレーションズ社作成資料より引用)

「バイモーダル戦略」とは?
ガートナーでは、IT部門には2つの流儀という意味の「バイモーダル」が必要だと説いている。基幹系システムのように従来の業務を支える線形システムと、デジタル・ビジネスを実現するための非線形システムで、それぞれの開発・運用のやり方を整えることを意味している。

引用元:も…求められるのは「両方大事」のスタンス | 日経クロステック(xTECH)

そして、この頃は僕たちキュレーションズも出島戦略を得意とした「出島会社」と形容されるようになっていました。

出島会社あらため「出島戦略」とは、成熟企業内にビジネストランスフォーメーションを起こすために、小さな組織を出島的に用意し、既存事業のアセットを活用しながら新しい事業を探索し、そこで得た知見を既存の組織・既存の事業に還元し改革を促す戦略です。

それから3年後の2019年、チャールズ・A・オライリー氏の著書『両利きの経営』と本質的には同じことが書かれていたのが印象的でした。

バイモーダル戦略と両利きの経営で説かれていたことに対して勝手な解釈をすると、
高度経済成長時代につちかわれた、大量生産大量消費の社会に応じる形で、新製品開発に勤しみ、生産効率を上げ、バリューチェーンを確立することで成長してきた「企業の安泰な時代」が過ぎ去ろうとしているということです。

こうした変革期のなかで、企業が次の50年を生き残るために「次の手」を打つことが経営課題なのだとしたら長谷島さんが語るバイモーダル戦略では「リターンサイド」を、オライリー氏が語る「探索サイド」をどう創り上げていくのか?ということが求められているのです。

実際に企業は探索サイド(=リターンサイド)に対しあらゆる手を打っているというのが、現在です

その肝心の「探索」の目的は、社会や構造が変化していく中で企業の次の成長を形作ること。成長はイノベーションとオペレーションを螺旋的に織りなすことで持続的な経営につなげることを意味しています。

引用元:「新規事業を成功に導く組織論」より

持続的な経営を実現している企業事例

イノベーションとオペレーションを螺旋的に繰り返し、持続的な経営を実現している企業は身近に多いです。GE(ゼネラル・エレクトリック)社もルーツは電化製品でしたが、いまや保険・金融サービスやIT事業などがメイン事業です。

ウォークマンで一世を風靡したソニー株式会社もいまやコンテンツ・金融などいまは別事業が主体となっていますよね。最近だとNetflix社は持続的な経営のために事業を発展させた事例として、象徴的です。

引用元:「今の利益よりも未来のニーズに向き合う、ビジネス・トランスフォーメーションの事例」1. ビジネス・トランスフォーメーションとは より

Netflix社は動画のストリーミング配信のリーディングカンパニーですが、初期のビジネスモデルはDVDレンタル事業でした。そこから映画を扱う知見と「いつでも・どこでも・視聴したい」という顧客ニーズに応えるために、インターネット技術を使って動画の配信事業を立ち上げました。

動画のストリーミング配信は既存事業である、DVDレンタル事業と競合するビジネスでしたが、Netflixはあえて競合ビジネスに参入したことで、今日の「スマートフォン1台で動画をみる」という顧客行動にいち早く対応できました。

結果的に競合サービスと大きな差をつけることができたのも、事業転換を決定した経営判断が影響していることは言うまでもありません。

つまり企業は、環境、市場、顧客が求めていることに対して、自社のドメインを柔軟に変更しないと生き残れない厳しい環境に置かれているのです

デジタルは持続的な経営になぜ必要なのか

ちょうど先月、経済産業省が発表していた「DXレポート2.2」。DXの理解、解説の変遷として下記3点を強調していました。

  • デジタルを、省力化・効率化ではなく、収益向上にこそ活用すべきであること

  • DX推進にあたって、経営者はビジョンや戦略だけではなく、「行動指針」を示すこと

  • 個社単独ではDXは困難であるため、経営者自らの「価値観」を外部へ発信し、同じ価値観をもつ同志を集めて、互いに変革を推進する新たな関係を構築すること

つまり、デジタルは目的ではなく、手段なのです。
経産省は2018年に発生した新型コロナウイルス感染症が蔓延する以前から「DX推進ガイドライン」を出していましたが、個人的には、探索側にこそ、このガイドラインの意味、本来的な意味であるDXが欠かせないと思っています。

次回のnoteではこの「DXをどう踏み出すのか?」について考えをご紹介したいと思います。

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