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小説「転職王」第七話 グリーン建設

佐藤は、ハローワークで仕事を探すことから、自分の人生を立て直すための第一歩を踏み出すのでした。

ハローワーク

40歳となった佐藤健二の条件に合うハローワークの端末にアップされている求人の中で候補に残ったのは以下の通り。

  1. 社名: サクラ電機 仕事: 営業職 待遇条件: 月給25万円、交通費全額支給、昇給年1回、賞与年2回

  2. 社名: スターテック 仕事: ITコンサルタント 待遇条件: 月給35万円、交通費全額支給、昇給年1回、賞与年2回

  3. 社名: アオイソフトウェア 仕事: システムエンジニア 待遇条件: 月給30万円、残業手当、昇給年1回、賞与年2回

  4. 社名: マリンバイオ 仕事: 研究員 待遇条件: 月給28万円、交通費全額支給、昇給年1回、賞与年2回

  5. 社名: グリーン建設 仕事: 建築現場監督 待遇条件: 月給35万円、住宅手当、昇給年1回、賞与年2回

佐藤は給与が高めで、今までの経験に近いスターテックとアオイソフトウェアを選んで、履歴書と職務経歴書を作成し、期待に胸を膨らませて応募書類を送付しました。
しかし、両社からは書類選考の段階で不採用通知が届いてしまいました。

佐藤:「うーん、どうやら今までの経験が仇になっているみたいだ。」

栗原:「そないにすぐに諦めるなよ。他にもまだぎょうさんの会社があるやないか。」

佐藤は落ち込みながらも、栗原の励ましによって片っ端から受ける決意をして就職活動する中で、全く経験のない分野であるグリーン建設の面接を受けました。


建築業の仕事

谷本 人事課長(面接官):「佐藤さん、過去の失敗については率直にお話しいただきありがとうございます。その反省を活かす決意を評価して、まずは現場監督の月給35万円ではなく、事務職の月給25万円で採用することを提案します。」

佐藤:「ありがとうございます、谷本課長。このチャンスを無駄にしないよう、全力で頑張ります!」(まずは、再スタートを切ることだよな。本当に有難い)

採用されてから、佐藤健二は谷本順課長に深い感謝を感じるようになりました。
佐藤は事務職として勤務を開始し、総務課の木内 直子課長34歳が上司になりました。佐藤健二にとっては、会社員としては初めての年下上司でした。

木内課長:「佐藤さん、これから一緒に働くことになりました木内です。よろしくお願いします。」

佐藤:「木内課長、よろしくお願いします。これからお世話になります。」

建築士でもある木内課長は、総務課の前に各部署を経験しており、幅広い建築業界知識を持っていました。彼女は佐藤に事務職に限らず様々な業界知識を教え、佐藤はその知識を身に付けていきました。

佐藤:「木内課長、建築基準法や適用基準、さらには建築設計や構造計算、現場管理まで、この業界のことを教えていただき、本当にありがとうございます。」

木内課長:「いえいえ、これも私たちの仕事の一環ですから。あなたがどんどん成長していくのを見るのが楽しみですよ。」

半年後、佐藤は事務職での仕事を通じて、建築現場の知識を身に付け、率先して問題解決に取り組む姿勢を見せました。
彼は建築法規や設計原則、工法や施工技術などの網羅的な知識を習得し、実務にも活かしていきました。

改善活動

佐藤:「木内課長、ちょっと提案があるんですが。現場仮設施設の使い勝手を改善することで、労働者の働きやすさを向上させて生産性を上げるんじゃないかと思ってます。」

木内課長:「ふむ、具体的にどのような改善を考えているんですか?」

佐藤:「まず、休憩所や食堂を広くして、休憩中にリラックスできる空間を提供しましょう。それから、トイレの数や清潔さにも気を使い、不快な思いをしないようにしたいですね。」

木内課長:「なるほど、確かに働きやすさを向上させると生産性も上がりそうですね。」

佐藤:「そうなんです。現場の皆さんにも声を聞いて、どんな改善が求められているかを把握しましょう。」

木内課長:「良いアイデアだと思います。それじゃあ、佐藤さん、現場のスタッフと話をしてみて、具体的な改善案をまとめてみてください。」

佐藤:「了解です、課長!」

(佐藤は現場スタッフと話をし、仮設施設の改善案をまとめる)

佐藤:「木内課長、現場の皆さんからの意見をまとめた改善案を作成しました。」

木内課長:「おお、さすが佐藤さん。それじゃあ、それを上層部に提案しましょう。」

(佐藤と木内課長は上層部に提案し、仮設施設の改善が実現される)

