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NEW COVER開催日とTemporary Pressについての覚書

このほど始動したコンセプトブックショップ“NEW COVER“の8月1週目の予定がこちら。

平日と休日で時間が異なります。ご注意を。

第1回目はシンガポールの出版社《Temporary Press》。彼らはどういう人たちなのか。

Temporary Pressとは?

 Temporary Pressはgideon-jamieによって2017年にシンガポールで設立された小規模な独立出版社。gideon-jamieはグラフィックデザイナーのGideon KongとプロダクトデザイナーのJamie Yeoからなる二人組のユニット。彼らはデザイン、教育/学習、研究/執筆を相互に繋げることを目的としている。

Temporary Pressのオフィスと工房。写真すべて野口恵太

 地元のアーティストやキュレーター、リサーチャー、教育者との協働によって多岐にわたる出版物を制作しており、課題内容とその成果から教育を読み解く「Assignments in Design Education」シリーズや、彼らのスタジオに滞在し、アーティストが出版物を制作する「Temporary Artist-in-Unit」プロジェクトなど、独自の試みを探究している。
 これまで刊行された出版物はアートやデザインに関連しているが、それらが抱える支配的で市場主導の問題とは異なる回路を、出版という方法を通して探っている。

天井が高く開放的な空間

 多くの出版物はリソグラフによって印刷されており、その魅力を彼らは色や視覚的なトレンドよりも、実用性、効率性、経済的な利点にあると語る。リソグラフにおける制約を制作方法に反映し、機材の可能性とともにアプローチを探り、デザインと制作をひとつのプロセスに統合することを目指す。これは機材を限定することではなく、必要に応じた方法をその都度選択し、機会ごとに固有の条件を検討する彼らの実践のあり方として理解されるべきである。

 また、Temporary Pressは出版のほかにもTemporary UnitやTemporary Catalogなど、関連するプロジェクトをいくつも並行して行っている。どれも自身のスタジオで形態を変えて行われる身軽な実践である。まさしく「テンポラリー」なこうした活動を可能にするのは、制作やワークショップができるスペースと機材を所有する、独立した環境によるものだろう。

ここではワークショップも頻繁に行われる

 思慮深い内容と出版における態度とは裏腹に、どの出版物も自由でオープンな発想に溢れている。制作においても即興的であることを大切にしており、些細な驚きを受け止め、ありふれた素材から未知の方法を発見することに喜びを感じているのが伝わる。リソグラフの単純なスキャン機能のみを使用して作られた本を、「No Digital」と無邪気に笑って説明してくれたJamieが印象的だった。

デザイナーのgideon-jamie

 今回、彼らのスタジオを訪れ、直接買い付けた本を並べている。Temporary Pressの柔軟で洞察力に富んだ実践の数々を、ぜひ手にとって感じてほしい。

完全にインディペンデントとして存在し、オルタナティブな出版の形を模索し続けます。