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至高のバンド「SUPERCAR」Vol.5:HIGHVISION

この記事をご覧いただきましてありがとうございます。


さて、以前の投稿より、自分の好きなことを楽しく書いてみようということで、趣味の音楽について【短期集中連載】を開始しております。

テーマはズバリ、

”至高のバンド「SUPERCAR」"

SUPERCARは、90年代後半から2000年代にかけて日本の音楽シーンで活躍したバンドであり、数多のアーティストの中でも私がトップクラスで好きなバンドであります。

なお、SUPERCARの説明や魅力については、Vol.1でたっぷりと紹介していますで、ぜひご覧ください👇👇

Vol.2以降は、SUPERCARが発表したオリジナルアルバムについて1枚ずつ魅力を深掘りしていこうと思います。

ニッチなテーマですが、少しだけお付き合いいただけると幸いです。

今回は、4thアルバム「HIGHVISION」について書いていきます。

1st.スリーアウトチェンジ
2nd.JUMP UP
3rd.Futurama
4th.HIGHVISION
5th.ANSWER

ちなみに、Vol.1でも書いたように、SUPERCARはアルバムごとに音楽性を大胆に変化させています。私自身も、解散後のシングル集「A」でその変化に衝撃を受け、まずはどのオリジナルアルバムから聴いていこうか悩みましたが、結果的にはオリジナルアルバムを発売順に聴くことになりました。

1st「スリーアウトチェンジ」と2nd「JUMP UP」を聴いて、当初の期待を裏切らないどころか、聴くほどにSUPERCARの魅力にどっぷりハマっていき、3rd「Futurama」でみせた斬新な音楽性の変化にも見事に虜になってしまいました。

「Futurama」で構築した音楽性を、さらに削ぎ落とし磨き続けた結果、後にも先にも真似されることのない唯一無二の高画質な光を放つ究極の名盤が誕生することになるのです。

「HIGHVISION」の概要

「HIGHVISION」ジャケット

「HIGHVISION」は2002年に発売されたSUPERCARの4thアルバムであり、シングル曲の"Strobolights””YUMEGIWA LAST BOY””AOHARU YOUTH”を含む全10曲が収録されています。

アルバム発売同年に公開された映画「ピンポン」の主題歌に”YUMEGIWA LAST BOY”、挿入歌に”Strobolights”等が起用されたこともあって本作の知名度は上がり、オリコンチャートは最高11位、結果としてバンド最大の売り上げを記録しました。

バンド自体が決してメジャーな存在でないとはいえ、バンドの作品群の中では「HIGHVISION」が1番知名度があり、SUPERCAR=「ピンポン」の主題歌という人も少なくありません。

なお、タイトルの「HIGHVISION」は、ギターで作詞担当のいしわたり淳治さんが名付け親で、字の通り高いビジョンを見据えた作品であることを意味するそうです。

個人的な意見ですが、このタイトル、めっちゃ好きです。アルバム全体のクリアなサウンドが頭の中で高画質に映るようであり、この単語だけで他とは次元が違う作品であることを端的に表しているようで、とてもカッコよくてセンスを感じます。

タイトルに反して、ジャケット写真は若干ぼやけているようにも見えますが(笑)長らくジャケットアートワークを手がけた木村豊さんのことなので、きっと何か意味があってのことなのでしょう。

アルバムの内容ですが、本作では前作「Futurama」からの流れであるロックとエレクトロニカのサウンドの融合がより一層研ぎ澄まされ、ロックバンドでありながら遂にはロックとエレクトロの比率が逆転します(個人の感覚です)。

また、本作はバンドとして初めて外部プロデューサー(砂原良徳(元 電気グルーヴ)、益子樹(ROVO))を迎え、徹底してサウンドのクオリティを追求していったことが伺えます。

音楽業界やファンの間でも「HIGIVISION」は最高傑作で名盤であるという声が多く、バンドのキャリア全体で見ても、目指していたサウンドに本作で到達してしまったような感じもあります。

ただ私自身、各方面の名声やアルバムを聴いた印象で、本作が間違いなく傑作であることは感じ取れるのですが、作品の次元があまりにも高すぎて、未だにその魅力を完全には感じ取れていない状況です。

本記事で言語化したところで魅力を引き出せる自信はありませんので、往年の名作に免じてお許しください。

研ぎ澄まされた”究極のサウンド”

さて、何度も触れていますが、本作ではエレクトロサウンドやテクノサウンドなどの電子音が主体になっていて、ロックバンドとしてデビューしながらも、バンドサウンドとの比率が逆転していったように感じます。実際の比率は不明ですが、一聴した印象では明らかなはずです。

このアルバムのサウンドが、果たしてバンドが目指していた方向性だったのかは分かりませんが、ロックとエレクトロの融合というテーマで考えると、これ以上ないほど研ぎ澄まされたサウンドであることは間違いありません。

