記者も中小企業との出会いを求めている・前編
企業のプロモーション戦略の1つとして名前がでてくる「パブリシティ」。診断士試験の学習においては、「無料で実施できるが、内容のコントロールができない」というメリット・デメリットで覚えている方も多いのではないでしょうか。
ただ、マスコミ(パブリシティの場合、多くは報道機関のイメージだと思います)と接点を持つことは容易ではないと思っている方も多いかもしれません。
そこで、今回は、元経済記者の立場からパブリシティを考えてみたいと思います(私、新卒から10年間はテレビ局で記者をしていました)。今回は、各内容がかなり長くなってしまいそうなので、前編・後編の二部制で行きたいと思います。
記者はすぐに取材できる中小企業と知り合いたい
毎日、新聞やテレビ(ネット上のものも含む)で情報収集をしているという方も多いのではないでしょうか。その中で、技術力のある中小企業、困難な環境(SWOTのTの部分)に立ち向かう中小企業などなど、中小企業を取り上げたものも少なくありません。
では、取材者=記者・ディレクターはこうした中小企業をどのように見つけてくるのでしょうか。私の経験上、こうした企業を見つける手段は実はそんなに多くありません。おそらく、以下の3つに大別されるのではないでしょうか。
1.人からの紹介(商工会議所や金融機関、以前の取材先のつながりなど)
2.過去記事の検索(自社の過去記事、日経テレコン等での他社記事検索)
3.中小企業の自社発信が目にとまる
私の経験や、私の周りの人を見まわした結果、1→2→3の順番で取材探しをしている印象です(確実な根拠はありませんが…)。では、それぞれ、具体的に見ていきたいと思います。
1.人からの紹介
これが記者にとって一番ありがたい方法かもしれません。記者は普段から、商工会議所や金融機関の広報担当者とやり取りする機会も多く、何かあればすぐに電話ができる関係にあります。
こうした中で、例えば「電気代が高騰しているけど、効果的な対策をしている企業はないか」とか、「新人候補が県知事に当選したけど、中小企業として新知事に求めることをインタビューしたい」などなど、その時々のイシューに合わせて中小企業を取材したいというニーズは高いと思います。その一方で、専門誌の記者でもない限り、テーマにずばり当てはまる会社を探してくるのは容易ではありません。
こうした場合、人からの紹介は記者にとってとても頼りになります。特に商工会議所や金融機関、行政からの紹介の場合、取材したい企業へのつなぎ(事前連絡)もやってくれる場合が多く、記者にとっては、取材調整という大きな手間を省くことができます。
一方、紹介する側にとっても、会員や融資先にパブリシティで紹介できるチャンスが巡ってくる(場合によっては恩を売れる)というメリットもあり、取材される側も含めて三方よしとなります(もちろん、取材を受けるか否かは取材される側が決めますが)。
あと、中小企業庁や各自治体が出している企業経営の好事例集などに乗っている会社を取材するのも、このパターンの亜流です。
2.過去記事の検索
これも、よくある手法で、以前に自社で取材した会社、または、他社でも取材を受けている会社は、言い換えれば、「取材される」という経験がある会社のことであり、基本的には取材を受けてくれるのではないかという安心感が記者側にはあります。
特に、日経テレコンの情報のストック量は膨大であるため、昨今のテーマでも、「人手不足の中、採用に奔走する企業」、「原材料価格高騰の中で影響を最小限に抑えようとする企業」「日照りによる不作で野菜の仕入に困っている飲食店」などなど、その時々でいろんなテーマがあります。
でも、こうしたテーマって、全く新しいものではなく、以前もどこかで取材されたものであり、過去に取材に応じてもらえた企業に再度アタックする、または、他社が取材した企業にお願いしてみる、というのは、記者にとっては効率的な手段の一つと言えると思います。
記者もできるだけ取材を効率化したい!
ここまででも少し書きましたが、記者にとっても、より多くのアウトプットを出すためには、取材のための効率をできるだけ上げたいというのが本音です。新聞だったら紙面、テレビだったら放送枠を埋めなければならない記者にとって、また、時間やエネルギーといったリソースを、できれば特ダネ取材や特集記事に費やしたい記者にとって、取材先を早く見つけられるかどうかは腕の見せ所の一つとなっています。
こういう背景があり、1.人からの紹介、や、2.過去記事の検索といった手法がよく使われるのだと思いますし、パブリシティに挑戦したい企業にとってはチャンスがあるとも言えます。次回の記事では、3.中小企業の自社発信が目に留まるという点、さらには、プレスリリースで何を書くか、という点について言及できたらと思います。次回もこうご期待!
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