【和訳】8名の死亡者と多数の負傷者を生んだ、Travis Scott『Astroworld』コンサート参加者による現場レポート

11月5日に開催されたTravis Scottによるコンサート『Astroworld』にて、参加者のうち8名が死亡、17名が救急搬送、他多数の負傷者を生むという悲劇が起きた。

事件の原因はステージに向かって観客が殺到したことによるもので、気絶者が続出し、パニックが起きていたと報じられている。詳細な原因や経緯については現在も調査中だが、現地にいたファンの一人がその状況をまとめた投稿が話題となっている。その内容を見て思うところがあったので、勝手ながら筆者の拙い英語力で和訳してみた。あくまでSNSの投稿の一つにすぎないため、内容の真偽については各人で判断頂きたいが、この話の中で触れられているカメラマンとのやり取りについては、実際に動画も出回っている。

以下、一部生々しい表現も含まれているため、気をつけて読んで頂ければ幸いだ。また、急いで翻訳したため、誤訳などあればご指摘頂けると幸いである。

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今日は2021年11月5日、金曜日。私が何者なのかはここでは重要ではない。むしろ私が目の当たりにした光景の方が重要だ。テキサス州ヒューストンで開催された「Astroworld」。この日、パフォーマンスを予定していたのはTravis Scottのみ。このフェスティバルに一体どれだけの人がいたのかは分からないが、そこにいたすべての人々がステージの方を目指していたのは確かだろう。私と友人は、なるべくステージに近づきたいと思っていた。自分たちが行ける限界まで。さすがに至近距離とまではいかないけれど、私たちは真ん中の通路に近い側のところまで辿り着くことが出来た。周りには胸の高さまである金属製のゲートが建てられていた。”バリア “だ。私たちは、他のみんなと同じように、2時間くらいその場所に立っていた。隙間一つ無く、もう自分の場所から足を動かすことは出来ない。ショーの始まりが近づくにつれ、会場のエネルギーが高まってきた。そして、1曲目が始まって30秒もしないうちに、観客は人混みの中へと溺れていった。

会場にはたくさんの人々がいた。背の高い男性、女性。前にいる人の後ろ姿しか見えない人々。人の流れがどんどんきつくなっていった。もうまともに呼吸をすることができるのは、僅かな人たちだけだった。残りの人は押しつぶされるか、濃くて熱い空気の中で息をすることが出来なくなるかのどちらかだった。私の友人は息を切らし始め、ここから出ないとまずいと言った。試してはみた。だけど、もうどこにも行ける場所は無かった。圧迫はますます激しくなっていった。もし、誰かが腕を上げてしまったら、それを下ろすことはもはや不可能だった。そのせいで、人の塊が大きく揺れると、人々は互いに首を絞め合うようになった。状況はますます暴力的になっていった。やがて私たちは、助けを求めて声を上げ始めた。真ん中の通路に、数人の警備員がいるのを確認することが出来た。会場はさらに狭くなり、もはや息をするのは不可能で、周りの人たちの体に挟まれ、肺が圧迫されていく。

さっきよりも多くの人々が助けを求めて叫ぶようになり、中には倒れる人も出てきた。だが、音楽が止まることはない。何百人もの人々が声帯を引き裂かんばかりに助けを求めたが、私たちの声が届くことは無かった。どこにも行く場所は無い。私の友人は、全ての方向から足を取られながらも、なんとか柵の方へと移動しようとしていた。しかし、それも無駄なあがきだった。叫び声はさらに激しくなり、だんだん、私達の状況に気づく人も増えてきた。私たちは警備員に助けを求め、パフォーマーが私たちの姿を見て何かがおかしいと気付いてくれるよう頼んだ。だが、誰一人として来てくれることは無かった。私たちは溺れ続け、状況は更に悪化していった。誰かが倒れるか、気絶するか、きっかけは何かはもうどうでもいい。一人が倒れると、そこに穴が開いた。まるで、ジェンガ・タワーが崩れるのを見ているようだった。次から次へと人がその穴へと吸い込まれていく。次にどの方向から何百人もの人々が押し寄せてくるのか予想もつかない。ただ人々の波の流れに飲み込まれていくだけだ。私は、友人がどこかへ引きずりこまれていく様子をただ見ることしか出来ず、やがてその姿を見失った(※筆者補足:後に無事に合流出来たとのこと)。

その時、私は、きっと多くの人が知らないであろう死に方があることに気づいた。踏み潰されて死ぬのだ。息をしろ、落ち着くんだと言ってくれた人々もいたが、誰もが皆、その目に恐怖が表れていた。私たちはもう、この中に生きて帰ることのない人がいるだろうということは分かっていた。私は柵から押し出され、人混みの中へと飛ばされた。別の方向からは動物の悲鳴のような音が聞こえてくる。これは実際に私の周りで起きていたことなのだ。人間で出来たシンクホール(陥没穴)がいくつも出来ていた。私は、最初にいた穴の方へと戻され、その端の方へと押しやられた。私は地面に足を入れ、両手を広げ、誰かがこの輪の中に入ってくるのを止めたり、すでに入っている人を押したりしていた。私はさらに地面へと押し込まれ、下にある冷たくて硬いプラスチック(会場の床)の方へと顔を沈めた。

