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連載小説「璦憑姫と渦蛇辜」

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<神代のはざまに 還ることのない故郷を夢見た。これは 少女の家族を探す旅。> 夏休みの冒険ファンタジー映画のノベライズをイメージした、神話世界の冒険譚。 タマヨリが嵐の後、島に漂… もっと読む
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ほぼ200字で分かる『タマヨリヒメとワダツミ』

約半年ぶりの連載再開となります『璦憑姫と渦蛇辜』ですが、さて、どんな話だったのか………、…

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璦憑姫と渦蛇辜 19章「父と娘」③

「竜宮城………」 とタマヨリは呟いた。 「きものの中にある物を寄越せ」 とワダツミに云わ…

アイウカオ
1か月前
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璦憑姫と渦蛇辜 19章「父と娘」②

 海賊達の視線がワダツミと浪の間を行き来する中で、タマヨリは震えていた。 それまで船上に…

アイウカオ
1か月前
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璦憑姫と渦蛇辜 19章「父と娘」①

 白い月と黒い海のはざまを死人に守られた舟がどこかを目指して進むのを、磯螺は見ていた。 …

アイウカオ
1か月前
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璦憑姫と渦蛇辜 18章「月代の船出」④

 白々とした月に照らされて賽果座から出た舟は二艘きりだった。  賽果座の王は和睦の受け入…

アイウカオ
2か月前
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璦憑姫と渦蛇辜 18章「月代の船出」③

 波座の様子がいつもと違うと礁玉は感じていた。 口に『波濤』を咥え、鯱はあらん限りの速さ…

アイウカオ
2か月前
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璦憑姫と渦蛇辜 18章「月代の船出」②

 昨日の狂乱が嘘のように鎮まりかえった浜辺にタマヨリとワダツミは腰をおろしていた。いつもよりいくらか波の高い鈍色の海を眼前に、浅い眠りを繰り返していた。どちらかが眠ればどちらかが覚める。 何も問わず何も語らないふたりの間を小蟹が横切っていく。寄せる波に洗われる小石は引く波にカタカタと鳴った。 陽が天頂に届こうとするころ、歩み寄ってくる人影が見えた。 「久しいな」 とワダツミに向けて声を発したのは礁玉だった。 「礁姐………!」 「よくここが分かったな」とワダツミは応じた

璦憑姫と渦蛇辜 18章「月代の船出」①

「それが和睦の条件というのだな、淤緑耳殿」 死者の行軍から一夜明けようとする頃、巫女の社…

アイウカオ
2か月前
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連載再開するよー

気を抜くと間があいてしまう連載長編「タマヨリヒメとワダツミ」の掲載の準備に入りました。 …

アイウカオ
3か月前
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璦憑姫と渦蛇辜 17章「おまえが唄ってくれるなら」③

「ああワダツミか………」 還っていく魂の丸く白く光る幽けき光の群れの中にふたりはいた。 …

アイウカオ
5か月前
25

璦憑姫と渦蛇辜 17章「おまえが唄ってくれるなら」②

 砂の上にぴくりともせず横たわっている妹を見ながら海彦は思案した。 「地べたで寝るは風邪…

アイウカオ
5か月前
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璦憑姫と渦蛇辜 17章「おまえが唄ってくれるなら」①

 とこ永遠の国から現へと、海に死せる者はことごとく陸へと押し寄せた。その中にあってタマヨ…

アイウカオ
5か月前
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璦憑姫と渦蛇辜 16章「死者の行軍」③

 国中の喧騒をよそにタマヨリは浜辺に立ちつくしていた。 海から逃げかえってきた漁師が妻と…

アイウカオ
6か月前
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璦憑姫と渦蛇辜 16章「死者の行軍」②

 田は収穫の時期を迎え十分な蓄えを得て、賽果座はそのまま平穏な冬へと向かうかに見えた。しかし海の向こうでは予期せぬ事が起こっていた。 賽果座においてその異変に気づく者はまだいない。 鯨や鯆は事の起こりを同胞へ伝えた。魚類達は右往左往し、あるものは海藻の森へ逃げ込みあるものは岩の割れ目に身を潜め、またあるものはなるべく遠くへと逃れた。そしてそのまま海底の砂に潜んでいたもの達は、見たこともない生き物と遭遇することになる。 海が割れたのだ。 ワダツミが『波濤』を揮った先の海の水が左