Neurologist

臨床神経学に関するまとめ

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最近の記事

アルツハイマー病に対してアデュカヌマブ を投与する際の意思決定 Aducanumabに対するAAN position statement

Key points 中等度または進行したアルツハイマー病(AD)の患者さんや、脳内βアミロイドの沈着の証拠がない患者に対して、アデュカヌマブを提供することを保証する十分な証拠はない。 アデュカヌマブはADを治癒させるものでも、認知機能を回復させるものでもない。 薬剤が高額で、医師に金銭的な利益相反の可能性があるため、与益原則が損なわれる可能性がある。 脳神経内科医は、潜在的な副作用とモニタリングの負担を伝える必要がある。データが複雑で、医学的リスクについてよく知らな

    • 細胞性浮腫と血管性浮腫のCT

      1.まず通常の脳から考えてみよう。 灰白質には神経細胞体があり、軸索がある白質よりも密である。 2.血管性浮腫(vsogenic edema)において、毛細血管より細胞外に水が漏れる。細胞体のある灰白質よりも軸索のある白質の方が疎であるので、白質に水が溜まる 3.虚血ではNa/K pumpの機能が障害されるため、水は細胞体、軸索のどちらいも溜まる。その結果、細胞性浮腫(Cytotoxic edema)となる 4.虚血による細胞性浮腫では、灰白質・白質ともに浮腫上になるた

      • Inverted reflex 逆転反射

        逆転反射の正確な定義ははきりとしないが、ある筋の腱を叩打した際にその筋の収縮が見られず、他の筋の収縮が観察される現象をInverted reflexやpardoxical reflexと呼ばれることが多いようである。最も有名なものにInverted Supinator reflexがあるが、その他の反射も含めて紹介する。 Inverted supinator reflex Inverted supinator reflex(橈骨逆転反射)はBabinskiにより臨床神経学で

        • Spoon test ベッドサイドでの自律神経評価

          皮膚の自律神経を評価する方法として温熱性発汗検査(thermoregulatory sweat test: TST)がある。しかしこの検査は特殊な機器が必要で、高価であり時間も要する。また患者にとっても手間のかかるものである。このTSTの必要か否か検討するのに、ベッドサイドテストで患者をスクリーニングすることは有用である。 1964年にErnest Borsらは30人の患者を対象にSpoon testを行い、neurodermometerで得られた結果を比較し高い精度で相関し

        アルツハイマー病に対してアデュカヌマブ を投与する際の意思決定 Aducanumabに対するAAN position statement

          脳主幹動脈の閉塞に対して、t-PAはskipしたほうが良いか?

          Bridging Thrombolysis Achieved Better Outcomes Than Direct Thrombectomy After Large Vessel Occlusion An Updated Meta-Analysis Yuting Wang, MD, Xiao Wu, MD, Chengcheng Zhu, PhD, Mahmud Mossa-Basha, MD, Ajay Malhotra, MD 現在(2021年)、欧米のガイドラインで

          脳主幹動脈の閉塞に対して、t-PAはskipしたほうが良いか?

          Mokri syndrome-大動脈術後のPSP様症状-

          2004年にMokriらは大動脈手術後に進行性核上性麻痺に類似した症候群を発症した7名の患者を報告した。 核上性眼球運動麻痺(supranuclear gaze palsy:SNGP)は麻酔からの回復後に明らかとなり、歩行障害、構音障害、嚥下障害も見られた。SNGPは持続したが他の症状は1〜4ヶ月程度で安定した。脳のMRIでは異常は認められなかった。 その後にもこのPSP様症候群や関連する可能性の高い症例が報告されているが、その病態生理は不明である。 最初にこの症候群を認識し

          Mokri syndrome-大動脈術後のPSP様症状-