#1”STARLINE”で、心臓の鼓動のような音が鳴って徐々に世界が開かれ始め、ラストで一気にサウンドが弾けてアルバムのオープニングとして幕が開きます。

そこからは既発のシングル曲を含め、サウンドのワンダーランドです。ロックバンドという概念が通用しないような、まるで芸術作品を鑑賞しているような感覚になります。

極め付けは、#7”I”で思い切りボーカルをいじっています。警察密着24時で捕まった万引き犯のような、モザイクがかかったボーカルになっています。最初に聴いたときは、そこまでやってしまうのかと驚いた記憶があります。

少し話は逸れますが、前作「Futurama」や本作にしても、電子音といっても様々なタイプの音が鳴っていて、かっこよくイカしたものもあれば、なんだか腑抜けてしまうものもあったりと多種多様です。

こんなに色々な音を楽しそうに使っているのはきっとSUPERCARくらいなんだろうと最初は思っていたのですが、それはすぐに翻ります。

Vol.4でも書きましたが、SUPERCARにハマり始めた20歳当時はまだエレクトロサウンドに馴染みがなく、主に当時流行り始めていたサカナクションのようなイカしたエレクトロサウンドくらいしか聴く事がありませんでした。

なので、SUPERCARを最初に聴いた時は、音楽性の変化にも驚きましたが、なんだか色々な音が鳴っているなあと不思議な感覚になったのを覚えています。

ですが、SUPERCARにハマった後にYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)の音楽を初めて聴いて、SUPERCARと似たように、アルバムの中の楽曲で多種多様な音が鳴っているのです。

もちろんYMOのほうが歴史がありますし、完全なインストバンドでもあるので同様に比べるのは違うかもしれませんが、SUPERCARの目指していた方向性の根源は、もしかしたらこのようなサウンドだったのかもしれません。

また、私が思っていたエレクトロサウンドやテクノサウンドは、先に出したYMOや電気グルーヴなどのような、リズムがノりやすく思わず踊ってしまうようなものを想像していました。

実際にSUPERCARも前作「Futurama」では上記のようなサウンドを大量に制作し、結果として大ボリュームで大傑作のアルバムが世に放たれました(私がこの世で1番好きなアルバムです)。

ですが、本作はそのような雰囲気が一切ありません。サウンドに多少の起伏はあるものの、終始クールに淡々と音を鳴らしているような印象があります。

ただ、全くノれないかと言われるとそうではなく、#8”YUMEGIWA LAST BOY”のフロアを意識したサウンドは本作の盛り上がりのピークであり、曲自体も日本の代表的なフューチャーポップとしての地位があります。

上の動画はMVですが、この曲のライブ映像を観ると、観客はみんな体を揺らしてノリノリです。

この時期のSUPERCARの楽曲の特徴である、同じリズムと同じ歌詞が繰り返されるサウンドが、聴く側を無意識に気持ちよくさせてしまう作用があるのだと思います。←以前テレビで放送していたYMO特集のセリフを拝借しました。

なお、このアルバムの中ではラストの#10”SILENT YARITORI”が非常に好きで、一時期はよく聴いていました。

常にどこでも聴ける曲というよりは、特定のシチュエーションに馴染む曲だと思っていて、私的には冬の夜の街に輝くイルミネーションと非常にマッチする曲だと勝手に想像していました。

フルミキさんの儚げなボーカルにナカコーさんの声がいい具合に混ざり合い、ラストにかけてフルミキさんのコーラスがいくつも重なって、まるで祈りのように降り注ぎます。これ以上ないアルバムの締めくくりではないでしょうか。

エレクトロサウンドが目立つアルバムとはいえ、バンドサウンドが際立つ楽曲も存在します。

特に#3”STORYWRITER”はとにかくかっこよくて、あくまでロックバンドとして、こういうのもちゃんとできるぜ的なメッセージを私は感じました。

それでも、始まりと終わりにシンセの音を配合するあたりが、このアルバムらしいアレンジに仕上がっているところだと思います。

この”STORYWRITER”は、後にアニメ「交響詩篇エウレカセブン」の挿入歌として起用され、内容が盛り上がるタイミングで必ずといっていいほど流れて、もうたまらんです。

なお、このMVはつい最近公開されたもので、SUPERCARデビュー25周年を記念してYouTubeに全てのMVが公開されたのにあわせて制作された最新作です。

4段階に分けてMVが順次公開されましたが、最後の最後に本来存在しないはずの”STORYWRITER”のMVが挙がっていたときの興奮は今でも忘れません。

もしかして他にも何かバンドの動きがあるのかと期待してしまいましたが、どうやらそれはないようでした。残念…

”神々しい”崇拝のアルバム

このアルバムについて、なんだかもう神々しい雰囲気すらあります。アルバムの帯に「拝いヴィジョン」と書いてあるほどなので、コンセプトとして捉えてもいいかなと思います。

私的には全く馴染みのないジャンルであり(というか他にあるのかな?)、歌詞も非常に抽象的で、もはや解説のしようがありません。

初期に比べて、サウンドも歌詞も少しずつ削ぎ落とされていき、意味合いがあるのかすら疑問に思えてしまいます。

何かストーリー性があるわけでもなく、人間の感情を描いているわけでもありません。言い方が合っているか分かりませんが、何か洗脳のような、祈りのような、崇拝しているような、不思議な感覚です。

