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女子寮時代の思い出・・・段ボール・・・頭につけると重たいよ!

 日本の職場を生き抜く上で、体育会運動部出身者が圧倒的に重宝される、と言うことがいまだによく言われる。残業至上主義、休日出勤至上主義のブラックな労働環境を温存してしまっている元凶のように思えて、疑問もありつつ、帰宅部出身の身からしても、「確かに部活動経験は重要かも!?」と思うことは多い。ハードな練習や、理不尽な上下関係などを、「無給」で経験していて、そもそも、運動神経があり、長きにわたりトレーニングをして鍛えているから、基礎体力が凄まじい。中高時代などの多感な時期に、無給で、ハードな経験をしているのである。その後、働き始めた後は、ハードだけれども給与が出るようになるので、若い頃の運動部経験よりも楽になると感じる人もいるらしい。その上、集団を取りまとめたり、若手を育成したり、競争の中で勝たなければ存在意義がない、という意識を強く持ち、人の能力を選別する、選別される、と言う経験を無数に積んでいるわけで、やはり「帰宅部(等)」のゆるい活動出身者と比較した際に、圧倒的な組織内生存力、みたいなものがあると思う。

 体育会運動部の経験はまるでなく、帰宅部マインドのまま生きていた自分であったが、自分が住んでいた女子寮での生活は、文化系なのに体育会系、と言えるような世界であった。とてつもない数のイベント運営をしつつ、入ってくる後輩たちを自分たちで選考して、留学生や海外経験が長かった日本人たちとの交流や摩擦にも悩みつつ、さらにはキャラクターが異なる学年を取りまとめる日々だったので、今にして思えば、生活自体が劇団員のようであった。PTA顔負けの長時間の会議もあったし、当時は、掃除当番や電話番もあった。ある意味、組織の運営に加えて、入寮者の採用、育成、みたいなことをやっていたのだった。しかも、かなり昭和なノリであった。今や本当に忌み嫌われる「昭和の宴会芸」みたいなことを、無数に経験していた。自分はそういった業務とは無縁であったが、結果的に、人事採用に関わっている人も、周囲に、とても多い。 

 男子寮との交流は、今思うとありえないような謎の伝統がたくさんあった。全裸で簀巻きにされた男子寮の先輩の顔に女子寮生が化粧をして、男子寮に返すなどの、昭和すぎる?伝統行事にも、積極的に参加していた。

 全裸も、簀巻きも、男性の顔に化粧、というのも、今の時代の文脈では、人権侵害と言われてしまいそうなのだが、全てを「そういうもの」だとして受け入れていた。女子寮に運ばれてきた男子寮生は、全裸だったとしても、簀巻きにされているので、全裸であったかは、よくわからないのであった。

 寮生は皆、入学式の次の日から仮装をして大学に通うと言う伝統があった。アメリカからの留学生が始めた文化という説を聞いたのだが、いつどうやって始まったのかはわからない。先輩の指導のもと、真剣に議論をした結果、私たちは、巨大な段ボールの「花」を頭につけ、段ボールで作った葉っぱを手にはめた。顔の部分が花の中央部であったため、縮尺で言うとものすごく巨大な花にならざるを得なかった。何か、昔のウルトラマンの敵のようないでたちであった。花にならずに「蜂」になる人たちもいた。蜂の格好をしている人たちが森の中に帰っていく様は、なんとも言えず自然との共存、というようなエコな雰囲気に満ちていた。今風に言えばSDGS。知らんけど。

 入学式の次の日から1週間、仮装した状態で生活をするというのは、何かそれまでの自分の価値観を、根本から変えさせられるような経験であった気がする。授業に行くと、頭のダンボール部分が大きすぎて教室に入れないので、まず段ボールを外して教室の外に置いたまま授業に出て、授業が終わったら、外に置いておいた段ボールをまた頭につけるのだった。すれ違う人すれ違う人、皆が驚きと「ウケる!」みたいな表情を向けてくれるのであった。そのため、初対面の人ともすぐに打ち解けられたような気がする。

 1週間、巨大な段ボールを頭につけて生活をすると、夜寝るときに段ボールを外しても、段ボールがついている感覚に襲われて、ふと、目が覚めたりするのである。頭に段ボールをつける、と言う仮装文化は、自分の代からスタートして、今はそれが20年以上続く伝統になっているらしい。

 今やハロウィンやコスプレというような世界が存在して、仮装、そのものが、割とメジャーなものになったけれど、巨大なダンボールを頭につけて1週間生活した時の感覚を知っている人(特に女性)は、まだこの世にそんなにいないと思う。改めて、あの経験はとても貴重だったと思うのであった。

 まさか伝統になるとは思わなかったけれど・・・。

以上です!

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