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#065 学び方を学ぶ授業(難波駿著)

「学び方を学ぶ力」は、教科の資質能力と同じくらい大切だと思っている。また、主体的・対話的で深い学びを実現するために、個別最適な学び、協働的な学びを取り入れた授業について勉強しないといけないと思っていた。そんな時に本書「学び方を学ぶ授業(難波駿著)」に出会い、即買い、1日で読んだ。大変読みやすく、私の思っていることを言語化してくれている本だった。新年度から取り入れていきたいことが多くあったため、noteにまとめることにした。興味を持った方は、ぜひ本書を読んでもらいたい。

学校で鍛える「7つの力」

「学校で鍛える」が、本書で一貫して伝えていることだと感じた。学ぶ力が身に付くと、自らで学習していく姿が想像できる。そうなると、実践している姿は、宿題(家庭学習)が思い浮かぶ。「学ぶ力を付ける=家庭学習で」というような構図が自然と生まれてしまう。しかし、本書では、家庭学習に委ねる前に学校で「学び方を学ぶ時間」を確保し、授業で学ぶ力に必要なマインドや力を付けていく必要性を述べてあった。
 そして、授業を通して学び方の力を身に付けるために「7つの力」が大切であると示していた。以下に、その「7つの力」について私が大切だと思ったことを中心にまとめていく。

7つの力 ①学習者マインドの再構築

 勉強に対するイメージは、「ネガティブ」なものになっている。私は、学ぶことが大好きである。30歳を過ぎて徐々に自分が学んでいることを誇りに思えるようにもなってきた。しかし、以前は「勉強=ガリ勉、真面目、面倒臭い」というような考えがあり、陰でコソコソ勉強をしていた。今の子供たちも同じような気がする。現に、「勉強するよ。」と喜ぶ子は少ない。また、学ぶことの意義や楽しさを知っていても周囲の勉強に対するネガティブな雰囲気に合わせて不本意ながら「面倒だ」と言う子もいる。
 では、教師や親など大人側から子供に勉強を進めるときはどうだろうか。「勉強が終わったら、ゲームしていいよ。」や「勉強してから遊びなさい。」と言っているように思う。このような言葉掛けは、マイナス(勉強)を乗り越えると楽しいこと(ゲームや遊び)が達成できるという働きかけになっている。「勉強=罰(面倒臭い)」というマインドを子供に植え付けてしまっている。そうならないために、教師(保護者)が「勉強=楽しい(ポジティブ)」という声掛けや姿を見せるようにしていきたい。
 また、学習者の考え方を捉え直すためにも「なんのために、学ぶのか」という語りを大切にし、「学ぶことの『目的』」を子供がしっかりと理解できるようにしておく必要がある。

7つの力 ②計画を立てる力

 学ぶことの『目的』を理解しても自ら学ぶことはできない。理由は、目的に向かって進める計画が立てる力がないからである。計画力を付けさせるために、子供が自分で計画を立てる経験を積まなければならない。そのため、計画を立てる時間を授業中に設定する必要がある。教師が立てた単元計画ではなく、単元のゴール(目的)を示した後、子供にゴール(目的)に向かって進むための計画を立てさせる。
 ポイントは
・スモールステップ(長期目標を基に、より短期な目標に細分化)
・具体的
・ちょっと頑張れば達成できる
である。目的を達成するための道筋を細分化し、具体的な目標を設定しながら自らで計画を立てるような時間を確保していく。

7つの力 ③目標を設定し、運用する力

 願望とは「〇〇したい。と思っているが本気で『実現する気がない』もの」、目標とは「『実現する』もの」と本書で紹介されていた。年度初めの初々しい気持ちの時に設定する目標は、願望になり、本気で実現する気がないため、時の経過とともに忘れ去られる。これでは自己の成長は望めない。目標を実現させることで本来の意味での目標となる。そのために計画する力が必要であり、計画に沿って運用する力が大切である。
 運用する力を付けるのも授業中である。教師は、計画表に沿って励ましたり目標を基に助言したりして運用する力を付けさせる必要がある。
ポイントは、
・目標の見える化
・教師による価値付け
である。目標を細分化しても忘れたり怠けたりするのが人である。そのため、常に目標を見えるところに置き、教師からの声掛けで励ますことが大切である。初めは、辛抱強く見届ける必要があるが、習慣化されると自走する子供達の姿が見られるようになる。

