Chapter 9 テロ浸透度で色分け、赤色地域のレンジャー部隊
「おい、今度バーチョ取材しろよ、セットアップするからよ」。
件の第4軍管区の広報担当幹部にフレンドリーな部下がいて、彼が自分の行きたい場所を押し付けてきた。バーチョといえば、南部国境県でも危険と呼ばれる町だ。
タイには信号機の色のように地域を分ける習慣がある。タイといってもここで取り上げるのはタイ国軍で、習慣といっても過去に前例があったというだけだが、南部国境県のではテロ浸透度を3色で色分けしていた。テロが頻発する地域、テロ容疑者の潜伏が怪しまれる地域を「赤色地域」、要警戒地域を「黄色地域」、安全地域を「緑色地域」だ。このような色分けは、1970年代に激化したタイ共産党武装勢力による闘争に対して行われたもの。これを元に、南部国境県に展開する軍は大隊単位で各郡を管轄。テロ発生時の警戒だけでなく、テロそのものが発生しない環境を築くことを重要な任務としている。
2007年10月13日、そんな赤色地域の取材となった。前夜にヤラー市に入り、フレンドリーな部下に連絡すると、パッターニー県シリントン駐屯地まで来いとのこと。パッターニー県といってもシリントン駐屯地はヤラー県境にあり、それを越えればすぐにヤラー市だ。
「お前、今夜はここに寝ろ」。
一般兵士が担架みたいなベッドで寝泊まりする営舎(兵舎)に連れていかれ、空いているベッドを指定された。空いているといっても任務で不在なだけで、誰かが使っているベッドだ。
「寝る前に酒だ!」。
ベッドが決まったらフレンドリーな部下の車で夜の町へ。治安が悪いとはいえども店は普通に開いている。そこで働いている女の子たちは(タイ各地の飲み屋と変わらず)北部や東北部といった地方出身がほとんどだが、バンコク出身とかいうハイソっぽい美人もいる。客がいなくて暇だということで、早口な英語の歌を立て続けに歌っていた。勉強もできそうだが、どうしてこの先なしという国境の町ヤラーまで流れてきたのか分からない。
分離独立派メンバーが逃げ込んだらしき村を封鎖するレンジャー部隊
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