net stones

情報が流れるままのネットメディアに批評の石(意志)を置く。

net stones

情報が流れるままのネットメディアに批評の石(意志)を置く。

最近の記事

「余計」なウマ娘は嘘つき

writer:Tofu on fire はじめに、或いはミスターシービーへ、その後ろの吉永正人へ、もしかしたら寺山修司へ 「ウマ娘」というメディアミックスコンテンツがあります。2021年にアプリがローンチされた、実在の(すでに亡いかあるいは繁殖入りした)競走馬が美少女となり、アイドル活動を兼任したアスリートとして走り、現実の過去にあった競馬の名勝負をさまざまなコンテンツで追体験することのできるものです。漫画、アニメなど多角的にコンテンツを展開しており、みなさんももしかした

    • SOULWAXとシミュレーショニズム

      writer:沖鳥灯 ベルギーのロックバンド「SOULWAX」(1992‐)を初めて聴いたのはくるりの「OH!MY RADIO」(J-WAVE/毎週金曜/2001年10月 - 2003年9月)だと思う。セカンドマキシアルバム「マッチ・アゲインスト・エヴリワンズ・アドヴァイス」(2001.3.7release)の一曲のはずだ。 Soulwax - Conversation Intercom (youtube.com) 2001年のことなので記憶はあやふやである。一聴してた

      • 歯車たちのマザー・グース(2)──鋭利なマチズモ・『メタルギア・ライジング』について

        writer:城輪アズサ はじめに2:マチズモの位相  前回は小島プロダクションによるゲームソフト『メタルギア・ソリッド2:サンズ・オブ・リバティー』(以下、『MGS2』)の分析を通じて、ゼロ年代において先駆的に提示されていた今日的な状況──トランプ現象をはじめとする諸々のトピックによってしるしづけられる、ポスト・トゥルース的状況──を成り立たせている「情報」のフレームについて見てきた。  それに対し本稿で行うのは、ゲームソフト『メタルギア・ライジング:リベンジェンス

        • 歯車たちのマザー・グース(1)──予兆・レトロスペクティヴ・『MGS2』について

          writer:城輪アズサ はじめに:トゥルースの位相  2016年12月19日、アメリカ合衆国。その日、対立候補を破り、一人の男が第45代アメリカ大統領に当選した。ドナルド・トランプ。不動産王として知られた実業家であり、傲岸不遜で、こう言ってよければアナクロな発言によってしばしば物議を醸してきた彼の当選は後に「トランプ現象」と呼ばれ、時を同じくして出現した「ポスト・トゥルース」という言説の、主要なトピックとして分析の対象となった。  多くの識者が指摘するように、件の選

        「余計」なウマ娘は嘘つき

          二つの戦後の詩人たち━━石原吉郎、吉増剛造、野崎有以、雨澤佑太郎をめぐって(第三回)

                                         沖鳥灯 4 犠牲者の代弁としての詩  雨澤佑太郎(一九九七ー)の第一詩集『空位のウィークエンド』(二〇二三・十一)を論じるにあたり、本書刊行以前の仕事を振り返ってみたい。雨澤佑太郎とは早稲田大学の文芸サークル「山猫文学会」を通じて二〇一九年に知り合った。当時の私は四十四歳、雨澤は二十二歳。年齢差は二倍だ。最初に読んだのは『早稲田詩人』vol.4.0(二〇一九)収録の「眼底の光景」「憧憬」「二十五億秒のショートス

          二つの戦後の詩人たち━━石原吉郎、吉増剛造、野崎有以、雨澤佑太郎をめぐって(第三回)

          管理人日誌(2月中旬~)

          2/10(土)デパートの薬局で風邪薬購入。ユニクロでベルト購入。カント『純粋理性批判』読書会④。adoオールナイトニッポン聴く。マケプレ『現代詩手帖』着。note「管理人日誌(2月上旬)」投稿。 2/11(日)柳田国男『遠野物語・山の人生』(岩波文庫)桑原武夫「解説」読了。田村隆一「幻を見る人」「立棺」読了。デパートで焼きそば食べる。九段理江『東京都同情塔』購入。ペイブメント「quarantine past」着。 2/12(月)ヴィㇺ・ヴェンダース監督『perfect day

          管理人日誌(2月中旬~)

          二つの戦後の詩人たち━━石原吉郎、吉増剛造、野崎有以、雨澤佑太郎をめぐって(第二回)

                                      writer:沖鳥灯 illustration:白濱 3 『長崎まで』(二〇一六)  二〇二二年十二月二十八日放送『徹子の部屋』(テレビ朝日系列)でゲストのタモリは黒柳徹子の「来年はどんな年になりますかね?」という問いに、「誰も予測できないですよね。これはねえ。でもなんていうかな。「新しい戦前」になるんじゃないですかね」と答えた。「新しい戦前」とは厭らしい言葉だ。私が現在に照らして「戦前」という物騒な言葉と出合った

          二つの戦後の詩人たち━━石原吉郎、吉増剛造、野崎有以、雨澤佑太郎をめぐって(第二回)

          刻印された物語たちのために──『86―エイティシックス―』と「条文」をめぐる文芸試論

                                       城輪アズサ 序章:はじめに  十戒。シナイ山においてモーセ、およびすべてのイスラエル人が授かったというその戒律は、その後のユダヤ教・キリスト教を分かちがたく規定した。旧約聖書、出エジプト記における、最も有名な場面の一つだ。しかし本稿が行うのは、そうした「場面」の宗教学的・神学的考察ではない。ここで論点として持ち出すのは、十戒をこの世界において可能にしたインターフェース/メディアである。  石。十戒を可能にしたメディ

