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【ネット歯科大】イヌも歯周病になる

 歯周病は、むし歯とならんで口の主要な病気です。実は、歯周病になるのは、ヒトに限ったことではありません。
 
 近年、イヌの歯周病についても注目が集まっています。イヌも歯周病になるのです。
 
 なお、今回、「ヒト」や「イヌ」などとカタカナで表記するのは、生物の種類のひとつとして取り扱っている表現だからです。
 
 歯周病の主な特徴として、歯石がつく、においが出る、歯ぐきが下がる、などが挙げられます。イヌの歯周病でも、同じような症状が生じます。
 
 歯周病は歯の周囲に細菌が感染し、歯を支えている骨が溶けていくことによって最終的に歯がぐらぐらして抜けてしまう病気です。イヌの歯周病においても、細菌が原因だという点は変わりません。
 
 歯周病を起こす菌種は、ヒトとイヌではわずかに違いがあるようです。
 
 歯周病では細菌が骨を溶かすのではなく、免疫反応が介在します。細菌感染があると宿主(ヒトやイヌのことです)の免疫反応が生じ、その過程で歯の周りの骨を溶かしていきます。
 
 したがって、宿主反応の違いは歯周病の進行にも影響を与えます。歯周病が進みやすい人と進みにくい人がいるのは、これがひとつの理由です。
 
 そう考えると、ヒトの歯の周囲に反応を起こしやすい細菌と、イヌの歯の周囲に反応を起こしやすい細菌に違いがあることは納得できます。
 
 では、ヒトの歯周病菌はイヌに感染することはないのでしょうか。また反対に、イヌがもっている歯周病菌がヒトにうつることはないのでしょうか。
 
 このあたりは研究途中のテーマですが、研究報告をみると飼い主がもっている歯周病菌がペットのイヌから検出されることもあるようです。
 
 つまり、ヒトとイヌとで、歯周病菌はうつる可能性がある、ということです。
 
 口の中は、適度な温度が保たれており、水分があり、定期的に栄養が届けられる環境です。細菌にとっても、快適な環境だといえるでしょう。
 
 歯周病菌に限らず、口の中にはさまざまな細菌が生息しています。細菌がいるからといってすぐに問題を起こすというわけではありません。細菌のバランスの中で、歯周病に影響する細菌の割合が増えると、悪化していくことになります。
 
 イヌはヒトと同じように、歯周病になりやすい動物です。歯周病は細菌感染によって生じる病気ですので、過度におそれる必要まではないものの、細菌の移動がどう生じるかを考えることは予防の観点からも重要です。
 
神奈川歯科大学 青山典生

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