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Chapter 12 日本が引き変えたタイとマレーシアの国境

 日本人が南部国境県をフラフラしていると、「日本人がこんなところで何をしている」と心配されるが、長い目で見れば我々の存在は決して特別ではない。この辺りにはちょっとした言い伝えが残っている。

「第2次世界大戦(太平洋戦争)が始まる数年前、1人の日本人が突然、パタニーの地にやってきた。地元の娘と結婚、海辺の家に住み、毎日朝になると沖に出て、夕方になると戻ってくるという生活を続けていた。1年ほど経っただろうか、日本人は急に姿を消した。娘は泣き悲しんだが、男はそれっきりだった。しばらくすると、日本軍が上陸してきた……」。

 太平洋戦争開戦の日、1941年12月8日早朝、日本軍のマレー上陸作戦は始まった。平和進駐としてタイ湾沿いのタイ国内6地点に上陸して南下、英国領マラヤへの侵攻を開始した。難攻不落といわれたシンガポールを落とすには正面の海からでなく裏の陸からが有効、という作戦に基づいたものだ。

旧日本軍が通過したであろう、ヤラーの山間

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