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a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑰

デュベルが立ち並ぶ訓練所の一画にある、さほど広くない私邸の門をくぐり中に入ると、訓練の支度をしている何人かの小姓たちと剣を腰に帯びたサイラスの姿が見える。

「やあ、デュベル。来たね」

サイラスは前よりもたくましくなっているが、にっこりと笑う笑顔は変わらないままだ。

「こんにちは、サイラス。
そのために鍛えてきたのよ。あなたももちろん出るんでしょう?」

「ああ。
一番弟子の私が出ないわけにはいかないさ。そして負けるつもりもないよ」

「まあ、自信満々ねぇ、憎たらしいわ」

「ははは、まだ武術大会まで間があるんだから、そんなに噛みつかないでくれよ」

二人が話しているところへ革鎧姿のサー・ユージーンが顔を出した。

「なんだよ。
誰も来ねえと思ったら、お前が来てたのかよ」

「あら、叔父上・・・また、そんな恰好をして!
もう、訓練はサイラスに任せるって言ってたじゃないですか」

「う、うるせえなぁ。俺はそんなこと言ってねぇ。

来い!
お前がどれだけ腕を上げたか見せてみろ。

あと、お前「叔父上」って呼ぶなや」

「望むところです。大会まで存分に胸を借りるつもりですわよ。
叔父上」
 

トリンシックで賑やかに開催される武術大会では、戦士たちの力強い技の競い合いに観客をはじめ、戦士を志すものたちも歓声をあげ、大いに沸き返る。

その武術大会には、街に魔物が現れた時、魔物の首領を倒した騎士のサー・ユージーン・イーノックの名が冠されている。
 
 

 

2023.12.26


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