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【社会洞察】CO2排出について考える(2) ~鉄鋼編~

昨今のCO2排出においては、以下のような順位で排出量が多いことを記事にしました。記事を読むのが面倒な方は、以下の表のように、鉄鋼・自動車・家電が大きな割合を占めているのだなと思っていただければと思います。

日本のCO2排出全量に対する各項目の割合

今回の記事では、順位1位の鉄鋼に関して調べていこうと思います。

なぜ鉄鋼でCO2が排出されるのか

早速結論から行きましょう。鉄鋼でCO2が排出される理由は、高炉製銑が最も大きな理由です。

鉄鋼におけるCO2排出の割合(2019年、経産省資料を元に筆者作成)

なお、以下の経産省の資料から作成しています。
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/transition_finance_suishin/pdf/003_05_00.pdf

では、高炉製銑とは何でしょうか。それは端的に言うと、「酸化鉄をコークスで還元する」プロセスのことです。

製銑のプロセスに関しては、日本製鋼のこちらのページに記載があります。

https://www.nipponsteel.com/company/tour/pdf/seisen_seiko.pdf

こちらのページによると、製銑プロセスでは、焼結鉱と石灰石とコークスを高炉に入れて、鉄鉱石を還元させます。このプロセスで最もCO2が排出されます。

先ほどの経産省の資料P11において記載がありますように、製鉄プロセスにおいてカーボンニュートラルを実現する技術は確立されていないとのことです。

いかにして製鉄プロセスを脱炭素化するか

答えは、水素で鉄鉱石を還元する方法です(以下のページを参照)。

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/course50.html

現行の手法においては、鉄鉱石Fe2O3のOをコークス(C:炭素)で還元します。そのため、CとOがくっついてCO2が排出されます。それと比較して、水素で還元する手法は、H:水素で還元します。そのため、HとOがくっついて、H2O、つまり、水が排出されます。この手法を水素還元製鉄と呼びます。

しかしながら、本手法はまだ確立されていません。詳細は以下のページに記載があります。

どのような課題があるかというと、高炉の温度を保てないという問題があります。

その理由は、高炉は2300度の高温で還元させますが、水素による還元反応では温度が下がってしまうからです。炭素による還元では発熱反応なので、温度が上がりますが、水素による還元は吸熱反応なので、温度が下がるそうです。
そのため、コークスを混ぜて温度を保つそうですが、そうするとCO2が排出されてしまいます。それでもCO2の排出量は減らせるので、現状50%のCO2削減を目指しているそうです。残る50%はどうするかというとCCUSという地下にCO2を埋める手法を使います。CCUSに関しても、どのような土壌が適切かという議論があるかと思いますが、それに関しては、またの機会に記事にまとめようと思います。

まとめ

  • 鉄鋼においては、鉄鉱石を還元する「製銑」プロセスでコークスを使うのでCO2が発生する

  • 解決策としては、コークスを水素に置き換える水素還元製鉄が提案されている

  • 実現できていない理由は、コークスと違い、水素の場合は高炉内の温度を高く保てないためである。

  • この課題に対しては、コークスと水素のハイブリッドによって、50%のCO2排出量削減を目指している。コークス由来の残る50%分は、CCUSで対策しようとしている。



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