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「長靴をはいた猫」こそ、知識労働者の鏡である4(親方はプロジェクター編)

「長靴をはいた猫」は、1697年に出版されたシャルル・ペローによる『寓意のある昔話、またはコント集〜がちょうおばさんの話』に収録されているも物語である。

この16世紀末から17世紀初頭には、プロジェクターとういう「企画屋」が存在していました。このプロジェクターという職業は、王族や政府の抱えた問題について、解決策を提案してお金をもらう仕事である。その代表的な人物はジョン・ローという人物である。

このジョン・ロー、バブルの歴史では必ずでてくる「ミシシッピ会社事件(ミシシッピバブル)」の首謀者である。この男、名うてのギャンブラーでもあり、「稀代の詐欺師」ともいわれれば、不換紙幣を先取りした「革新的な経済学者」とも評される、とても深い魅力のある人物である。

参考:経済学のレジェンドの評価
アルフレッド・マーシャル:『向こう見ずでバランス欠如だが、実に魅力的な天才である』
カール・マルクス:『詐欺師と予言者の性格を持つ面白い人格的な混合物である』

またゲーテのファウストにでてくる悪魔メフィストフェレスのモデルとも言われている。
参考:紙幣の父 ジョン・ロー  ゲーテのファウストとジョン・ロー

一時期、ジョン・ローとプロジェクターという職業に興味を持って調べていたのだが、「猫の親方 あるいは 長靴をはいた猫」こそ、まさにプロジェクターではないか。

プロジェクターを定義すれば、無もしくは非常に少ない元手で、企画(知恵もしくは謀略や策略)を梃子にして多大なリターンを実現させるである。「猫の親方 あるいは 長靴をはいた猫」は長靴と袋という資本を元手に、知恵というレバレッジをかけて粉挽き農家の三男坊を広大な領地と美しい姫を手に入れたカラバ侯爵へと導くのだ。

作者のシャルル・ペローは、いまでこそ ペロー童話集の作者として歴史に名を残したが、当時はパリの収税局長をしていた兄の第一書記となり、ルイ14世の財務総監、重商主義者として有名なコルベールの知遇をえて、1663年には改建築を統括する王室建築総監の要職に就き、税や財務に精通し、建築プロジェクター統括管理する役職であったのだ。
おそらくジョン・ローのようなプロジェクターたちから、たくさんのファイナンスプロジェクトや建築プロジェクトを売り込まれてきたであろう。

そんなプロジェクターたちに、プロジェクターとはかくあるべきだという物語で悟らせるために、この物語を創作したのではないか?

これで「長靴をはいた猫」に関しての考察は一旦は終了である。

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