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わたしのいとしい、かいじゅう15

自分の矛盾の正体がわかったんだ。

わかっていたんだ。

だけど、それを認めてしまうと
そっくりなあんたとわたしの違いが
はっきりと、くっきりとしてしまって
もう

俺たちは似たもの同士だから

とは言ってもらえなくなるのが
馬鹿みたいに怖かった。

懐かしい人を思い出すもんだ。

違うから出会えたのにね
その違和感を愛したはずなのにね
欲張って
なんとかあんたをわたしに溶かそうとした。

そんな事は出来ないし、したくもない顔をした
あんたをみてさ。
今度はわたしが溶け込もうとした。

背中を預けられる女がいいと言うから

じゃあ目が合わないじゃん。
見つめ会えないじゃん。
そう思った日から
綺麗なその目を忘れまいと
必死に向き合うことを強要した。

若かったんだ。ごめんね。
幼かったんだ。ありがとね。

あのピリピリとした内側の感触は
きっと人生で一度きり。
わたしの目を覚ますために味わったもの。

もう10年も前に別れたあんたが
たしかに私を作った。
わたしのなかの私を呼び起こした。

そしてわたしを置き去りにした。

たかが恋を失ったくらいで

そんな風に笑われたこともあったけど。

口も悪くてモラハラ気味で不器用だったけど
真っ直ぐで愛情深くて臆病あんたのこと
やっぱ嫌いにはなれんのよな。

思い出の中にさようなら。
いつかあんたが教えてくれた歌にあったね

さよならだけが私達の愛だった。

思い出の中にさようなら。



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