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四日市と堺の共通点、相違点

何となく街を歩き地図を眺めていると、堺市と四日市市の市街地の構造、位置関係が似ていると感じるようになりました。今回は堺と四日市で思った事を書いていきます。スーパーのお話はまた、今度です。

1.広域的な視点

©OpenStreetMap contributors

近畿地方の地図を眺めると紀伊半島の東と西の沿岸部にある都市であることが分かる。
そして北側に大阪市、名古屋市といった大都市が比較的近くに存在する。また、「阪堺」電車、「名四」国道と二都市を結ぶ事を示す鉄道や道路がある。
これらの都市を結ぶ鉄道が2路線以上存在する。
南に目を向けると白浜、伊勢志摩という一大観光地が存在する。そこへ向かう特急列車も瓜二つの顔をしている。尚、四日市は伊勢に向かう特急は止まる(近鉄四日市駅)が堺には白浜に向かう特急(JR堺市駅など)は止まらない。因みに高野山や和歌山・関空に行く南海各線は市内に特急停車駅はある。
また、大阪ー和歌山(阪和線と南海本線)、名古屋ー伊勢(関西線~伊勢鉄道~紀勢線~参宮線と近鉄名古屋線~近鉄山田線~近鉄鳥羽線)と長距離に亘って2路線が並行する。

運転室の様子
上が白浜に行くオーシャンアロー     
下が伊勢志摩ライナー
 オーシャンアロー
伊勢志摩ライナー

2.人口規模、人の流れや産業で見た時

 統計的な意味では相違点も多いがざっくりと見た時には共通性も見られる。

1.共通点


 主な産業が類似している。臨海部の埋立地には重化学工業の工場が広がり、夜は工場夜景を売りに観光スポット化している。

四日市の重化学工業地


また、伝統産業として堺には堺刃物など、四日市には萬古焼などがある。
市内を通る国道1号や国道310号は中心市街地を離れると片側一車線区間となり、ロードサイド型の店舗が立ち並び、渋滞が頻発している点も類似している。

川越町との市境付近の国道1号の様子

2.相違点

ざっくりとした統計的な話になると堺と四日市は大きく異なる性質を持つ。
・堺市→政令指定都市で人口規模は四日市市より圧倒的に多い(約80万人)。大阪市をはじめとする他市への通勤者も多く、昼間人口は夜間人口を下回る。大阪市のベッドタウンという性質が強い。
鉄道では泉北高速鉄道の線内完結列車を除けば、ほぼ全ての列車が大阪市内へ直通する。一方、東(松原方面)へ向かう鉄道は皆無である。
府道12号や先に触れた国道310号は市内を起終点とし郊外とを結ぶ道路で拠点性が見られる。しかし、同じく市内を起終点とする府道2号の大阪中央環状線はその名の通り大阪市近郊各都市を結ぶ環状線であり、その交通量は膨大であるが、あくまでも大阪市内が中心であり、その近郊にある大きな街の一つに過ぎない。
ただ四日市と比べると商業施設などの規模や数が異なる。ショッピングモールが駅直結で3店舗(七道駅と北花田駅のイオンモール、泉ヶ丘駅のパンジョ)、その他、鳳のアリオや鉄道空白地の美原に最近開業したららぽーとなどオーバーストアではないかと思える程にある。

泉北ニュータウンの住民の足である泉北高速鉄道

四日市市→三重県最大の人口(約30万人)を抱える県内の中心都市。特例市。桑名ー四日市ー鈴鹿ー津ー松阪ー伊勢と概ね10-20kmおきに中規模の都市が連なりそれぞれが役割を持った多核心的な構造。堺市とは異なり、昼間人口が夜間人口を上回る。
鉄道では近鉄湯の山線や四日市あすなろう鉄道は四日市駅を始発駅としている。近鉄名古屋線や伊勢鉄道ー関西線は名古屋へ直通する列車も多いが、近鉄では四日市で種別変更する列車も多く、伊勢鉄道の普通は全て四日市止まりで四日市の拠点性の強さが窺える。
道路では国道25号、国道365号や国道477号などが起終点となり、郊外とを結ぶ。これらの道は大阪や北陸に至る道であるが、名古屋を中心と捉えた環状道路ではない。
平野部には田畑が広がり、西側の山岳部は堺市に対する東の生駒山地と異なり御在所山を抱える険しく奥深い鈴鹿山脈がそびえており、名古屋都市圏の環状ネットワークに組み込めていない点も四日市の拠点性を強めている一因かもしれない。

御在所岳の頂上 3月でも雪が残る

あと、堺市同様、ショッピングモールも存在するが、イオンモール四日市北くらいであり堺市に比べると見劣りする。

3.中心市街地の構造

最も着目したいのは中心市街地の類似性である。それでは、一つずつ見ていきます。

①沿岸の工業地と内陸の繁華街にある2つの中心駅

堺駅と堺東駅の位置関係
©OpenStreetMap contributors
四日市駅と近鉄四日市駅の位置関係
©OpenStreetMap contributors

