見出し画像

「気まぐれなジャガー」

やっと6月が終わった。

推しているBL作家さんが、偶然お二方とも連載をお休みした魔の6月。

辛すぎてお星様になるかと思った。


BLで負った傷は、BLでしか癒せない。

(はい名言出ました)

とりあえず、商業、創作関係なく普段手を出さない様な作品から、何度も読みたくなるお気に入り作品まで一心不乱に読んだ。


今回は、そんな瀕死のワイを癒してくれたお気に入りのリピしまくり作品「気まぐれなジャガー」


作者はウノハナ先生。2人組でいらっしゃるので、正確にはチーム ウノハナなのかもしれない。

ストーリーは細かく作り込まれていて、画風も丁寧でスマート。「今時ヤンチャな男の子」のエロッぽさが、嫌味なくキュートに描かれていてオバチャンでも浮足立つ。


ギターに愛された天才、椎名 宗純(しいなそうじゅん・受)と、そんな宗純に愛された近所のお兄ちゃん麻生 新(あそうあらた・攻)。

宗純は、ギタリストとして参加したバンドPegが爆売れ。アラタは大好きだった音楽雑誌「Rock&People」の編集者になる。

今気づいたけど、2人のイニシャルってS.SとA.Aなんやな。……特に話広がらんけども。


「ギターゆーたらギブソンちゃうんか?」なワイなので「フェンダー ジャガー」を日本で使っているギタリストは少ないんじゃないかと調べたら、ラ〇クさんとかイエ〇ンさんとか結構いらっしゃって驚いた。でも裏をとった訳では無いので深堀りはやめておく。

エビデンスを重んじる変態。好きな食べ物はチーズとくるみ。せっかくなので自己紹介を兼ねた。

主人公の2人が、田舎の高校から東京の大学へ進学し、社会人になっていく過程がテンポよく描かれているが、時系列を前後させたストーリー展開がとてもドラマチックで効果的だ。

ただのフワッとした「アオハルBL」にならなかったのは、そういった構成の巧みさもあると思うが、なにしろキャラクターの見た目と中身がすこぶる魅力的に描かれているので、難しいことを抜きにしても存分にハマれる。


まず表情豊かな宗純の愛らしさと健気さが青天井だ。読むたびに可愛さが増す。

寝ても覚めても可愛い。泣いても拗ねても逝っても、多分ウ〇コ漏らしてても可愛い。

要するに全方位で愛らしく、目が離せない気まぐれなネコなのだ。

先に言っておくと、この後「宗純可愛い」を5000回ほどしたためる意気込みである。引き返すなら今だ。


もちろん、攻めのアラタも負けてない。ビジュ(長身・黒髪・眼鏡)は跳満クラス。ギターも上手いし、宗純と2歳位しか違わないはずだが考え方は随分と大人だ。包容力ミシュランも安定の星5つ。

麻雀で言ったら、メンタンピン三色ドラ1あたりか。手堅い。手堅すぎる。

社会人らしい振る舞いと、たまに見せる雄みとは裏腹に、過去に別れ話をし「泣きじゃくる宗純を、田舎道に置いてけぼりにしたこと」を何年経っても悔やんでいる消化の悪さもたまらない。

全ての始まりは、アラタが宗純の目の前で弾いて見せた衝撃的なギターの音だろう。

ぶっ刺さるギターの爆音と、それに負けないくらいぶっ刺さるイケ散らかしたアラタに全てを持ってかれるチビ宗純。あっちゅう間に恋心に変わる。

チョロい宗純、クソ可愛い。

アラタに遅れてギターを始めるも、そこは天才。あっという間に追い越す。それはそれは綺麗さっぱり容赦なく追い越す。

難しいコードなんか秒で覚えるし、カッケー曲もさくっと作ってしまう。

良くある天才の逸話、全部乗せだ。


すぐそばに天才がいる悲劇。

「JI☆GO☆KU」  presented by 宗純。

アラタにしてみたら、なかなかの地獄絵図だっただろう。

しかも当の本人は、純粋にアラタに憧れ、恋心を抱き、いつの日か一緒にギターセッションしたいと夢見ているのだからタチが悪い。

「こんな天才の隣に立てっかよ!」と「宗純可愛い!好き!」相反するふたつの感情に挟まれたアラタは、心も下半身も爆発寸前だ。


しかし受験生のアラタがやった事と言えば、宗純の宗純をいじくる程度。

この先もあるんだろ?なんで最後までしてくれないの?」

アラタに焦れる宗純。ギャンかわ。

いや、さっさとひん剥いてヤワヤワにほぐしたったら良かったんちゃうんか!?

──失礼。

結局、続きはしてもらえないままアラタが大学進学の為上京し、疎遠になる。

こんなご時世だからBLぐらいハピエンにしてくれません課」(ダサい)の自称課長なので、結末は分かっているのに「あ゛ら゛た゛テメー!使う気ないんなら、ちょんぎるぞ!」と思いながら読んでいた。

ごめんよアラタ。好きやでアラタ。


しかし、ギターでつながっていた2人。と言うより音楽を続けていれば、必ずまたどこかで会えると思っていたんだろうか。東京に来てからのアラタは、彼女らしき存在もあったが続いてはいない。

そう考えると、遠距離恋愛等で語られる「距離」というのは、そこまで問題じゃない様な気がしてきた。遠くの叙々苑より近くの吉牛、じゃないんだな。

 ◆

「2年かけて追いかけて来たのに… まだ俺我慢しなきゃなんねぇのかよ」

これは東京で再会した夜「あの日の続き」をする時に、宗純が思わず洩らしたセリフだ。もう「推しセリフ」と言っても良い。

なにかと我慢し続けてきた宗純が、やっとアラタと結ばれる!となったものの、そこはほれ、アラタもノンケだし?勢いしかないし?準備もそこそこにおっぱじめるので、最初は相当痛かったご様子。

でも「やめるか?」と聞くアラタに「ふざけんな!絶対する!」と頑張る宗純。シコい。

どちゃしこプンプン丸。

萌え禿げるどころの騒ぎではない。


──あぁ。限界だ。

申し訳ないが、一旦ここで吐き出させて頂く。


宗!!純!!可゛愛゛い゛い゛い゛!!!


