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Chapter 4 世界的な「テロブーム」とタクシンの「麻薬戦争」


 イスラムは常に利用されている。南部国境県のテロは、過去十数年にわたって沈静化していたが2004年に激化、規模の大小や発生頻度の波はあるものの、未だ収まる気配はない。テロ激化の理由はまず、9.11米国同時多発テロをきっかけとする世界的なテロへの同調がある。

 隣国マレーシアのクランタン州とトレンガヌ州で、野党で宗教政党の全マレーシア・イスラム党(PAS)の政権が長く続いていることも、南部国境県のマレー系分離独立派組織の意識を向上させている。そして2001~2006年に政権を握っていたタクシン・チナワット元首相の存在だ。マレー系分離独立派組織の存在を否定して山賊呼ばわりし、マレー系住民とイスラムという宗教を見下したかのような言動を繰り返していたタクシンに、南部国境県の人々は反発した。

ラマダン明けの祈りに参列する少女

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