佐藤:「おかげさまで、現場の皆さんからも喜んでいただけました。これからも働きやすい現場を作るために、改善案を考えていきたいです。」

木内課長:「佐藤さん、良い仕事をありがとう。これからも一緒に現場をより良くしていきましょう。」

また、ある日のこと
佐藤:「木内課長、また提案があるんですが。現場作業のデジタル化を進めることで、作業の進捗管理や労働者間のコミュニケーションを効率化できると思うんです。」

木内課長:「デジタル化ね。具体的にどのような取り組みを考えているんですか?」

佐藤:「例えば、タブレットやスマートフォンを活用して、各作業の進捗状況をリアルタイムで共有できるようにすることです。これにより、作業の進捗状況が一目でわかり、労働者間のコミュニケーションもスムーズになると思います。」

木内課長:「なるほど、確かにデジタル化が進むことで、作業効率が向上しそうですね。」

佐藤:「そうなんです。現場の皆さんにもデジタル機器の使い方を教えて、どんな情報が共有されているかを把握しましょう。」

木内課長:「良いアイデアだと思います。それじゃあ、佐藤さん、現場のスタッフと話をしてみて、具体的なデジタル化の取り組みをまとめてみてください。」

佐藤:「かしこまりました、課長!」

(佐藤は現場スタッフと話をし、デジタル化の取り組みをまとめる)

佐藤:「木内課長、デジタル化の取り組みをまとめました。タブレットの導入やアプリの開発など、具体的なアクションプランも作成しました。」

木内課長:「おお、さすが佐藤さん。建築一筋の私には考えられない発想です。それじゃあ、それを上層部に提案しましょう。」

(佐藤と木内課長は上層部に提案し、現場作業のデジタル化が実現される)

佐藤:「おかげさまで、現場の皆さんからもデジタル化による効率化が評価されました。これからも現場をより良くするために、改善案を考えていきたいです。」

木内課長:「佐藤さん、良い仕事をありがとう。これからも一緒に現場をより良くしていきましょう」


昇進

木内 総務課長:「谷本課長、ちょっと相談があるんですが、佐藤さんの活躍が目立ってきていて、彼の昇進を提案したいんです。」

谷本 人事課長:「確かに、最近の佐藤さんの働きぶりは目覚ましいですね。どのような昇進を考えているんですか?」

木内課長:「彼の現場での提案力や問題解決能力を活かすために、建築現場監督に昇進させたいと思っています。」

谷本課長:「良い案だと思います。それでは、経営陣に提案してみましょう。」

(谷本課長と木内課長は経営陣に佐藤の昇進を提案し、経営陣もその提案を承認する)

経営陣:「佐藤さんの活躍は目に見えています。彼の昇進は当然だと思います。建築現場監督に昇進させましょう。」

木内課長:「ありがとうございます。佐藤さんには、今後もグリーン建設の現場をより良くするために頑張ってもらいたいです。」

谷本課長:「佐藤さんには、これからも期待しています。昇進のお知らせを伝えてくださいね。」

木内課長:「はい、承知しました。佐藤さんには、喜んでもらえると思います。」


(木内課長は佐藤に昇進のお知らせを伝えるため、彼のデスクに向かう)

木内課長:「佐藤さん、ちょっとお時間いいですか?」

佐藤:「木内課長、何でしょうか?」

木内課長:「実は、あなたの活躍が経営陣にも認められ、建築現場監督に昇進することになりました。おめでとうございます!」

佐藤:「えっ、本当ですか!? ありがとうございます!」

木内課長:「あなたの現場での提案力や問題解決能力が評価されての昇進です。これからもグリーン建設の現場をより良くするために、頑張ってくださいね。」

佐藤:「はい、ありがとうございます。これからも精一杯頑張ります!」

谷本課長:「佐藤さん、本当におめでとうございます。これからも期待していますよ。」

佐藤:「谷本課長、ありがとうございます。これからもご指導よろしくお願いします。」


廃材と環境

建築現場監督となった佐藤健二には喜多川 光という部下がついた。

佐藤:「喜多川くん、先日の会議で話した環境に配慮した廃材処理について、田代化学工業の上田部長とディスカッションしてみたんだ。彼らは建設業界での廃材処理のエキスパートだから、何かアイデアがあるかもしれないと思ってね。」

喜多川:「それはいいですね。どんなアイデアが出たんですか?」

佐藤:「上田部長は、例えばコンクリートとガラスを粉砕して、土壌の改良材として再利用するという案を出してくれたんだ。これなら環境負荷も少なく、土壌改良にも役立てることができるからね。」

喜多川:「なるほど、粉砕したものを再利用するというアイデアは素晴らしいですね。他にはどんなものがあったんですか?」

佐藤:「上田部長は、金属部品を再利用する方法や、廃材を燃料として利用する方法なども教えてくれたよ。これからも、田代化学工業と協力して、より環境に優しい廃材処理を実現していきたいね。」

