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Chapter 9 管轄があいまい、星の数ほどある「自警団」

 テロに立ち向かうのは軍や警察だけではない。2004年のテロ激化以降、南部国境県では軍と警察の人員が常に増強され、さまざまな自警団が編成されてきた。これらを統合した治安部隊としての規模はより多くのデロが発生した2012年までに、5万人にまで膨れ上がった。

 陸軍はチュムポン県以南14県を管轄する第4軍管区に組み入れられており、正式な駐屯地はパッターニー県のシリントン駐屯地とナラーティワート県のナラーティワート・ラーチャナカリン駐屯地の2カ所しかない。兵士は増え続ける一方で寝泊まりする場所さえ不足、その場しのぎで役所の建物や寺院の境内を接収したり、雑木林や空き地を切り開いて仮設住宅を建てたりしている。パッターニー県とナラーティワート県の海岸線をもつ郡には、海軍兵士も展開している。陸軍兵士のように迷彩服を着て警戒する彼らの姿が見られる。海軍基地はソンクラー県ソンクラー郡にある。

 警察はパッタルン県以南7県を管轄する第9警察管区。ヤラー県ヤラー市に警察第9管区トレーニングセンターがあり、この中にタイ警察オペレーションズセンター前線本部や南部国境県のテロ事件のみを取り扱うコマンドセンターなどが入っている。

 軍も警察も地元の人員だけではテロに対応できず、タイ各地からの助力を仰いでいる。特に陸軍は数百人規模の部隊がそのまま移動するため、大勢のよそ者が突然なだれ込んできたと地元住民に思われがちだ。警察の場合でも、前線本部やコマンドセンターなどは各地から集まった人員で編成されるため、地元警官を全く見かけないことも珍しくない。各町や各村に点在する警察署や警察詰所はさすがに、地元警官がほとんどだ。

女性自警団の銃を確認する陸軍幹部、パッターニー県コークポー郡

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