先日のNHKのプロフェッショナル　仕事の流儀、でのYOSHIKIの映像を見た方はどのくらいいるだろうか。私は見た。そして衝撃を受けた。深夜2時にジムでトレーニングをするYOSHIKI。ライブの前に、ピアノの前に座り続けるYOSHIKI。ピアノの習い事に絶望していた、永遠に上達しなかった私ですら、似たようなフレーズを弾いたことがあるのではないかと思えるほどの、基礎練習を何時間も何時間も重ねる姿。ちょっとだけ笑いながら「X！」と叫んでエックスポーズをする姿。マネージャーなのか何者なのか、よくわからない金髪のスタイル抜群の美女、みたいな女性たちが常に傍らにいるYOSHIKI。千葉県の地元に、災害後のボランティアに行く、役所で登録をするYOSHIKI。ビニールハウスの中で活動に励むYOSHIKI。番組スタッフにYOSHIKIさん、と言われて「名前は言わないで！」と怒るYOSHIKI。プロフェッショナル仕事の流儀の歴史に燦然と輝くであろう、見どころがありすぎの回であった。

　自分が高校生くらいの頃、周囲にはXJAPANの熱狂的なファンの友人が結構いた。ビジュアル系バンド、の中では音楽性の高さとその存在感が圧倒的で、富や名声を得て、ふかふかのソファーに座って、たまーにちょっと演奏してる、みたいな勝手なイメージを持っていた自分を、恥ずかしく思った。孤高の天才、世の中に対して反逆をしている元祖ビジュアル系、といったようなパブリックイメージとは裏腹に、圧倒的な努力家であり、これまで様々な危機的な状況を経験しながらも、ずっとXJAPANの曲を奏で続けてきたその歴史の重みには、恐れ入ってしまった。YOSHIKIの素顔、と言えるのかはわからないが、番組の中で出てきたYOSHIKIはびっくりするほど繊細で、とてつもなく、純粋な方なのかもしれない、と思った。自らを、徹底的にストイックに、追い詰め続けているようなその姿には、恐ろしさすら感じてしまった。Netflixを契約して、「ヘッドスペースの瞑想ガイド」をやったらいかがですかと、勧めたくなった…。

　孤高の天才、と勝手に思っていたYOSHIKIすら、あれだけの時間をかけて、ピアノの基礎練習をし続けて、深夜にトレーニングをして、鍼治療を受けているのだから、YOSHIKIのような天才ではない私のような人間も、地道なことを、ひたすらに積み重ねていくしかないのだと思わされた…。

2022年に見たテレビ番組の中で、圧倒的にインパクトのある回であった。数々の困難を乗り越えて制作されたであろう、NHKのスタッフの方々には、一視聴者として本当に感謝したい。面白過ぎるドキュメンタリー番組を作ってくださって、YOSHIKIのイメージを完全に変えてくださって、ありがとうございました！