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('01) Jack Johnson / Brushfire Fairytales

ハワイ・オアフ島出身のジャック・ジョンソンのデビュー・アルバムは、ビーチ・ボーイズから連綿と続くサーフ・ミュージックに、2000年代における新たな形を提示した。陽気で軽快でポップなメロディと、レイドバックしたフォーク・サウンドは、まさに海で(特に海に向かう道中で)聴きたい音。

アコースティックでフォーキーなスタイルを基調にしつつ、ヒップホップやラテン、レゲエあたりの風味も緩やかに織り交ぜ、心地良さを追求したようなリラックスできるアルバムに仕上がっている。素朴なままの彼の魅力がその心地良いメロディとなって流れていく。かと思えばときにシリアスなラインを挟むあたり、ソングライターとしての才能の片鱗も。


大学生の頃、兄貴が持ってた漫画「BECK」で「竜介くん」が「あ~、ジャック・ジョンソン聴きてぇ」とつぶやくシーンを読んだ記憶がある。同じ時期にバイト先のタワレコでジャック・ジョンソンの"To The Sea"に出逢って以来、僕は事あるごとに「あ~、ジャック・ジョンソン聴きてぇ」とつぶやくのです。特に5月以降の、海の気配を感じたくなる頃になると、無性にジャック・ジョンソンを聴きたくなるのです。サーフィンには全く興味ないし、そもそも泳げないけどね。

「通りの先に海が見える!」そんな時こそジャック・ジョンソン。

このファースト・アルバムの時点でジャック・ジョンソンのエッセンスは既に存分に含まれていて、以降彼は基本的に変わることなく、自然な波に乗るように、のらりくらりとそのキャリアを進めている。そんな印象。

ハワイに生まれ、プロ級のサーファーで、ある日サーフィン中に大けがして、暇つぶしに音楽始めたら才能があって、知り合いが撮った映像に自作曲を付けたら大好評で、デビューして比較的早めに世界的に売れるようになり・・・。となんだか絵に描いたような鮮やかな人生だけど、彼の自然体でオーガニックな音楽性を前にするとそんなことは枝葉に過ぎなくて、その飾り気がなくシンプルで純粋なメロディや声や演奏は、ただゆったり聴いて音の中に浮かんでいればいいという安心感がある。


去年は運良く仕事で函館に行く機会があったのだけど、その時は残念ながら(?)ビーチ・ボーイズ&サザン三昧だったから(それはそれで最高)、今年の夏は海に向かいながらジャック・ジョンソンを聴きたいものだ。そして、何もせずぼーっと波の音を聞いていよう。

サングラスにマスクだと完全に不審者だけどね。

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