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幼稚園の選び方

職業柄、「幼稚園をどこにしたらいいか」という相談を受けます。

10年くらい前までは、幼稚園それぞれの特色で、知っている情報を教えたりしていました。最近は、少し考えが変わってきました。

何のために選ぶのか

みなさんは、園を何のために選びますか。

本来は、人間形成の本当に重要な時期だから、何より優先して決めることかと思うのですが、どうしても「通いやすさ」から選んでいないでしょうか。園バスがある/近い/給食が出る、などなど。もしそうなのだとしたら、わたしのアドバイスは「どこでもいい」です。いずれにしても、そんなに大きな影響はありませんから。

「通える範囲」で「選びきれない」ということは、さほど差がないということだと思うんですね。だとすると、「この子はあの園に行ってるんだね、だから◯◯なんだね」というほどの差は表れません。

では、どこに差が出るかというと、親が「通いやすさ」よりも「教育内容」を重視したときに、その差は表れます。つまり、「園の差」ではなく「親の差」なんです。この時期、親以上に影響のある教育者はいません。

さて、迷っている園、もしくは「通いやすさ」から選択肢に入れてなかった園のうち、教育方針に明らかに他と違うところはありませんか?金銭、距離などから、「いいな」と思いながらも選択から外した園はありませんか。

思い切ってそこに入園させる決断ができたとき、幼稚園・保育園は、みなさんのお子さんにとって、大きな意味を持つ教育機関になります。

園が差をつけるのではなく、「親の教育意識」が差を生むんです。同じところに通わせても。

小中高になったら、「どうして園をもっとちゃんと選ばなかったんだろう。園がいちばん自由に選べたし、どこを選んだとしても対応は簡単だった」と思うと思います。

保育園か幼稚園か認定子ども園か

それぞれ、管轄の省庁が違うので、存在意義が違います。とはいえ、ここ10年くらい、その差はどんどん無くなっています。通っている子どもも、ここ数年、ほとんど差がなくなっています。

最初から決めないで、それぞれについて調べ、選択肢を広げてもいいかと思います。

今現在はどうか分かりませんが、わたしがいくつかの園にお邪魔して思ったのは、「さぁ、これからリトミックをやるよ」と言ったとき、どのくらいの時間をかけて移動するか(子どもの気持ちに寄り添い、気持ちが切り替わる前1時間くらいかける園もありました)、「やりたくない」という気持ちの子に対してどうするか(怒る園もあるし、自由にさせてあげる園もあります)など、細かな対応に違いがあるということです。わたしの経験では、保育園の方が「子どもそれぞれのペース」に寛容であるように思いました。集団生活をしつけねばならない、というねらいが無いからかもしれません。

が、これは、入ってみないと分からないし、先生(園長先生や主任の先生の方針)にもよるかなと思います。

大人数か少人数か

今ではさまざまな形態の園があるので、全園生徒が10人足らずで同じ人数くらいの先生たちが見てくださっているところもあるし、大規模な園で行事や人付き合いの規模が大きいところもあります。

みなさんのお子様には、どちらが合いますか?

カリキュラムやレッスンが必要か

教育の場といっても、大勢の子どもたちを見ていて感じるのは、園のカリキュラムはほとんど影響がないということです。もちろん、音楽の先生としては、週に1度のうちのレッスンよりも、毎日の園生活の方がずっと時間が長いのだから、質がいいに越したことはないと思ってしまいますが、「音楽に力を入れている園の子だからといって、特別、他の子より音楽的に優れているということはない」です。

3才〜5才の子どもたちにどのように音楽を与えるか、また、子どもの発達に則してどんなことができるのかは、本当に奥が深く、とても大変です。「今度、園の発表会で鍵盤ハーモニカでやるのー!」と言って、教室のピアノで演奏してくれる曲の難しいこと!!!リズムも音階も何もかも、幼児の発達を超えています。ましてや、中にはとても不器用で理解の遅い子もいるのではないでしょうか。その子がどんな指導を受けて、発表会に間に合わせるのかと思うと、胸が痛みます。

親さえ望まなければ、日々の園生活をたくさんのカリキュラムや発表会のために費やさなくて済むのにな、と思います。

園児時代に「すごいことができる」をあまり望まない方がいいと思います。その方が、先生方もじっくり、子どものペースで付き合ってあげられるし、何より子どもたちが無理なく過ごせると思います。

わたしが多くの子どもたちと教室で接していて、園のカリキュラムがものすごく子どもに影響を与えていると感じることはないです。英語、スポーツ、音楽、絵画など、その時点では良い思い出になるかもしれませんが、その後の小中高で影響が出ていることはないです。それより「生まれつき」や「好きかどうか」の方が大きく表出します。

だから、園を選ぶとき、「何をやってくれるか」ということはあまり考えなくていいと思います。

アートや音楽、運動などは、ぜひ、「親に見せるため」ではなく、子どもの発達に合わせて、クリエイティブな作品を作ること(大人の手が加わってないもの)をやってほしいなと思っています。

発達に則しているか

すべての保育方針を「発達」を基準に考えたら、ほぼほぼ、何もやらなくていいのになと思います。

どの園も、子どもの発達からすると、やりすぎ、急ぎすぎと思います。

親としては、ほどほどに見ておくのが良いのではないでしょうか。「ついていけない」と嘆く必要は全くなく、「行ったら100点」。行きたくないときはたまに休んだっていいと思います。

子どもは自分の発達を自分で本能的に捉えているように思います。邪魔をしなければ、うまく自分でコントロールしていくように思います。

自然の中で、子どもに無理のない程度の集団行動をさせておけば、たいがいの力は子どもが勝手に身につけていくのではないでしょうか。

今から選ぶとしたらどこに入れるか

わたしは、子どもたちを保育園に行かせました。今ほど知識があったわけではありませんが、昔の自分に「よくやった!」と褒めてあげたいです。

今考えて素晴らしかったなと思うのは、

・園長先生が人格者だった
・先生たちの距離感がとても良かった(仲良しだけど馴れ合ってない感じ)
・食育が素晴らしかった

この3点です。何箇所か見に行ったり、実際に転園したりしました。転園する前の園は悪くはなかったです。特に、先生ひとりひとりを思い起こすと、本当に子どもたちに寄り添ってくれた方もいらっしゃいました。でも、園全体の雰囲気というのは、やはり全然違って、おそらくそれは、園長先生や主任の先生が作り上げるものではないかと思います。

とはいえ、「雰囲気」ですから、なかなかひとりの母親が判断するのは難しいと思います。

わたしは最初から、園を「教育の場」だと考え、とても重視していました。

今でも子どもたちに大きな影響を与えていると思うのは、食育です。毎日、給食に使われる食材を説明したりクイズをしたり、園児が栄養素ごとに分けて、どのようにバランスが取れているか確認していました。これによって「食に対する意識」が育てられたと思います。

当時は見つけることはできませんでしたが、野山の自然な形状に合わせて毎日遊ぶことによって体が作られる保育をしてくれるところがあったら、そこに入れたと思います。

自由に遊ぶこと、しっかり食べること、寝ること、友だちと喧嘩したりして関わること。この時期必要なのは、「生きる」という当たり前のことで、家庭だけではできないことをほんの少し手伝っていただけるだけで十分なんですよね。

幼児期の教育を急いだところで、今の大人がどうなっているかということを考えたら、さほど影響がないということがよく分かると思います。


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