スッキリした。


宗純にとって、アラタは絶対なのだ。

出会って、別れて、再会して、バンドマンとして売れっ子になっても、ずっとずっとアラタが大好き。どんな場面でもアラタが1番。宗純めっかわ。

王様ゲームで言うならアラタが王様…のように見えなくもないが、本当の王様はおそらく宗純だ。

猫を飼ったことがある方なら分かると思う。「飼っている」とは言え主導権は猫様。飼い主は下僕に過ぎない。「ちゅ~る」> 飼い主。

アラタに「もう恋人ごっこは止めよう」と突き放されて、田舎道で泣きじゃくった宗純。

さらに一時的とはいえ、ギタリストとしては致命的な難聴に見舞われる宗純。(サラッとネタバレごめんやで)

だんだん「もうやめてくれ!ワイの可愛い宗純を痛めすぎや!」と頭を掻きむしりたくなってくる。

だがここで!満を持して!ニルバーナのカート・コバーンぱいせんのお言葉を引用したい。(アラタが最初に買ったギターはコバーンモデルのジャガーだ)

悲劇に感謝。俺のアートには必要なものだから。
Thank you for the tragedy. I need it for my art.


で     す     よ     ね    ー    

何の苦労もなく、すいすい生きてきた奴にジャガーの太い音が出せっかよ!

不安や絶望がいつもポッケにぎゅうぎゅう詰まってないと、心に響く音楽なんて作れねーんだよ!

─悪いな宗純。もうちっと痛めつけられてくれ。

バンド内でBがLする話ではないが、バンドのサクセスストーリーが割と極太な柱となっている為、そちらを追っていてもメンヘラ バンギャ気分が楽しめる。

そして静かに読むのが難しいクライマックス。

「宗純!ワイにも聞こえたで!魂のレフが!!」

そんなダサいセリフを恥ずかしげもなく叫びたくなる。

復活ライブのワクワク感と疾走感は、まるで「少年ジャンプ」だ。

ワイの読んどったエロBLどこ行ってん。


でも実際、宗純とアラタの共演が実現した時、2人の濡場を見た時より興奮した。

2人で気持ち良くなってるのだからSEXとなんら変わりはないのだけれど、ギター片手にのっそりとステージに上がってくるアラタのカッコ良さと言ったら!!

跳満どころか3倍満だった。宗純じゃなくても逝ってしまう危険なコマ。これは要警告だ。

この作品を好きな理由に「常に心の奥底にある悩みやモヤモヤに対して、きっちりアンサーを出してみせた」という点がある。

天才に嫉妬し、自分の為の言い訳を作り、ミュージシャンを諦めたアラタ。

あの夜、田舎道に置きざりにしたのは宗純だけじゃないのだ。

音楽やギターが好きな気持ちは変わらない。宗純の事も大好き。ならば、と違う角度から音楽と宗純に寄りそう形にシフトチェンジする。

宗純に「逃げんのかよ」と責められたりもしたが、そうじゃない。

「選んだんだ。」

ドヤ顔3倍満アラタ。まじカッケー。


自分の気持ちに どうにか折り合いをつけて「コンプレックスを抱えたまま生きて行こう」と腹をくくり、色んなものを引きずりながら新しい場所を目指す。


これをROCKと言わずしてなんと言うのや。


プール付きの豪邸でチャンネーとクスリキメてればROCKなのか?

笑わせるな。内田裕也より樹木希林のほうが、随分と「しぇけなべいべー」な生き様だったじゃないか。(敬称略)


いつまでも冷めない熱が体のド真ん中に居座る。

そのせいで苦しんだり焦ったり悩んだりするけれど、人を奮い立たせるのもまた熱だ。

熱さえあれば何度でも歩きだせる。

キツくて1度ステージを降りてしまったとしても、またのっそりよじ登ってやれば良い。


熱にうなされる生き方。

なんとも羨ましい話じゃないの。



☆おまけ☆

BがLする5秒前・推しセリフ


2回目にして早速「セリフ」じゃない。

アラタの仕事が忙しく「3日も話せてない」とグズるリハ中の宗純の元に、やっと一段落したアラタが仕事帰りに会いに行く場面。

アラタの姿を見つけた宗純が、嬉しさのあまり演奏をやめてステージの上からアラタに飛びかかる。

ギターをほっぽり投げて。

「俺、ギターが好きだ!」と、ことある事に言っていた宗純が、ジャガーをほっぽり投げてアラタに抱きつく。

「ギターとアラタどっちが大事やねん!宗純!」などと聞いてはいけない。

「仕事と私どっちが大事なの」ぐらいお門違い。

「どおして宗純はそんなに可愛いの?」ぐらい愚問。

答えは問処にあり、なのだ。



また長くなったよ!次回こそ3行で!!!

もし読んでくれた人いたらありがとう。

宗純可愛い。ギュー。

画像1

https://yomiho.cmoa.jp/full/title/0000125391/



















この記事が参加している募集

読書感想文

マンガ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?