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小説「ひと」感想 ※ネタバレあり

小野寺 史宜さん著「ひと」

この本は職場の方にお薦めしていただいた本で

急なお薦めだったので、「僕に読んでほしい何かメッセージがあるのか?」とか思ってちょっとドキドキで読んでみました 笑
お薦めしてくれた人と感想をどんな風に喋ろうと思って、色々と思考しながらnoteにまとめてみることにしました。


感想

純粋に面白かった!
んですけど
ただひとえに面白かったと言っても様々な面白さがある中で
単純明快な勧善懲悪!とか大どんでん返しや急展開の冒険活劇!とかそういうワクワクやハラハラ!みたいな面白さではなく

「友達のゲームプレイを見る」

みたいな面白さ。意味わからないですよね。笑

説明すると、この本は主人公の聖輔の選択や生き方、周囲との接し方を見て
モヤモヤしたり、不安になったり、関心したりする面白さだったんです
感情移入して主人公の気持ちになるってよりは知人の話を聞いてる感じというか、あくまで聖輔と自分は違う人間で違う思考を感じさせられる

それって横から友達がプレイするゲームを見て、あっち行けば良いのに、こっち行けば良いのに、へ〜そうやって進めるんだ、今のプレイ上手い!とかそういう感情に似てるなって思いました
友達のゲームには口出しできたり交代できたりするんでそこは違うかもしれないんですけど笑

そしてプレイヤーが聖輔だったからこそ見られた、特別なエンディングで、自分がプレイすると違うエンディングだったかもなってなる本でした。


好きなシーン

おかずの田之倉の店主、督二さん詩子さん夫妻に店を辞めることを伝えたシーンが個人的には好きでした
辞める理由に”他の店も見ておいた方がいい”っていう自分のための理由しか
伝えない事も、本当は先輩の映樹さんに譲ったことに気づいてくれた督二さん、こういう時に譲れるのはお父さん譲りって事も
その全部が素敵なシーンだったな〜

普通に泣いた 笑


あと聖輔の聖人シーンは単純に尊敬できるし好きです
・大切なベースを少年に譲り、弦まで換えてあげる優しさ、3000円でも売ろうかなって迷ってたのに!
・お金持ちの友人の家でご馳走になった時も、いい生活を見せられても腐らず前向きにいられたこと
・お金をたかりにきた親戚の深夜バス代くらいは出しても良かったと思えるデカすぎる器

そんな聖輔を好きになる青葉ちゃんの気持ち僕はとても解るけど、全然理解できない人も居るんだろうなっても思う

最後の告白のシーンは、予測できたけど歯切りのいい素敵な終わり方だった


勝手に最後どんでん返しがあると思って読んでたから付き合ってすぐにどちらかが事故に遭って終わり、とかだったら嫌だなとか思って読んでました、そんな本は人に薦めないか笑



この本をオススメしてくれた理由

多分、単純に「最近読んで良かったからオススメしてみた!」だと思うんですけど
僕はたまに「この本めっちゃ良かったな〜あの人にも刺さりそうだな〜」
って理由でお薦めする事もあるんで一応深読みしてみたいと思います。

思いつくのは2つくらいあって、1つめ
おかずの田之倉の先輩、映樹さん、彼はどうしようもない奴で遅刻したくせに理論武装してヘラヘラしてる奴、最初はみんな嫌いだったと思うんですけど、いい彼女ができて、子どもも授かり、結婚し、丸くなりますよね

僕は今の職場にかつて勤めていた遅刻の常習犯のことをボロクソに言っては
新規のスタッフに遅刻しないよう脅しています笑
多分この本を薦めてきたのは、その遅刻の常習犯もあの時はどうしようもなかったけど、きっといつか改心しますよ、許してあげましょうという
聖母のようなメッセージなのです。

2つめ
主人公、聖輔の鳥取時代からの友人の青葉ちゃん
彼女は慶應生のカッコいい彼と価値観の違いでお別れしてしまい「彼のことは悪い人じゃないんだけど…」と言います
そして青葉ちゃんは聖輔のことは価値観も合うし、なんなら尊敬できるとすら思っていそう
ステータスよりも価値観、強さより優しさ、といった青葉ちゃんの好みがよく伝わりますし、聖輔も同じだからこそ、惹かれ合ったんでしょう

多分この本をお薦めしてきたのは「一見地味な、ストーリーだけどこのお米の甘さみたいな良質なお話を感じられる感性、お前は持ってるのかい?」
「私と同じ感性ですか?あなたは?」
と試されているのです

安心してください、こういう話、大好物です
お薦めしてくださってありがとうございました。


あしたのC

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