 堺市と四日市市ともに鉄道路線が並行しているのは先述の通りで、市内にある主要駅もそれぞれ離れたところにある。
堺市の場合、南海本線の堺駅と堺東駅(あと阪和線の堺市駅もあるが中心市街地からは離れる)、四日市市の場合、近鉄四日市駅とJRの四日市駅である。
両駅がそれぞれ東西方向に1~2キロほど離れており、両駅は鉄道では直接的にアクセスはできない。
また、両駅をつなぐ大通りがあり、堺市は大小路通り、四日市市は中央通りがそれを担う。また、南北にも国道などの広域的な道路の他に両駅の中間地点付近にも大道筋、三滝通という大通りがあり市街地内で行き止まりであったり極端に車線数が減ったりするのも類似する。

大小路通り
近鉄四日市駅


②中心駅にあるアーケード商店街と百貨店

内陸の繁華街側にある堺東駅と近鉄四日市駅にはそれぞれアーケード商店街と百貨店がある。堺東には銀座通り商店街などと堺高島屋、近鉄四日市駅には四日市一番街商店街などと近鉄百貨店四日市店がある。いずれもどこか昭和な感じがする飲食店などが立ち並び面的に広がる商店街である。メインとなる通りは人でにぎわうが、海側や大通りをそれると閑散とする。
大人のお店が並ぶ歓楽街も存在し、堺東は商店街からは少し外れた翁橋、近鉄四日市は一番街とほぼ並行した二番街がそれにあたる。

堺タカシマヤのある通り
 奥にみえるのが銀座通商店街
近鉄四日市駅前のアーケード商店街(写真は一番街商店街ではないもの)


③市内中心部を走る「小さな」鉄道

 それぞれ性質は異なるが路面電車や軽便鉄道など比較的小規模な軌道路線が走るのも両市の特徴。経営が苦しく、何らかの形で行政が支援している点を似ている。
 堺市内を走る阪堺電車は路面電車で大阪市内とを結び、堺市内は中心市街地を南海本線と高野線の間を大道筋に沿って南北に貫き、その後浜寺で南海本線と接続する。
 一方、四日市市内を走る四日市あすなろう鉄道はあすなろう四日市駅を起点に市内近郊の住宅地をはしり、日永駅で西日野方面と内部方面に分岐する。

阪堺電車浜寺駅前駅
四日市あすなろう鉄道(撮影当時は近鉄でした)

④沿岸部の商業地の衰退

堺駅周辺 堺シーサイドステージは左上の日本製鉄の近く
©OpenStreetMap contributors
四日市駅周辺  四日市ドームは見切れている。国道23号をさらに北に行った所にある。
沿岸部はいずれもほぼ工業地。
海も程近い所にある。 
©OpenStreetMap contributors

元々、両市ともに衰退傾向だが、沿岸部の商業地域の衰退は著しい。2019年の鉄道駅の乗降客数は以下の通りだ。
●堺東駅 約60,000人⇔堺駅 約38,000人
●近鉄四日市駅 約48,000人⇔四日市駅 約4,500人
いずれも沿岸部の駅の方が乗降客は少なく、四日市に至っては10倍もの差が開く。これは町の様子にもあらわれる。
・堺市→駅からは離れるが再開発で鳴り物入りで開業した堺浜シーサイドステージのケーズデンキはすでに撤退しておりエンタメ特化に移行しており、堺駅前のイトーヨーカ堂も閉店した。尚、堺駅直結の商業施設は健在する。

堺駅前にあったイトーヨーカ堂

四日市市→四日市駅側に至っては商業施設は何にもないと言ってしまっても過言ではない。霞ケ浦にラム―やカインズがあり、四日市ドームがあるくらいである。そこにはJRが目の前を通るが駅すらない。また、JRの四日市駅は工業地といってしまってもよい。廃墟マニアの間で有名な三和商店街の廃れぷりはやばく、ついに取り壊されたそうだ。

トップ画像でも挙げた写真は四日市駅前の
三和商店街 その内部の写真

4.おわりに

 このように四日市市と堺市の似ているところ、違うところをだらだらと見てきた。やはり、大阪市に隣接する堺市の方が規模は大きいが、四日市市も東海地方を支える重要な街である。
 紀伊半島沿岸の両端の都市として更なる発展を期待したい所だが、現実には厳しい部分もある。
 大阪都市圏の方が再開発や交通網整備も進んでいるが名古屋都市圏の方が若者にとっては住みよいという話も聞く。リニアにしても当面は名古屋止まり、2次産業は中京圏の方が盛んであり、人材は四日市を含む中京圏に行ってしまう可能性は十分にある。
 名古屋と大阪はさほど離れておらず、東名間より交通網も充実しているのでここまで見てきたように似た性質の街も存在するので「名阪都市圏」も夢ではないと考えていたが、名古屋も東京志向が進むのも時間の問題のような気がする。
しかも、堺市は名阪間のラインからは外れる。
そういう意味では、四日市の方が伸びしろがあるのかもしれない。
長くなりましたが最後までお読み頂きありがとうございました。




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