見出し画像

小説「転職王」第二話 磯野商事

佐藤健二は緊張しながら磯野商事の入社式に臨んだ。
大日本大学を卒業し、新卒で磯野商事の新規事業部に配属された彼は、配属初日に部署の上司である鈴木誠一に挨拶に行った。

佐藤健二:(平気だ、緊張しないで。彼がこれからの上司だ。)「鈴木課長、初めまして。佐藤健二と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」

鈴木課長:「ああ、佐藤くんか。よろしくな。お前、新規事業部で活躍できるかな?ちゃんと働けるんだろうな。」

佐藤健二:「はい!精一杯頑張ります!」

鈴木課長:「そうか、期待しているぞ。だが、期待外れにならないようにな。」

佐藤は平身低頭で鈴木課長に頭を下げたが、心の中では舌打ちをした。

佐藤健二(この上司、ちょっと偉そうで嫌味だな。まあ、我慢しなきゃ。)

新規事業担当の仕事

佐藤健二は、上司である鈴木誠一課長からビジネスにおいて重要な交渉術を学んでいった。
ある日、鈴木課長と一緒に新興国企業との交渉が行われる場に同席した佐藤は、その場で鈴木課長が実践する交渉術を目の当たりにした。

鈴木課長:「この度はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。私たち日本の磯野商事は、貴社とのパートナーシップを大変重要視しています。まずは、貴社の文化や価値観について教えていただけますか?」

佐藤は、鈴木課長が相手の立場や文化を理解しようとする姿勢に感銘を受ける。

その後、鈴木課長は提案を行う。
鈴木課長:「私たち磯野商事が提案するプロジェクトは、貴社にも大きなメリットがあると考えています。特に技術面での協力が双方にとって有益だと確信しています。」

佐藤は、鈴木課長が相手にメリットを感じさせる交渉内容を提案することで、ウィンウィンな関係を作り上げようとしていることに気づく。

最後に、鈴木課長は進捗状況について説明する。
鈴木課長:「プロジェクトが進むにつれて、定期的に報告を行い、お互いの意見を共有し合いましょう。進捗が遅れた場合や問題が発生した場合は、速やかに連絡し合って対応していきましょう。」

佐藤は、鈴木課長が交渉の途中で情報を適切に共有し、相手に不安や疑問を抱かせないようにする姿勢を学ぶ。

ある日、佐藤が営業部の黒田主任とともに大事なプレゼンを行うことになったが、当日になって黒田主任が急病で欠席することになってしまった。
そんな窮地に同期で親友の栗原 保が助け舟を出す。

佐藤(今日のプレゼンに必要な彼のパート、どうしよう…)

栗原「おいおい、ええ加減にせんかいな、健二!」

佐藤「何が?」(今忙しいのに騒がしいやつだなぁ)

栗原「そんな時は俺が手伝ってやるさかい!俺も営業部には少し関係あるから、パートなんかなんとかするさかい!」

佐藤「クリハラ、本当に助かるわ…ありがとな。でも、お前の時間はもったいないんじゃないか?」(マジで)

栗原「別に大したことしとらん。今後の俺のためにも、健二に貢献できたらええなと思ってやってるだけやさかい。」

佐藤「そうか…栗原には感謝するわ。でも、それでも仕事を引き受けてくれるなんて…」(ありがたい)

栗原「仕事仲間は手を貸し合うもんさ。お互いに支えあって、会社全体のために力を合わせるんやろな。」

佐藤「そうだな…栗原にそんなこと言われたら、俺も負けていられないな。俺も今後はクリハラのために何かお返しできるよう、頑張るわ。」

栗原「お互いに、頑張ろうや。」

同期

磯野商事に入社して2年目のある日、佐藤は山内玲奈、栗原保の3人の同期で飲みに行くことになった。

佐藤:「鈴木課長って、本当に厳しいよね。昨夜も無理やり残業させられて、席を予約していた映画を見に行けなかったよ。言い方が怖いから逆らえないし、口ごたえするともっと怖くなるし。」(見たかったのに、本当ムカつく)

山内:「そうなんだ…私もちょっと怖いと思ってたけど、そんなに厳しいとは思わなかったわ。」

栗原:「せやな、わても一度、提出期限を間違えて遅れそうになった時、めっちゃ怒鳴られたことがあるで。」

山内:「佐藤さん、大変だと思うけど、頑張ってね。」

佐藤:「ありがとう、山内さん。君たちがついてくれてるから、何とかやっていけてるよ。」(もっと楽に働ける環境に行きたいな……)


佐藤健二と山内玲奈はある日、プロジェクトの資料作成で一緒に残業することになった。山内は明るく話しかけてくる。

山内:「佐藤さん、今日は一緒に残業ですね。頑張りましょう!」

佐藤:「うん、そうだね。ありがとう、山内さん。」(また残業か……つらいな)