そこには男性の身体があった。地面に押し込まれた私の顔のすぐ下に、彼の顔があったのだ。私は正気を失った。 上から見えていた人々の下に、まだ人の層があったのだ。人々の身体で出来た床があり、その上には倒れた人々が更に2つの層を作っていた。私は叫び声を上げた。自分の目から涙が流れ、身を引き裂いていくような感覚に陥った。また、この状況を把握出来ている人がいるのかどうかも分からなかった。

私は、地面に人が倒れていると叫んだ。そこに人がいる。意識を失っている。地面に叩きつけられたたくさんの足に踏みつけられ、それでも直立したままで微動だにしない。私は彼の顔を見た。私は彼の盾になった。きっと彼は私に笑いかけてくれたと思う。だが、私は横へと押し出されていった。私はさっきよりも多くの靴が地面を叩きつけていくのを見た。彼の身体が、顔を上にして横たわっていたのとはっきりと同じ場所に。私は彼を救うことが出来なかった。誰一人として助けることが出来なかった。私はずっと叫び続けていた。視界の下にも人がいることを誰も知らなかった。私も、もう少しで同じ運命をたどるところだったのだ。私はバランスを崩し、そこにいた男性に掴むよう頼んだ。彼は私を引き上げ、ほんの一瞬だけ落ち着きを取り戻すことが出来たが、また再び群衆の中へと吸い込まれていった。

自分が見たものに耐えられなかった。なんとかここを出なければならない。助けを求めなければならない。何かをしなければならない。どうにかして、私は観客の後ろの方に行き、ガードレールのところまで辿り着いた。ある男性が私を引っ張ってくれた。そこでは、たくさんの人々がただ立っていた。まるで何も起きていないかのように。まるで、数フィート先で人が死んでいるだなんて無かったかのように。

私はカメラマンの姿を発見した。その目はステージに張り付きだったが、台の上に配置されていた。観客を直接見渡せる台だ。私は梯子を登り、シンクホールを指差して、「人々が死にかけている」と彼に伝えた。彼は私に台から降りるよう言って、撮影を続けていた。私は何度も何度も叫んだ。彼はその方向を見ようともしなかったため、私はカメラを押し、私がやってきた場所へと向けた。彼は怒り、誰か別の人に登ってくるよう言った。私はその人物に対しても同様のことを伝えた。人々が死にそうだ。音楽を止めなければならない。助けが必要だ。大勢の人々への注意が必要だ。もし誰かが気づきさえすれば、何かしてくれるかもしれないと思ったからだ。後から来た男は私の腕を掴み、もし降りなければ15フィート(4.5m)の柵の無い台から突き落とすと言った。私は彼に助けを求めた。私は彼に人々が死にそうになっていると伝えた。その場所を見せた。彼はその方向を見ようとすらしなかった。私は信じられなかった。ここには、実際に行動を起こすことが出来る人物が二人もいるのだ。何かをする力を持っているのだ。撮影を止める、応援を呼ぶ、何かを止める。彼らは何もしなかった。私は穴の方を見た。人々が叫んでいる。私の方へと手を伸ばし、助けを求めている。私はもう床を見ることも出来なかった。

そして、奇妙なことが起きた。周りの人々が私に向かってブーイングを始めたのだ。彼らは私へ苛立ちの感情を抱き、その怒りを爆発させたのだ。私は何度も何度も人々が死にそうになっていると叫んだ。だが、誰一人として聞く耳を持たなかった。私は梯子に登るのを止め、もはや何の感情もなく、下へと降りていった。

私は、あのカメラを壊して木っ端微塵にするべきだったのだろう。私は別の警備員の目を見て、この数え切れないほどの死の責任はあなたにもあると告げた。彼は何もしなかったのだ。私は台の下へと向かい、911に電話した。彼らはあくまで医療チームを呼んでいるとしか言わなかった。オペレーターには何度も何度も、私達はコンサートを止めなければならない、中断が必要なんだと伝えた。私達には明かりが必要で、たくさんの死に気付く必要があるのだから。だが何も無かった。一人の子どもが台の下で私の姿を見ていた。私が泣き崩れながら、人々が押しつぶされ、踏みつけられ、意識を失っていることを説明する姿を。そしてオペレーターが私に何一つとして求めていることを言わない様子を見ていた。私はどうしたらいいか分からないまま、外へと出た。突然、赤い医療用シャツを着用した2人の男性が、混乱した様子で私に向かってきた。私は全てを説明したが、彼らは中に行ってみたものの、何も無かったと告げた。私の近くにいた、あのピットにいた二人の女の子がそれを聞いて、そこで起きていることを説明してくれた。私は彼らをその場所へと連れて行った。彼らは金属製の入場口を登って、その人々の方へと向かっていった。あの夜、彼らだけが唯一、勇敢に行動した人物だった。あの二人の男性には感謝してもしきれない。私は二人の少女たちと待ち、人々が手すりを乗り越え、私達がいた檻から逃げ出そうとする様子を見ていた。

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一つ補足をしておくと、この投稿の影響によって、カメラマンを非難する意見が相次ぎ、中には殺害予告まで出てくるという事態となっており、投稿者本人も、そのような行動を止めるよう訴えている。あくまでこの投稿も、現場の状況を伝えることを目的として書いたものであるため、特定の人物を責めるような動きは決して推奨しない。


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