7つの力 ④集中する力

 学習のやる気レベルは
①やりたくない
②仕方なくやる
③やらなきゃ
④やるべきだ
⑤やろう。できる。
⑥やりたい
の6つのに分けられ、自ら学ぶ姿はレベル⑤⑥であると書かれていた。これを子供達に伝え、自らでやる気を⑤⑥に設定できるような目標や計画を再構築し続ける必要がある。
 学習者のモチベーションを維持し続けるのは簡単なことではない。しかし、本質的「勉強が楽しい」と思えるようになると前向きな状態で取り組むはずである。
「勉強が楽しい」となるのは、「〇〇ができた」「△△を極めたい」と感じる瞬間である。達成感と好奇心である。教師として心掛けることは、達成感が生まれるように課題のハードルと下げることと、好奇心を生ませるために選択肢の幅を広げたり課題作成の自由度を高めたりすることである。

 また、人間が行動する6つの理由(モチベーション大百科)
①安心感ー今までと同様にいきたい
②変化(不安定感)ー現状を変えたい
③重要感ー特別な存在でいたい
④つながりー周囲の人と一体感を得たい
⑤成長感ー自分のレベルを上げたい
⑥貢献感ー誰かの役に立ちたい
を刺激することも有効である。

7つの力 ⑤継続する力

 私も経験があるがやる気いっぱいで集中力が保たれるときは、すこぶる調子が良く勉強や作業が進む。しかし、それが継続できかと言えば、、、である。名著「GRIT〜やり抜く力〜」(アンジャラ・ダックワークス著)でも述べられていたが、目標を達成するためには、才能ではなくやり抜く(継続する)力が大切である。
 学校は、継続する力を付ける最高の場である。何より学校に「継続」して子供が来ているからである。学校で、日々継続して学習する「習慣」を付けさせると継続する力が付く。大切なのは「習慣」にすることである。毎日、歯を磨くように学習する習慣を学校で築き上げる。そして「あなたには、継続する力がある」と価値付けすると子供も自分の学習力に気付くことができる。

7つの力 ⑥振り返り・メタ認知の力

 重要である一方で、削られやすいのが振り返りの時間である。振り返りの時間は、自分の力に自分で気付き、成長させる最も重要な時間である。しかし、ただ「今日の振り返りを書きましょう。」と投げかけても「楽しかった。」「できるようになってよかった。」となってしまう。自己の成長に気付き、未来につながる振り返りにするためには、振り返る『視点』が重要になる。
「なぜ、楽しいと感じたのか。」「なぜ、できるようになったのか。」これらは、『教科の本質を理解したからか』それとも『自己の非認知能力が高まったからなのか』を自分で気付くようになると次の学びにも繋がり、学ぶ意欲も高まっていく。教師は振り返りを基に対話し、子供の成長を言語化していく必要がある。
 また、振り返りの最後には行動転用につながるキーワードを入れるようにしたい。自己を振り返った上で、次に何をしたいのかを示しておくと振り返る必要性も生まれる。

7つの力 ⑦協働する力

「協働的な学び」という言葉は教師なら誰でも聞いたことがあるだろう。難しいことは抜きにして、協働とは人間の本質的な部分であって、「人は誰しも誰かと一緒に活動すること」が楽しく、誰かと一緒なら頑張れる生き物である。また、哲学者の和辻哲郎氏が「人は、人と人の関わりの中で生きている間柄的存在の生き物」と言っている。人との関わりを学ぶのも学校であり授業である。しかし、この段階の子どもたちは、関係構築する力や協働する力を育成中でもある。そのため、教師が適切な関わりを持っていく。
 協働することによるメリットが生まれるような課題を提供したり、適切なチームメンバーを教師が提示したりするなど、協働する必要感やメリットを感じられるような介入が大切である。自由に「友達と一緒になりさない」では、気心の知れた仲良しグループを作り、おしゃべりする時間になってしまいかねない。もちろん、自由度を高めても互いの特性に合ったチームメンバーで学ぶことができるような学ぶ力を付けるのが理想である。しかし、いきなりこういった力は身に付かない。そのため、初めは教師がしっかりと介入し、協働する力を付けさせることが大切である。

まとめ

「学び方を学ぶ授業」そんなな授業ができると思うとワクワクしてきた。一方で、ここで挙げたことを全てしっかりと行えるかが不安にもなってきた。この記事をまとめているのは4月2日、、。昨日新年度が始まり、覚悟(準備)してきたつもりだったが疲れたし、自分の計画通り仕事を進めることができなかった。
 ここでまとめたように進めたいと思っていても進めることはできない。それこそ、私自身が、計画を立て運用し、根気強く継続し、振り返り、職員と協働しながら「学び方を学ぶ授業」を作っていけるようにしたい。
 改めて、本書「学び方を学ぶ授業(難波駿著)」は、これからの学校教育で育むべき力が網羅的に示されいる。ぜひ、早い段階で読んでもらいたい。

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