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西方に 夢の世界が 待っている

平等院鳳凰堂

 中東ドバイに駐在している会社時代の後輩が近況を伝えてきた。海外経験の長い彼から年に2、3度くるメールは、内向きになりがちの目を外に向けさせてくれる。彼は10数年前にニューデリーに駐在してインド市場の開発に従事していた。その頃のインドは、日本人が駐在する国の中で最もハードシップが高いとされていた。現在は中東、アフリカの市場開発に取り組んでいる。如何に社命とは言え、インドや中東・アフリカの市場開発は、余程の使命感と体力がないと務まるものではない。

 中東・アフリカは政情不安で紛争の絶えない地域だし、地震等の自然災害も各地で起こっている。つい最近も、ニジェールでのクーデター、モロッコで地震、リビアで洪水が発生し、日本のメデイアでも大きく取り上げられている。便りをくれた後輩に、そんな地域でどのような商売をしているのか聞いてみた。
 市場開発に取り組んでいるのは歯科材料で、シリア、イエメン、リビア等の紛争の絶えない国々でも人々は日々の営みは続けており、需要は旺盛とのことである。また、代金の取りっぱぐれのリスクが高いので、取引は全て前金だそうだ。これぞ、「郷に入れば、郷に従え」であり「蛇の道は蛇」だ。

 思い返せば、1980年代はNIES、1990年代は東南アジア、2000年代は中国、2010年代はインドと海外市場の開発の最前線は日本から西に西にと移って行った。その動きに応じて出張先もソウル、台北からバンコック、ジャカルタそして、広州、上海に、更にはニューデリー、ムンバイへと移って行った。そこまで行った所で、我等の世代の仕事は終わったが、後輩たちは更に西に進み今やインド洋を越えた地で頑張っている。

 コロンブスのアメリカ大陸発見、アメリカでの西部開拓も進む方向は西であった。西には夢がある。西には何かが待っている。その昔、平安の貴族が願ったのは、西方浄土に往生することであった。我等の世代が次に目指すは西方浄土か。

(2023.09.21)

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