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Chapter 4 テロが延々と続くきっかけに 南部国境県テロを象徴する3つの事件

 テロ激化当初、3回の大きな事件が発生した。その後も大小さまざまなテロが起きているが、2004年初年の3つの事件は、テロを巡る南部国境県のさまざまな問題を浮き彫りにした。いずれの事件も真相が分からず、今でもさまざまな憶測が飛び交っている。

《軍武器庫襲撃事件》

 マレー系分離独立派組織の武装グループ60人がピックアップトラックの荷台に乗って駐屯地に突入、武器庫管理の兵士4人を殺害して武器を強奪したことになっている。◇60人はいったいピックアップトラック何台に分乗して突入していったのか? 堀に囲まれた駐屯地の検問を、やすやすと突破できたのはなぜか? ◇300~400丁ものM16をピックアップトラックの荷台に全て乗せたのか? 逃走時のピックアップトラックは銃が山積みだったはずだが、そのピックアップトラックに乗ってきたはずの武装グループのメンバーらは走って逃げたのか? 軍の追っ手はなかったのか? ◇軍側の死亡者は4人のみだが、ほかの兵士とは遭遇しなかったのか? ——などと、おかしな点ばかりが目立つ。

 事件後しばらくして周辺を車で走ってみたが、そこは鉄筋コンクリートの建物が並び、無線アンテナも立つ大規模な駐屯地。M16が300~400丁あったということだから、それなりの兵士がいるのだろう。周辺の村から駐屯地に至る道路には陸軍の検問所があり、車での移動は目立つ。ここを武装グループが堂々と通っていったとは思えない。駐屯地は堀で囲まれ、入り口は警衛が立つ1カ所しかなかった。タクシン首相は、「山賊まがいの連中を、地元出身の兵士が誘導した」事件と説明したが、本当だとすればあまりにお粗末な国軍だ。

気軽に襲撃できないであろう防御の固い駐屯地

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