          刻印された物語たちのために──『86―エイティシックス―』と「条文」をめぐる文芸試論

          私を構成する23枚

                                                                    沖鳥灯 私という現象は「複数の他者(人生=芸術)」のひとつの青い照明です。 1 THE PRIVATES - Lucky Man (youtube.com) 2 GO-BANG'S  かっこイイ・ダーリン 【TV-LIVE.1988】 (youtube.com) 3 Hiroko Kasahara - Condition Green (from Pat

          私を構成する23枚

          管理人日誌(2月上旬)

          2/1(木)net stones始動「都市とその外部、あるいは残(念)石の行方━━「道産子ギャルはなまらめんこい」「スナックバス江」「ぽんのみち」評」投稿。Amazon『現代詩手帖』2点注文。 2/2(金)net stones「二つの戦後の詩人たち━━石原吉郎、吉増剛造、野崎有以、雨澤佑太郎をめぐって」投稿。スーパー食品買い出し。Twitterスペース「河原の石(低志会)から批評の石/意志(net stones)へ」。 2/3(土)精文館で『立春大吉』『オーバーヒート』(文庫

          管理人日誌(2月上旬)

          2月スケジュール続報&管理人雑記

          2/14(水) 城輪アズサ 刻印された物語たちのために━━『86―エイティシックス―』と「条文」をめぐる文芸試論 2/15(木) 沖鳥灯 二つの戦後の詩人たち━━石原吉郎、吉増剛造、野崎有以、雨澤佑太郎をめぐって(第二回) 3 『長崎まで』(二〇一六) 3/3(日) 沖鳥灯 二つの戦後の詩人たち━━石原吉郎、吉増剛造、野崎有以、雨澤佑太郎をめぐって(第三回) 4 『空位のウィークエンド』(二〇二三) 管理人雑記(2/4) 昨日はカント『純粋理性批判』読書会の2回目。

          2月スケジュール続報&管理人雑記

          二つの戦後の詩人たち━━石原吉郎、吉増剛造、野崎有以、雨澤佑太郎をめぐって(第一回)

          writer:沖鳥灯 illustration:白濱 詩は証言ではない。詩人はすべからく、経験をいったん内的に沈めて、そこからふたたび浮かび上がってくる言葉をこそ書き取らねばならないのである。詩はいわば、もっとも深められた証言としての抒情であり、もっともなまなましく開かれた抒情としての証言なのだ。                              野村喜和夫 1 時代区分  人は時代や世代に左右される群衆、大衆に過ぎず、確固たる個人は近代の幻想だという諦観か

          二つの戦後の詩人たち━━石原吉郎、吉増剛造、野崎有以、雨澤佑太郎をめぐって(第一回)

          都市とその外部、あるいは残(念)石の行方━━「道産子ギャルはなまらめんこい」「スナックバス江」「ぽんのみち」評

          毒劇法 私はASIAN KUNG-FU GENERATION「転がる岩、君に朝が降る」を知らなかった。そして、私は「ぼっち・ざ・ろっく!」を知らない少年少女に、なにか書き残したい。 はしがき 今年に入ってから「倍速批評」なるものをでっち上げている私が、このようなスローなメディアでなにか論じられる事があるのか、いささか疑問ではある。とは言うものの、私は倍速視聴をしたことがなく、むしろ一時停止を多用している。もちろん、一時停止を多用することも、お行儀の良い態度とは言えないだ

          都市とその外部、あるいは残(念)石の行方━━「道産子ギャルはなまらめんこい」「スナックバス江」「ぽんのみち」評

          記事募集

          二〇二四年二月一日開始の批評サイト「net stones」(管理人:沖鳥灯)では、広くライターを募集しております。現在寄稿予定のライターは私の他に毒劇法氏を含めて四名です。内訳は学生三人と社会人一人になります。 萩原朔太郎は文芸のジャンルを「詩、批評、小説、その他の散文」に区別しました。本サイトでは文芸に加えておおよそのジャンルを網羅しようと思います。とはいえ私のモットーは「結果」や「成果」「上層/上部」よりも「過程」や「途中」「中流/中間」を重視することです。インターネット

          記事募集

          2月スケジュール&管理人日誌(1月下旬)

          2/1(木) 毒劇法 都市とその外部、あるいは残(念)石の行方━━「道産子ギャルはなまらめんこい」「スナックバス江」「ぽんのみち」評 2/2(金) 沖鳥灯 二つの戦後の詩人たち━━石原吉郎、吉増剛造、野崎有以、雨澤佑太郎をめぐって(第一回) 2/15(木) 沖鳥灯 二つの戦後の詩人たち━━石原吉郎、吉増剛造、野崎有以、雨澤佑太郎をめぐって(第二回) 管理人日誌(1月下旬) 1/19(金)カント『純粋理性批判』読書会①(Discord)。指定範囲の第一版・第二版の序文

          2月スケジュール&管理人日誌(1月下旬)

          新批評サイト開設に寄せて(第三回)

          新批評サイト開設に寄せて(第三回) 告白と再生 七〇年代、八〇年代、九〇年代、二〇〇〇年代と通過してきた五十歳前の私が二〇一〇年代以降について語ることは困難である。苦肉の策として九〇年代・二〇〇〇年代・二〇一〇年代以降を往還する語りで論述しようと思う。まず二〇〇〇年代で私が取りこぼした言説の再検討をしよう。『新現実』(二〇〇二─二〇〇八)創刊号は東浩紀・大塚英志責任編集で新海誠新作コミック掲載。同年新海誠はデビュー作『ほしのこえ』発表。二〇一一年『星を追う子ども』、二〇一六

          新批評サイト開設に寄せて(第三回)