その狙いは一体なんなのか。

私なりの考察ですが、音楽によって心の奥底の感性を引き出して未知の世界へ連れていかれるような、人がこれまでに体験したことのないようなことを、このアルバムではしようとしているのではないでしょうか。

あまり大きい声では言えないですが、なんだか宗教のようなアルバムです。

先ほども書いたように、本作の歌詞はあまりにも端的でコンパクトなものになっていて、解説のしようがありません。

恐らく、先に完成したサウンドのイメージに合わせて詞を書いたのだと思いますが、このアルバムになってくると歌では表現していない歌詞まで登場します。

#5”OTOGI NATION”では、

「それはお伽の国家で日々暮らす、お伽の国民の物語ーー」

#10””SILENT YARITORI”では、

「沈黙のやりとり、いつもあなたのすぐそばに愛はある」

これらの歌詞は実際には歌っておらず、歌詞カードを見て初めて分かる部分になります。

いしわたりさんも作詞という役割を利用して、サウンドに寄り添いながらも表現の場として利用しているように感じてしまいます。

また、表現方法で目立つのが他にもあり、#5”OTOGI NATION”では

「最低な最高(psycho‼︎)がかき消していく」

のような隠し歌詞?も存在し、もはや歌詞で遊んでいるようにしか思えません。

余談ですが、いしわたりさんはデビュー当時から歌詞に「!」を多用しているように見受けられます。

真意は不明ですが、ナカコーさんの脱力したボーカルとは不釣り合いなところが逆に面白く感じています。

これらのように、SUPERCARの活動を通じて作詞の新たな可能性と境地を開いていきましたが、難易度が高すぎるのか、音楽界にはあまり浸透していないようです😅

これまで書いてきたように。曲単体で見てみるとそれぞれに面白さや魅力があります。

なお、ナカコーさんがこのアルバムについて全曲解説している素晴らしい動画がありますので、ぜひご覧ください。

ただやはり、アルバム全体で見ると不思議な印象があります。

様々なサイトや文献でこのアルバムの考察を見ても、どういうサウンドであるかとかバンドは頂点に達したとかいう内容はあっても、アルバムの内容自体の解説があまり見られません。

まあ、こんなアルバムなので、解説できないですよ。同情します。

ですが結局のところ、このアルバムがバンド最大の売り上げを記録し、現在まで名盤として語り継がれているということは、それだけ世間的にもアルバムの魅力が伝わっているということで納得したいと思います。

考えるな、感じろ。

ということで、「HIGHVISION」について色々と書いていきましたが、マジで難しかった…難しかったのかすら分からないくらい、言語化が困難でした。

このような芸術作品について解説できないようではまだまだだなと、自分の力量不足を痛感した次第です。

むしろ、SUPERCARからしたら「HIGHVISION」について語れるものなら語ってみろ的な、してやったりな感じもあって見事にハメられました。

結論、つまりは、

「考えるな、感じろ。」

です。

なによりまず、聴いてみてください。きっとその魅力を感じるはずです。

そして、このアルバムで新しい音楽体験をしてみてください。エレクトロポップ・テクノポップ・ヒューチャーポップの面白さに気づき、次第にSUPERCARというバンドにもハマっていくはずです。

というのも、1st「スリーアウトチェンジ」と本作を比べると、サウンド面では全く異なるように聴こえますが、メロディのキャッチーさやポップさは相変わらず健在です。

結局のところ、そこがバンド共通のテーマであり、たとえ「HIGHVISION」からSUPERCARを知ったという人でも、過去作にハマっていくという不思議な魅力がこのバンドにはあります。

さて、「HIGHVISION」で音楽の究極の高みに到達したSUPERCARですが、その後は一転バンドサウンドに回帰します。

私の考察ですが、あくまでロックバンドとして、「HIGHVISION」で構築した世界観をバンドサウンドで表現しようと試みたのではないでしょうか。

なお、ナカコーさんは上記のインタビュー動画の中で「わけのわからない混沌としたカオス」というワードを繰り返し発言していました。恐らくそれが、後期SUPERCARのサウンドのテーマだったのかもしれません。

「HIGHVISION」ではそれが光溢れる明るいイメージとなりましたが、次作でバンドサウンドに回帰してからは真逆の世界を見せてくれます。

結果としてそれは5thアルバム「ANSWER」として、「HIGHVISION」とはまた違うダークでサイケデリック色の強い作品が世に放たれました。皮肉にも、ラストアルバムにふさわしいようなタイトルです。

そして、SUPERCARは活動に幕を降ろすことになるのです。

ということで、デビューから早いスパンで驚異的な音楽性の変化を遂げたSUPERCARの集大成であるラストアルバム「ANSWER」について、次回のVol.6で紹介したいと思います。

それでは。


乱筆にて


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