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#058 自由進度学習〜やり方と工夫〜

 今回は、算数「四角形と三角形の面積」(5年)を自由進度学習で行う上で、どのように行ったのかや工夫したことをまとめてみる。「とりあえず、やってみよう」と思ったものの子供たちに授業を託すことや学力の補償を考えた際に、色々と工夫していた。そのこと言語化し、今後の実践にも生かせるようにしたい。

やり方と工夫① 単元計画を基に、「ミッション」の設定

 はじめに、単元計画を立て、それを基にミッションを作成した。

算数「四角形や三角形の面積」(5年) 単元計画とミッション表

 このように子供たちの言葉で理解できるようにすると同時に、導入時に単元の流れを全て説明した。平行四辺形の面積→三角形の面積→台形の面積→ひし形の面積→四角形の面積の順に求めることができるようになるのが狙いであることを共有した。
 ミッションは「めあて」のことであるが、子供たちにとって「ミッション」という言葉を使った方が、意欲が高まると考え「ミッション」という言葉にした。結果、子供達は「次のミッションは?」や「ミッション⑤までクリアした!」など狙い通りの反応を示しながら学習を進めていた。また、ミッション中の赤字がキーワードになることを伝え、キーワードを使って説明ができていることを評価することを伝え、取り組ませた。キーワードを基に考える姿が見られ算数的な見方・考え方を働かせることもできていた。
 単元計画を右側に提示することで、テストを意識して学習できるようにした。また、一時間に一つのミッションの目安としており、単元計画もいつでも見られるため、とにかくミッションをクリアするのではなく、練習問題で確認しながら自分のペースに応じて進めることができていた。

やり方と工夫 ②ミニレッスン

 授業の開始5分から10分はミニレッスンを行った。ミニレッスンの内容は、その時間に目指したいミッションとその次に目指したいミッションの課題の確認である。例えば、9時間目は台形(ミッション⑦)とひし形(ミッション⑧)の定義や性質を振り返り、図形を切ったり移動させたりして平行四辺形や三角形に見立てることができないか問うだけである。これは、「自由進度学習のはじめかた(蓑手章吾著)」を参考に行った。

やり方と工夫 ③オクリンクでノート共有

 自由進度学習が可能となった最大の理由はベネッセが提供するオクリンク(ミライシード)の存在である。本市では、このアプリ(ミライシード)を導入している。オクリンクで、子供たちにミッション表と各ミッションカードを送る。子供たちは、ミッションをノートで取り組み、ノートの写真を撮ってオクリンク上の提出ボックスに送る。そして、提出ボックスを誰でも見られるようにすれば、一瞬にして友達の考えに触れることができる。生のやりとりで教え合うことも可能であるが、提出ボックス上で、誰がどのような考えをもっているか確認できるため、話を聞きたい友達のところへ最速で行ける。また、教師も提出ボックスを見ているので、この考えなら「〇〇さんが分かりやすく説明していたので、〇〇さんに聞いてみな。」と繋ぐことも可能になる。
 オクリンクでノートを共有することは、教師の評価する時間も倍速になった。授業の序盤、中盤、終盤にオクリンクの提出ボックス上で評価すれば、授業内にほぼ評価を終える。そして、この評価こそ形成的評価になり、間違った理解をしていることに支援をしたり同じ考えの子を繋いだりするなど個別最適で協働的な学びをリアルタイムで促すことにつながった。

やり方と工夫 ④確認作業(一斉)

単元計画の4、8、12時間目はそれまでのミッションの確認作業の時間とした。子供たちの考えがオクリンク上にあるため、その考えを共有しながら、ミッションの解き方を子供たちに問い、一斉授業を行った。
 友達の考えに自ら触れようとしない子がいたり、面積の求め方は多様にあったりするため、この時間の必要性を感じた。しかし、確認作業の時間は、子供達が自ら行う習慣が付けば、不要になると思う。なぜならば、この時間に私が行ったことは学びのコーディネイトであって、自分の力で情報を掴みにいくことができる子が多数になれば、できない子に対して個別の支援を行うことの方が効率が良いと感じたからである。

やり方と工夫 ⑤個別の支援(休んだ子への支援)

 オクリンクで共有することで、個人差がすぐに掴める。そのため、①理解が進んでいる子は自走させ、②少しのアドバイスで進める子は子供同士でフォローさせ、③全く理解が進まない子(あまりいないが)に教師が付けば良い。自由進度学習では、はじめのミニレッスン以降は、教師の手は空くため、児童のレベルを見極め①〜③に応じたフォローを行えば良い。教師が授業中に、何回も教室を周り全員に少なくとも1回は一対一のコミュニケーションも取れるので、生徒指導的な意味でも効果的である。
 欠席した児童へのフォローも教師の手が空いているので行いやすい。今単元の中で、インフルエンザも流行したため、1週間欠席する児童が5人もいた。学力もバラバラだ。そういった中でも、登校した日に、その子に応じた支援ができた。
 ここで大切なことは、「みんなと同じことをさせない」である。1週間分も同じようにノートに考えを書かせ、オクリンクで送らせることは難しい。教科書を使った解説くらいで良い。しかし、自由進度学習が定着していけば、欠席中も自らで学習を進めることが可能になる。今回も、5人中3人は個別にフォローする必要はなかった。

やり方と工夫 ⑥学びのレベル3を共有

 私は、学びのレベルについて以下のように伝えている。
レベル1→できる。
レベル2→説明できる。
レベル3→教えることができる。
 1つの課題に対して「できる」(レベル1)で終わるのではなく、説明したり(レベル2)理解の低い友達の困り感を察知した上で教えたり(レベル3)することで理解が深まる。そのため、個人で解くことができても友達と関わるように声をかけ、高位の子はさらに力をつけ、低位の子は教師以外の人から助けてもらうことでできるようになる。このように、自分のレベルに応じて、子供自ら学びのレベルも変えることができるようになっている。

おまけ〜自由進度学習の狙いを共有〜

 今回、初めて自由進度学習を導入したため「自由進度学習の狙い」を子供たちに共有した。その狙いは、『個別最適な学び』と『協働的な学び』を通して、授業の45分を最大限有効活用し、自己のレベルを向上させることである。そのために、自分のレベルに応じて学ぶことは当然のこと、学級にいる少し先をいく友達をモデルに自己の成長スピードを上げたり、友達と切磋琢磨し学んだりすることが学校で学ぶ最大の意義であることも伝えた。
 教師(私)の独りよがりの実践ではなく、『個別最適な学び』と『協働的な学び』という言葉を使いつつも子供たちにとって分かるように目的を伝えることを意識した。今後も子供たちの様子を見ながら、目的を見失わないように伝えていきたい。

まとめ

 自由進度学習をどのように工夫し、進めているのかを整理してみた。このように言語化してみると多くのことを行なっていることに気づいた。改めて振り返ることで気付いたことも多く、意識しながら行なっていたかというと自信がない。
 今回、自由進度学習を行なってみて確実に成果があったと思う。そのため、今後はこの工夫をさらにブラッシュアップさせ、子供の力を最大限引き上げるより効果的な実践を行なっていきたい。

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