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Chapter 3 タイのムスリム人口が分からない

 スンガイコーロックは20年以上も前から縁があった。90年代、バンコクから夜行列車に乗ってスンガイコーロックへ、さらに徒歩でマレーシアに越境するという旅行を、3カ月おきに続けていた。町と同じ名前のスンガイコーロック川が国境を成し、タイ側の川辺にはスラムのような古びたムスリム集落が広がっていた。ちなみにスンガイは「運河」を意味する。

 ある日、その集落に入り込んで住民にカメラを向けていたら、バイクタクシーの男が手招きしてきた。彼に連れて行かれたのは近くの食堂。見るからに崩れそうなボロボロの店構えだった。

「お前、日本人か?」
店の旦那が話しかけてきた。聞けば旦那は若い頃ロンドンに留学、日本食レストランでバイトを続けていたという。実は自分もバックパック旅行の途中でロンドンに1年ほど住み着いたことがあり、やはり日本食レストランでバイトしていた。
「お前はどこの店だった? おお『フジ』か、知っているぞ。オレは『サントリー』だった」。

朝早い時間に水浴びをするムスリム少女(バイクタクシーの男の娘)

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