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明日、春が来たら2021

『大豆田とわ子と三人の元夫』、いわゆるまめ夫のロスが大きい。火曜の番組表をみて、なんで?なんでないの?と平気で思っちゃう。

さて、まめ夫はよく、『カルテット』『スイッチ』に並ぶ、坂元裕二×松たか子の三部作に位置づけられている。

これら三部作のどれも、別々の松たか子さんに出会えて楽しい。『HERO』のときから松たか子さんを陰ながら推してきたわたしにとって、ここ数年の変人・松たか子への変貌は驚きしかない。

もはや彼女は、ヤマザキ春のパン祭りとレリゴーで置きに行ってるタレントではない。
笑いながらキレる役が板につきすぎて、素なのかと思えるくらいの内なる狂気を秘めた大女優だ。

そんな松たか子さんのデビュー曲といえば、「明日、春が来たら」。

作詞は坂元裕二さん。

そう、この曲もまた坂元裕二×松たか子の一作品。

せっかくなので久々にじっくり聴いてみた。
さわやかさ全開の歌詞に、松たか子さんの若さがふんだんに反映されていて、心地よい。

そこでふと思った。
大豆田とわ子ってこの歌詞みたいな高校生活送ってそうだなと。

ということで、24年前の大豆田とわ子かもしれないこの曲について詳しくお伝えします。

「明日、春が来たら」(1997年)
歌詞はこちらから。


この歌詞、じつはそこそこ具体的だ。
スタジアム、スパイク、ウイニングボール…。

この歌における「君」はどう考えても野球部員。ということは、どう考えても「三人の元夫」たちの要素からかけ離れている。

最終回に突如現れた、竹財輝之助さん演じる「甘勝くん」もなんか野球部っぽくない。というかむしろバレーやってた感じがする。

じゃあこの「君」、いったいどんなひとなんだろう…?

こうなったら八作でも鹿太郎でも慎森でも、御手洗でも小鳥遊でも甘勝でもないようなひとなんだと思う。

大豆田とわ子にはたぶん、好きの基準はない。
だけど、3話で鹿太郎のウソに同意しなかったあたり、さすがに馬には恋しなさそう。

さてこの曲、タイトルからして春らしさ全開にみえる。だけど、よく読むと「君」との夏の想い出をたどっているような歌詞になっている。

なにしろサビに夕立が出てくるし。このあたりのややこしさが、やっぱり坂元裕二作品っぽい。

そして、わたしがどうしても気になるのはここの一節。

そばにいたら二人
なぜかぎこちなくて
そばにいればもっと
わかりあえてたはずなのに

そばにいたのに「ぎこちなくて」、そばにいれば「わかりあえた」。

「そば」がグルグルしてる…?

…!

これ、よく坂元作品に詳しいひとが指摘する、「循環(ループ)」ってやつだ。絶対そうだ。

まめ夫の1話に「楽しいまま不安。不安なまま楽しい」という、循環に満ちたセリフがあったことを思いだす。


そうなったらもう、この歌詞もとわ子のセリフにしか聞こえなくなる。

『カルテット』のグループ名が「Doughnut Hole」だったように、坂元裕二氏は環状のものが好きなのかもしれない。

じつは、リリースから10年後に「明日、春が来たら97-07」という別ヴァージョンが発表されている(歌詞はこちらから)。

10年経った心境の変化を反映したものらしい。そこで新たに歌詞に加えられたのが「銀座線」。
地下からあがって見えた都会の空をみて、10年前に過ごした「君の名前」を思い出したのだろう。

10年経ったのに、日常のふとした瞬間に恋い焦がれた相手を思い出すって、なかなかロマンチックに生きている。

やっぱりこれもなんだか、とわ子っぽい。

それぞれの夫たちのことが大好きなんだけど、それ以上の大好きを求めようとして「元」にしてしまう、とわ子ならやりかねない。

いっそ、

「銀座線の階段を駆け上がったら高校時代の恋人の名前を思い出した大豆田とわ子」

って伊藤沙莉さんにナレーションしてほしい。
脳内再生が余裕すぎるもの。

ただし、この曲とまめ夫には明確に違うところがある。

「明日、春が来たら」は「走る君を見てた」を歌い出しにして、恋焦がれる気持ちが歌われる。

一方、『大豆田とわ子と三人の元夫』は「走る慎森」で視聴者を笑わせにくる。
なんなら慎森、とわ子に追われるどころか全力で追いかけてたし(2話参照)。

デビュー曲で淡い恋心を歌いあげていたひとが、20数年後に主演したドラマで、バツ3どころか自力で網戸を直すのに10話もかけるドラマに主演するなんて、いったい誰が想像しただろうか。

そしてこれから、松たか子さんはどこへ向かっていくのか。推しの女優、歌手のひとりとして、これからも追いかけていきたい。

それではドラマのラストシーンのセリフをもういちど。

大豆田とわ子と三人の元夫、ありがとう!

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