少年声バンド特集を振り返る

12年ほど前のことだった。ある日、少年声バンド特集というウェブコラムが音楽サイトに掲載されているのを見つけた。確か紹介されていた曲は全て知っているバンドの物だった筈だ。別段しっかりと読みはしなかったので記憶が朧気である。検索してもあの音楽サイトはもう存在しないようだ

2000年代後半から少年のような声質のロックバンドはかなり見かけるようになったと思う。当時何が起きていたかを思い出してみたい

正直、当時J-POPは下火だった。人気の男性シンガーソングライターは皆無だったと思う。七尾旅人が少し話題になったくらいだろう。一方、女性ミュージシャンは好評を博していた。西野カナや加藤ミリヤや青山テルマなどだ。私は当時高校生だったので確信を持って言える。
そしてヒットチャートはAKBとジャニーズとエグザイル、そしてGreeeenに占拠されていた。私はけっこう彼らの歌が好きだったが、やはり一辺倒なチャートの印象はあまり良くない。
多くのクラスメイト達は生れたばかりのボーカロイド文化に夢中だった。ボカロは無料だったという事も影響していると思う。ボーカロイドと言えば現在は初音ミクだが、当時は男性キャラも居たらしい。残念ながら私はボカロ文化に疎かったので見覚えが無い。
アニメソングは今も昔も女性ボーカルが多く、深夜アニメ発のヒット曲がちらほら出て来た時期だ。カラオケや文化祭で深夜アニソンを歌う生徒をけっこう見かけたものだ。そして涼宮ハルヒとけいおん!の影響でバンドを始めた人が多かった。学園祭や地元のライブハウスでかなり見かけたものだ

振り返ると「男性の歌声が好き」という女性達にとって、当時は音楽の選択が大変だったかも知れない。ジャニーズもエグザイルも苦手という人は案外居るものだ。
加えて2000年代の洋楽バンドは苛烈さと難解さに2極化したメロディが多く、洋楽離れが進んでいた時期だ。
そしてV系バンドのファッションや化粧文化に着いて行けない場合、もう殆ど選択肢が無い。更にV界隈もメタルコア至上主義化しており、とっつきにくかった記憶がある。
すると必然的に非V系のバンド群、いわゆるロキノン系に手を出すことになった層が居た、と考える事が出来るだろう

少年声バンド達は隙間産業的に女性の要望を満たす存在だったかも知れない。当時はTSUTAYAの影響力が非常に強かった事も要因の1つになるだろう。
彼女たちが男性声優や歌い手文化に接近しなかったのは、音楽の聴き方や探し方の影響も大きいと思われる。
おそらく歌い手の楽曲はiPodやウォークマンに入れ辛かっただろう(試したことは無いから判然としないが)そして当然、ガラケーでも聴きづらかった筈だ。
また、当時の男性声優たちによる歌は今ほど目に留まる存在ではなかったと思う。供給も少なかったし、出会うきっかけに乏しかったと考えていいだろう。
当時はロキノン系全盛期だったと言っても過言ではない


なお、少年声好きを女性に限定して書いてしまったが、かなり少数だとは思うが男性も混じっているだろう。ちなみに私はけっこう好きな方だ。とはいえ聴く曲はメロディで選ぶ。声質は殆ど重視しない


当時の世相をおさらいしたところで、2012年頃と思しきコラムで紹介されていた少年声バンドたちを思い返してみる。
そして一応書いておくが、少年声とは10代半ばの男子のような、少し高めのキーとあどけなさや透明感の残る歌声、といった定義であると私は考えている(まあ細かい事を気にする必要はないだろうが)


では始めよう


ユニゾン・スクエア・ガーデン(2006年インディーズデビュー)

現在では言わずと知れた彼らにもインディーズ時代があった。当時高校1年生だった私は彼らをカラオケで検索したことが有る。まだジョイサウンドにユニゾンの歌は5曲しか無かった。
彼らが少年声ブームのきっかけと言って良いかも知れない

ダーティー・オールド・メン(2006年インディーズデビュー)

初期ユニゾンの良き友であり、ライバルでもあった彼らも少年声として紹介されていた。後にマジック・オブ・ライフへと改名する

ピープル・イン・ザ・ボックス(2007年インディーズデビュー)

オルタナ第3世代を代表する彼らも少年声枠らしい。言われてみれば初期はとてもあどけなさの有る歌声だった

アンディモリ(2008年インディーズデビュー)

正直あまり共感は出来ないのだが、アンディモリも少年声枠らしい

プレンティ(2009年インディーズデビュー)

プレンティは追っていなかったのでよく知らないが、この高い歌声はとてもインパクトがあった。同時期にデビューしたクリープとよく並べて紹介されていた記憶がある

世界の終わり(2010年インディーズデビュー)

普段そこまで声質を意識しない私も、セカオワには少年らしさを見出したと思う。2010年、あまりの人気ぶりにインディーズ界隈は彼らへの誹謗中傷で埋め尽くされていた。心底ネットは下らない場所だと感じたものだ

アプリキャット・スペクトラ(2011年メジャーデビュー)

彼らが大本命かも知れない。少年声という括りが出来上がったのは多分彼らのデビューが最大の引き金だろう。今聴いてもかなり印象の強い歌声をしていると思う

ザ・フリッカーズ(2011インディーズデビュー)

言われてみれば結構少年ぽい印象を受けるかな、と感じる

インディゴ・ラ・エンド(2012年全国流通盤発売)

川谷絵音も少年声枠らしい。
デモCDを乱発しまくる彼らにはプレミアがついてしまい、全く手の届かない存在になってしまった。聴いたことの無い歌がかなりある


私が覚えている限りだと、当該のコラムで紹介されていたバンドは以上になる。もっと記載されていたと思うのだが思い出せない。読み直したかったのだがサイト名も覚えていないため望み薄だ




せっかくなので2014年にインディーズデビューした夜明ケマエも紹介しておこう

彼らには少年ぽい、と思った記憶がある


あの頃のバンドマンに少年的な歌声を所望していた層は、現在で言えばあんさんぶるスターズなどに熱狂している層に近いのではないだろうか。実際、割と私がそうである(笑)

現在では需要が薄くなってしまったのか、少年声バンドに出会う事は殆ど無い。バンド好きとしては少し寂しいものだ

2024年05月07日(執筆時間1時間)