佐藤は山内に対して恋心を抱いていたが、なかなか本音を言えないでいた。しかし、山内が適切なアドバイスをしてくれる様子に、徐々に信頼感が芽生える。

山内:「佐藤さん、この資料のレイアウトはこうした方がもっと見やすくなると思いますよ。」

佐藤:「ほんとうに?ありがとう、山内さん。助かるよ。」(本当に助かるけど、作業増えてちょっと面倒くさいな。)

山内:「いえいえ、お互い様ですから。これからも一緒に頑張りましょうね!」

佐藤:「うん、そうだね。ありがとう。」(山内さんと一緒にいると楽しいけど、こんなに仕事が詰まっているときには少しうざいな。)

佐藤は表向きは感謝の言葉を述べていたが、心の中では逆のことも考えていた。それでも、山内の明るさに惹かれ、次第に恋心が強まっていく。
彼は山内とのコミュニケーションを大切にし、仕事を通じてさらに親密な関係を築いていくことを決意する。


次第に佐藤健二は山内玲奈とのコミュニケーションを楽しみにするようになり、山内も佐藤に対して友情を感じ始める。

山内:「佐藤さん、今度の週末、新しくできたカフェに行ってみませんか?評判が良いんですって!」

佐藤:「いいね!行ってみよう。」(山内さんとデートみたいで楽しみだけど、残業で見られなかった映画見ておきたかったなぁ)

その週末、二人は新しくできたカフェで楽しい時間を過ごす。山内の明るさに包まれた佐藤は、次第に自分の発言と心の中の本音の境界が消えていくのを感じる。
佐藤:「山内さん、今日はありがとう。すごく楽しかったよ。」(山内さんと一緒にいると、本当に楽しい。)
山内:「こちらこそ、佐藤さん。また一緒にどこかに出かけましょうね!」

佐藤:「山内さん、今度の週末、話題の映画を見に行かない?」(残業命令で行けなかったし)

山内:「いいですね!行きましょう!」


しかし、その週末の前日、鈴木課長が佐藤に対して突然の休日出勤指示を出す。

鈴木課長:「佐藤!明日中にこの企画書を完成させろ!」

佐藤:「分かりました。」(まったく、鈴木課長のせいで玲奈さんとの映画デートがパーになるなんて…)

山内には申し訳ないと思いつつ、佐藤は映画デートをキャンセルしなければならないことを伝える。
佐藤:「山内さん、ごめん。鈴木課長の指示で急な残業が入ってしまって、明日の映画は無理そうだ…」(本当にパワハラ上司腹たつ)
山内:「大丈夫ですよ。仕事が終わったら、また別の機会に行きましょうね!」


佐藤は山内の優しさに感動したが、心の奥底では鈴木課長への不満が募っていた。
「クソ上司だ。こんなことで玲奈さんとの約束を破るなんて許せない」と佐藤は思いながら、残業をしていた。


大手日用品メーカー月王との仕事

佐藤健二が入社3年目を迎えた時、磯野商事は月王という大手日用品メーカーの新商品の画期的な素材探索の案件を引き受けることになった。
この案件は、新興国のビジネスに精通している人材を必要とするもので、鈴木課長の得意とする領域だった。佐藤はそのサポート役として月王商事との打ち合わせに参加した。

和久:「いつもお世話になっております。月王商事の和久隆男と申します。」

佐藤:「いつもお世話になっております。佐藤健二と申します。磯野商事で鈴木のサポートをしております。」(他の上司なら良かったのに)

和久:「よろしくお願いします。早速ですが、今回は新商品の素材探索についてですが、磯野商事が担当してくださるとのことで安心しました。」

佐藤:「ありがとうございます。私たちも最善を尽くします。」(鈴木とは話したくないから自分でやりきりたい)

和久:「まずは、現地調査が必要となります。磯野商事さんの得意とする新興国ビジネスに詳しい方が必要です。」

佐藤:「はい、弊社の課長鈴木がそういった経験を持っていて、私も同席したことがあります。」(ムカつくけど仕事はできるんだよなぁ)

ここで他の打ち合わせで5分遅れた鈴木が入室した。
鈴木:「勝手に進めるな、佐藤。君はまだまだ未熟だから、黙って聞いていろ」

和久:「そんなに厳しく言わなくてもいいんじゃないですか。彼は新しい視点を持っているかもしれませんよ」

佐藤:「出過ぎた真似をして申し訳ございません」(あいつ、いつも俺を見下してやがる。でも、この案件で力を見せてやる)

打ち合わせが進む中で、佐藤は自身が習得したビジネス手法を活かし、月王と協働して新素材探索の仕事を成功させた。

和久:「佐藤さん、お見事ですね。新しいアプローチで相手を説得することができましたね」

佐藤:「和久さん、ありがとうございます!」(このアイデアは磯野商事で学んだものだけど、自分の血肉になっているんだなぁ)

