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Chapter 8 テロは日常生活の一部

 2007年9月1日、昼間は暇だったが、夕方に事件が起きた。ヤラー市ではこの日、毎年恒例のフルーツフェスティバルが開催され、バンコクから駆け付けたティラウット・ブッシリープーム副内相やヤラー県のティーラ・ミントラーサック県知事といった要人が参列した。

フェスティバルの開会式では、過去数週間テロが収まっていたことから「これを機にテロ撲滅に向けて官民が結束すべき」という言葉が挙がった。しかしそんなことを言っていると騒ぎは起こるもので、案の定2キロほど離れただけの路上で爆発物が爆発。被害はわずかだったものの、2つ目の爆発物が発見されて周辺が数時間に渡って封鎖される事態となった。テロはもはや、「そこにいればいつでも出会える」ほどに日常生活の一部と化していた。

 「無線で事件の報告が入ったぞ。(フェスティバルに参加している)お姉ちゃんより爆弾が好きだったら行ってこい」。
AFP通信社の契約カメラマンである地元のマレー系若者と一緒にフェスティバルの写真を撮っていると、会場を警備していた警官がそう教えてくれた。彼と一緒にすぐさま車で現場に向かうことにしたが、彼は車の中で、
「オレの彼女が美人コンテストに出場するんだ。取材から戻ってくる前に終わってしまうとまずいよ」と、そればかり心配していた。

爆発物を調べる武装警官。車両の前面には(通行する車をパンクさせるために)路面にまかれたクギを掃くワイヤー製モップが装備されている

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