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Chapter 5 単なる不良の集まりレベル? 中核は極めて小さな組織

 自分はタイに長く連れ合い(女房)もタイ人で、その連れ合いの同級生に海軍特殊部隊の分隊隊長という兵士がいる。彼いわく「タイのネイビーシールズ」だ。訓練ではまさしく、米国の映画のような機密作戦やハイジャック鎮圧といった訓練を繰り返しているようだが、平時に訓練の成果を発揮する機会はそうそうなく、いつもはタイの海岸沿いや河川の国境を中心に麻薬犯罪の捜査を続けており、南部国境県にも数年に1年という単位で任務に赴いている。

 彼とは何回も会ったことがある。気さくで楽しい奴で、日本で一番高いダイバーウォッチを買ってくれ、日本に携帯電話の電波をキャッチする盗聴器は売っていないかなど、そんなことばかり聞いてくる。ふざけている振りをしていてもクールな雰囲気が見え隠れして、人を何人も殺めていそうな気がしないわけでもない。そんな彼から特殊部隊のキャップ(帽子)をもらったことがある。ロゴはイルカが2匹向き合っているデザインで、「これをかぶって海軍基地に入ってくればノーチェックだ」と言う。ばれるでしょ、と思っていたが、先に触れたカンボジア国境紛争の取材でかぶっていたら本当に、現地の陸軍兵士に海軍特殊部隊と間違えられた。結構ハッタリが効くロゴらしい。

 「あー、南か。テロ組織と言ってもな、相当規模は小さいぞ」。
彼が南部から引き揚げてきてそのまま北部チェンラーイ県の麻薬捜査に任務を変えたとき、北まで彼を追いかけて南の話を聞いたときがある。そのときの言葉だ。

爆発物を仕掛けられたバイクの爆発から通行人や店舗を守るためのコンクリ

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