璦憑姫と渦蛇辜 16章「死者の行軍」②
田は収穫の時期を迎え十分な蓄えを得て、賽果座はそのまま平穏な冬へと向かうかに見えた。しかし海の向こうでは予期せぬ事が起こっていた。
賽果座においてその異変に気づく者はまだいない。
鯨や鯆は事の起こりを同胞へ伝えた。魚類達は右往左往し、あるものは海藻の森へ逃げ込みあるものは岩の割れ目に身を潜め、またあるものはなるべく遠くへと逃れた。そしてそのまま海底の砂に潜んでいたもの達は、見たこともない生き物と遭遇することになる。
海が割れたのだ。
ワダツミが『波濤』を揮った先の海の水が左