もっぱら履物のむねです。
2020年に履物ブランドを奈良で立ち上げます。
ヘップサンダルと呼ばれてる履物を手掛けます。奈良は履物の産地です。
■分業制の履物
ヘップサンダルの製造の多くは、分業で行われています。
ある工場では縫製を専門に、またある工場では底材とアッパーを張り合わせる仕事を、といった具合です。
そしてその内職場が家庭にあるお家も少なくないです。玄関に工業用のミシンや裁断機が設置されていて、仕上がった商材は次の工程の家に配達されていきます。
家内制手工業ですね。
ご多分に漏れず現在、業界は高齢化と人手不足が深刻です。
ピーク時、百社を超えた工場も廃業や引退される方が増え、現在は数十社ほどになっています。
A→B→C...という分業工程を踏んで完成されるヘップサンダルにおいて、仮にB社が居なくなってしまうと成り立たない。さらにそれが、熟練された手仕事や技術だと、代えが効かないので途端に具合が悪いです。
バリューチェーンの崩壊ですね。
そこで最近は、作業工程を内製化する試みを行っています。引退された内職場さんのご自宅には、今も使われなくなった機材がホコリを被っています。デカデカと未だに設置されたままなのです。
処分するにもお金が掛かるので、簡単に手がつけられない状態。
それを引き取って、私達でその製造工程を担ってしまおうということです。
乗り越えなければいけない壁も多いですが、設備を整えて魅力的なコンテンツを設計することができれば、「産業観光」としてのポテンシャルも見えてきます。
■繋いでくれた
つい先日、既に引退さたご高齢の職人さんのお宅にお邪魔して、お話を伺ってきました。履物の製造に使っていた機械をお持ちで、長年ホコリが被っている状態。
何年も稼働させていない機械がご自宅の一部を占めています。お話を伺い、快く引き取らせて頂くことに。
機械の使い方、どれくらいの年季のものなのか、当時の仕事の状況を丁寧に教えて頂きました。
重機ですから数百キロはあります。到底、素人で運搬できる代物ではないので大きさを計測し、玄関までの動線をチェック。
専門業者に依頼を取る計画を立てていました。
そのお話を伺った翌日です。
静かに息を引き取られました。
職人さんだったその方は、体調を崩して自宅で療養されていました。
といっても昨日、お仕事のことを伺った際は元気なご様子で、とても楽しそうにお話して頂きました。
ぼくが”奈良で履物をやる”って決めて、会いに行かなければ聞くことは無かった職人さんの貴重なお話。
「東京オリンピックをもういっぺん見てみたいねん。」
笑顔でそう、お話もされていもいました。
当時のお仕事のこと、機械の動かし方。
すべてを受け取った翌日に天国へ。
バトンを受け取りました。
心よりご冥福をお祈りします。
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