喜多川:「素晴らしいですね。私たちの会社も環境保護に貢献できるよう、積極的に取り組んでいきましょう。」


(上田部長から教わった知識を元に佐藤は現場の廃材処理プランを作成した)
佐藤:「それでは、この提案について、上田さんのご意見をお聞かせください。

上田部長:「はい、この提案には非常に興味があります。当社でも、建築現場で出る廃材の受け入れや再生に力を入れております。
ただ、それだけでは資源の有効活用につながらない場合もあります。例えば、コンクリートやガラスなどの再生建材は需要が少なく、販売が困難という課題があります。」

佐藤:「それは残念ですね。では、他にどのような課題があるでしょうか?」

上田部長:「廃材の品質管理や集荷方法なども課題として挙げられます。現場からの集荷は手間がかかり、また廃材の品質がばらつく場合があります。」

佐藤:「確かに、廃材の品質管理や集荷方法は重要ですね。田代化学工業さんでは、そのような課題に対してどのように取り組んでいらっしゃいますか?」

上田:「当社では、建築現場から廃材を集荷する際には、検査員が現場に出向いて品質を確認しています。また、廃材を分別するために、分別機を導入しています。これにより、廃材の品質を一定に保ち、再生建材の品質を向上させています。」

佐藤:「なるほど、検査員による品質管理や分別機の導入によって、品質の向上に取り組んでいらっしゃるのですね。私たちも、これらの課題について考え、解決策を見つけることが大切ですね。」

喜多川:「上田部長、廃材の再利用において、田代化学工業さんが取り組んでいることや課題について、非常に参考になりました。ありがとうございました。」

上田:「いいえ、こちらこそありがとうございました。これからも、より良い再生建材を提供するために努めてまいります。」


佐藤健二は「建築現場から廃材を集荷する際には、検査員が現場に出向いて品質を確認」していることに改善ポイントを見つけた。
画像認識AIや各種測定器を活用して建築現場で品質を確認できる仕組みを開発したのだ。これにより、廃材の再利用可否が現場で判別可能となり、全体の効率アップと環境負荷軽減に繋がったのだ。

ある日、建築業界で環境に配慮した廃材処理の提案が話題になっていた。
その中で、佐藤健二が提案した再資源化技術が注目を浴び、環境省の担当者である西崎 龍彦からも注目を受けることになった。

西崎は、佐藤が提案した再資源化技術を高く評価し、環境省が主催する「環境技術大賞」に推薦することを決定した。
佐藤は驚きつつも、喜多川 光と共に喜びを分かち合った。

佐藤:「本当にうれしいです!ありがとうございます!」

西崎はにっこりと微笑みながら、「あなた方の技術には、大変高い評価をしています。建築現場での廃材処理において、再資源化の観点からも非常に意義のある取り組みだと思います」と褒めた。

佐藤は照れくさそうに頬を染めながら、言葉を続けた。
「私たちは、廃材処理の問題を解決するために、より環境に配慮した再資源化技術を開発していきます。今後も、建築業界に貢献できる技術開発に取り組んでまいります」

西崎は、佐藤の熱意あふれる姿勢に感心しながら、再度笑みを浮かべた。「素晴らしいですね。今後の活躍が楽しみです」と言葉をかけ、その場を後にした。

44歳になった佐藤健二は、グリーン建設での現場仕事にも慣れ、次第に周りからの信頼を勝ち得るようになりました。
特に、人事課長の谷本順からの恩を感じることが多く、彼との関係が深まっていきました。

谷本順:「 佐藤さん、あなたは本当に仕事ができる人ですね。私たちの会社に来てくれて、本当にありがたいです。」

佐藤健二: 「いえいえ、谷本さんのおかげで、私もここまで成長できました。これからもよろしくお願いします。」

谷本順との関係をきっかけに、佐藤は人事の仕事に興味を持ち始めました。そんな時、大手小売業チェーンJMR(Japan Marketing Retailing)から、佐藤健二宛にヘッドハントの話が舞い込みました。

佐藤健二は、このチャンスを逃さず、JMRの人事部長・橋口 浩太との面接の機会を得ることができました。面接の日がやってきて、緊張しながらも、佐藤は自分のこれまでの経験やスキルをアピールしました。

橋口浩太: 佐藤さん、あなたの経験は非常に魅力的です。これまでの仕事で得たスキルや知識を、私たちの会社で活かしていただけると嬉しいです。

佐藤健二: ありがとうございます。もしJMRで働くことができれば、私も全力で頑張りたいと思います。

面接が終わり、佐藤は帰り道で考え事をしていました。自分にとって、この転職がどのような意味を持つのか、そして、これからどのような人生を歩んでいくのか。彼は自分のこれまでの人生を振り返りながら、自分の選択について真剣に考えました。

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