見出し画像

Chapter 10 再び赤色地域、山あいのテロ重要拠点

「そうだよな、ルーソだよな」。バーチョの後、例のフレンドリーな部下に段取りしてもらったのがナラーティワート県ルーソ郡。今回も彼の希望が多分に反映されている。ちなみに彼の身分は「記者」。軍の中でも記者という職務があるらしい。

 マレー系分離独立派組織はたいてい、山がちな農村地帯を拠点とする。(例のバーチョがある)ヤラー県バンナンサター郡、今回のナラーティワート県ルーソ郡、同県ラゲ郡やスンガイパーディー郡などが挙げられる。これらの郡は林や森が多くて身を隠しやすく、道路が整備されていて移動しやすいという、テロ実行犯にとっての地の利がある。

 バンナンサター郡はこれまで、ヤラー県内の主要拠点としてテロが続いていたが、陸軍の効果的な作戦展開により、赤色地域から緑色地域に変わりつつある。これによってテロ組織の拠点が移動、ルーソ郡、ラゲ郡、スンガイパーディー郡にテロメンバーが集結しつつあり、同郡では過去数カ月で数百人のテロ容疑者が拘束された。

 ルーソ郡は1960年にパタニー・マレー民族革命戦線(Barasi Revolusi Nasional Patani-Melayu, BRN)が結成された地。BRNはパタニー連合解放組織(PULO)と並んで最古の組織。ルーソ郡=テロ組織というイメージが強い。
 「今度はお前、空港まで迎えに行くからレンタカーを借りなくてもいいぞ」。
空港はソンクラー県ハジャイ。そこからヤラー市まで2時間の距離。軍にわざわざ迎えに来てもらうなんて、そんな身分の記者ではないのだが、
「いいんだ、いいんだ。どうせ夜に着くだろ。その日はハジャイの駐屯地に1泊だ」と、一方的にアレンジしていた。
 その後、上官である第4軍管区の広報担当幹部である大佐から携帯に電話が。緊張しながら電話に出ると、
「お前、ハジャイ空港まで迎えに来いと頼んだか?」。
出た出た、フレンドリーな部下が何かをたくらんでいる。その話を受けてびっくりしているのはこちらで、自分で車を運転してヤラーまで行きますから、と告げると、
「いや、迎えに行くぐらいどうってことないんだけどな」という言葉を残して、大佐はさっさと電話を切った。

僧侶の托鉢を警護する陸軍兵士

ここから先は

1,409字 / 2画像
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?