久しぶりに風呂で叫んだ。

いつも通り髪をシャンプーして洗い流した。
通常ルーティーンなら、このあとコンディショナーを馴染ませ洗い流してDONE！だ。
しかしこの頃、空気が乾燥しているのか、髪がやたら絡むのが気になる。

「今日はコンディショナーじゃなくて、トリートメントしとくか…」

一瞬迷って、トリートメントに手を伸ばした。
一瞬迷ったのは、私が買ったトリートントはもうずいぶん前に空っぽになって、それから新しいやつを買ってなかったから。
いま風呂場にあるのは、高校2年生の娘がバイト代で買ったやつだけだ。

「今度、娘の分のトリートメントも買って返そう」

そう思い直して、ありがたく娘のトリートメントを使わせてもらうことにした。

でっかい歯磨き粉みたいなトリートメントのキャップを開けて、手のひらにマスカット大をむちゅ〜っと出す。

おお、結構こっくりテクスチャーだな。
ダメージケア成分たっぷりなやつかもしれん。

両手を擦り合わせ全体に馴染ませたら、両指をおでこからインして、頭髪全体にトリートメントを行き渡らせていく。

ほお…いつもと比べて指通りがスムーズにいかない。
しかも、うん？なんか香りが…あ、これケラチンか！
（※ケラチン…毛髪の90％を構成するタンパク質）
ケラチン入りのトリートメントか！絶対そうだ！
ラッキー！ちょっと良いやつじゃーん！

気持ち的には鼻歌で西野カナとか歌ってるレベル。
髪全体にまんべんなく馴染ませて、もぎゅっともぎゅっと両手で握るように揉み込む。
こうすると、トリートメントの成分が髪の中まで浸透しやすいらしい。

そこで再び、トリートメントに手を伸ばした。
どんな髪に良い成分が入ってるか、確認したい。
トリートメントをひっくり返して裏側を見る。

「リムーバークリーム【効果・効能】脱毛」

「やばいあやばいやびやばいやばいやばいややびｂｙあいや￥￥￥びやばいややばびゃいやばいやあいいいっぃぃ！！！！（絶叫）」
「ッジャアアァーーーーーーッッ！！！！（シャワーを思いっきりひねった）

おそらく人生で初めて、叫びながら髪を洗い流した。
あの時感じたケラチンは、きっと私の髪から溶け出たタンパク質の香りだ。

やばいよやばいよやばいって！！
ただでさえ最近髪薄くなってきてるのに！
髪溶けちゃったらどうしよう！！
よりによって、おでこ側からインしてもーた！！
前髪ハゲたら、絶っ対にごまかせない！！泣

いやほんまに恐怖。
流せど流せど、髪きっちきち。

一旦シャワー止めてみる。
襲いくるケラチン。
「ジャーーーー！！」
シャワー止めてみる。
猛追ケラチン。
「ジャーーーー！！」

…もう私、ダメかもしれない…。
薄まる気配を知らないケラチン。
髪表面の脱毛クリームは流してしまったはずだから、これで髪が溶けちゃったら、それはもう手遅れってこと…。
もはやここまで…。

そう観念して、いつものルーティーン通り髪にコンディショナーを馴染ませて洗い流した。
幸い、束になって髪が流れていったり、途中で切れたりすることはなかった。
でもまだケラチンはいる。（やっぱちょっと髪表面溶けたんやろな）

人のものを勝手に使うの、本当にやめようと思った。