鈴木:「まあ、佐藤も何とかやってくれたようだな。でも、調子に乗るなよ。これからも精進しろよ」

こうして、佐藤は磯野商事で学んだビジネス手法を活かし、月王との交渉に成功することができました。しかし、鈴木課長からはまだまだ厳しい評価を受けていました。

ある日、佐藤健二は上司の鈴木課長から、大手卸のパーティに参加するよう指示されました。佐藤は、磯野商事の顧客拡大に貢献するためにも参加することにしました。
パーティの中で、佐藤は再び和久隆男と出会いました。
和久は大手日用品メーカー月王の新商品開発担当者で、佐藤が担当する新興国新規事業と重なる分野に携わっていました。
佐藤は和久との再会をきっかけに、月王に興味を持つようになっていた。磯野商事の案件で月王と共同作業を行う中で、佐藤は月王の企業文化やビジネスモデルに共感を覚えるようになったのだ。

ある日、鈴木課長が佐藤を呼び出した。
鈴木課長:「佐藤、新しいプロジェクトの責任者をしてもらう。期日までにきちんと成果を出せなければクビだぞ。」

佐藤:「はい、わかりました。頑張ります。」

佐藤は期日までにプロジェクトを完了させたが、鈴木はそれでも細かい指摘を続けた。
鈴木課長:「ここの数字はどうなっているんだ。もう少し細かく調べろ。」「こんな小さなミスも見つけられないのか。もっと気をつけろ。」

鈴木の指摘は次第に厳しくなり、佐藤はますますストレスを感じるようになった。
佐藤:(もう限界だ。こんな仕事続けていたら、精神的に壊れてしまう。)

佐藤は他の部署に異動させてもらえないかと鈴木に相談したが、鈴木は却下した。
鈴木課長:「その程度のことで逃げるつもりか。このプロジェクトをやり遂げることが君の使命だ。」

佐藤はこれ以上鈴木の指導を受けられないと感じ、退職の意思を固める。
佐藤:(もう無理だ。退職するしかない。)

ある日、佐藤は鈴木に辞表を提出した。
佐藤:「鈴木課長、私、退職したいと思います。」

鈴木課長:「何だと、退職だって?このプロジェクトが終わるまでは辞めるわけにはいかないぞ。」

佐藤:「すみませんが、もう限界です。お世話になりました。」

佐藤は鈴木課長からのパワハラに耐えかねて退職し、月王に転職する決意を固めた。
佐藤は、和久に連絡を取り、月王への転職について相談した。
和久は佐藤の実力を評価し、人事部との橋渡しをしてくれた。


佐藤は親友の栗原 保と親密になってきたが残業続きで仲が進展していない山内 玲奈に転職を告げる。
佐藤:「クリハラ、実は月王に転職しようと思ってるんだ」

栗原:「おお、それはなかなか大きな転機やな。どうしてそんな考えに至ったんや?」

佐藤:「磯野商事での仕事も面白いけど、もっと大きなプロジェクトに携わってみたいとか、色々と考えてさ。月王に興味があってね」(本音は鈴木課長がもう嫌で仕方ないんだけど)

栗原:「月王か…確かにそれはデカいチャレンジやな。でも、そんな大企業でも佐藤なら活躍できる自信はあるんとちゃう?」

佐藤:「まあ、自信はあるけど、やっぱり心配な部分もあるわけで…。クリハラ、君の意見が聞きたかったんだ。どう思う?」

栗原:「それはな、健二が転職するっていうのは正直びっくりやったわ。でも、お前が決めたことやから、わしも全力で応援するわ。何かあったら相談してや」

佐藤:「ありがとう、クリハラ。君がそう言ってくれると、自信がつくよ」


佐藤は山内玲奈との関係に悩んでいた。転職したいという気持ちはあるけれど、山内と別れたくないという葛藤があった。ある日、佐藤は山内に転職を決意したことを告げるために、彼女を誘って久しぶりのデートをすることにした。
イタリアンでの食事後、

佐藤:「山内さん、実は今日話があってさ、転職を決めたんだ」

山内:「えっ、そんなに急に?どうして?」

佐藤:「自分のキャリアをもっと広げたいっていう気持ちがあったんだ。でも、君とは離れたくないっていう気持ちもあってさ」

山内:「離れたくないって…本当に?」

佐藤:「本当だよ。僕は君と一緒にいるのが幸せだから、転職先でも、山内さんとの関係を大事にしたいと思ってる」

山内:「そう言ってもらえると、とても嬉しいわ。でも、転職ってどこに行くの?」

佐藤:「大手日用品メーカー・月王に行くことになったんだ。僕が新興国ビジネスで学んだことを活かせる仕事だし、将来的には大きな成長が見込めるんだ」

山内:「そうなの?それは素晴らしいことだわ。私も健二さんと一緒に成長していきたいと思ってるから、応援してるわ」

佐藤:(健二さん?ドキッ!)「ありがとう、玲奈さん。君の応援があれば、きっと僕は乗り越えられると思う」(さりげなく呼び方変えたけど大丈夫かな…)

↓↓↓ 第三話に続く ↓↓↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?