見出し画像

Chapter 5 最大の資金源は麻薬

 マレー系分離独立派組織の資金源は、麻薬密売に頼るところが大きい。南部国境県だけで年間2億~3億バーツの市場規模といわれる。タクシンの麻薬戦争は他の地方では成功したが、南部国境県では失敗して問題を悪化させた。麻薬=陸軍&警察、という図式はタイでは誰もが知るところで、タイ、ミャンマー、ラオスが接するゴールデン・トライアングル一帯が麻薬の生産拠点、というのは事情に疎い日本人さえも耳にしたことがあるだろう。近年の徹底的な撲滅作戦で、ゴールデン・トライアングルはさすがに往年の勢いはないものの全くなくなったわけではなく、現在でもタイ国内に流通する麻薬のほとんどが、ゴールデン・トライアングルを産地とする。

 前述のナラーティワート県で作戦に当たっていた海軍特殊部隊の分隊隊長とは、ラオス国境のメコン河沿いの北部チェンライー県チェンセーン郡でも会ったことがあるが、
「ブラックリストに名を連ねる連中は、ほとんど全て地元の権力者」
と漏らしていた。タイ海軍の特殊部隊はアクション映画に出てくる米軍のシールのように、潜水を伴う特殊作戦やハイジャック鎮圧などを任務としているが、平時は海と河川を国境とする県で麻薬取締の任務を遂行している。ちなみに2011年にタイ北部・中部で発生した大洪水では、日系メーカーが多く入居する工業団地内で水に浸かった産業機器の引き上げを手伝ったという。

画像1

 ヤラー県内の山間の湖を警戒する国境警備隊

ここから先は

1,140字 / 2画像
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?