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#シロクマ文芸部さん初投稿です。〈ぼくたちは透かされた桃の花びらの輪に乗って〉

シロクマ文芸部さん初投稿です。よろしくお願いします。
お題「布団から」はじまる文章。

 布団から頬を出してすやすや眠る。
頬は薄い透明の桃色を纏い、一枝に一つだけ選ばれ燦々と太陽の光を浴び育った桃のように、ぱんっとふくらんでふんわり丸く、毎日休まずに浴びた光を頬の中にたっぷり溜めているので寝返りを打つ度にぷにっと形を変えキラッキラッと光るのです。
次第に布団の外にはみだした腕や腿、手のひらや足の先は自由奔放に動き回りその度に頬は眩しく光をちらつかせながら、もう暗くしんとした寝室の隙間を川の流れの途中のようにキラキラッと光らせています。
まぶたはまだしっかり閉じられたままで時折まつ毛がキュキュッと動くその先からは透かし出された桃の花びらが一枚また一枚と舞い始め、光の粉になりながら部屋中を埋め尽くしていき、少し開けていたカーテンの隙間から差し込む閃光と共になり輪になりだんだんと反射し合ってくるくる回り出しました。
深い寝息は、薫みどりと雫のように静かでひんやりとしていて、頬は一層桃色が増し、輪は回り回り、光の粉はきらきらと天の川のように永遠と光巡っているのです。

「よるの空へ行ってみようか。
月の側まで。
月の光の間に散った桃の花びらが
月明かりに誘われてその麓まで連れて行ってくれるんだって。」

けん坊は初めてうっすらと眩しい光を感じながら
寝ぼけ眼をこすり片目をあけて
「どこへ行くの?」
「うん。あの月のふもとだよ。美しい場所だと本で見たんだ」
「あ、うん。ぼく今せっかくいい夢をみていたのに」
「水玉のように瑞々しい草花はそこら中一面を一年中埋め尽くしていて枯れることがないんだって。次々に新しい草が生えてきて、もう花や草じゃないみたいに光っているから思わず目をつぶってしまうほど眩しく輝いているんだって。
くじらの形をした滑り台とか、たこ足のブランコ、本物のジャングルみたいなジャングルジムだってあるんだって」
「くじらの滑り台?」
けん坊はまだ少し眠たそうにしながらも、大好きな滑り台の話をされると
少しづつ目が覚めていくようで、さっきより光の輪がぐるぐるぐるぐる回っているのが気になりながら
「えー!行きたい!行きたいね!ママに聞いてみるね!」
「お母さんはほらもう眠っているよ。大人はきっとダメって言うに決まっているから。さ、行こうよ。」
「でも、いま夜だよね。」
「うん。でも大丈夫だよ。二人なら大丈夫だよ!それに外は夜だけと月の光が今日は一段と明るくて桃の花びらが沢山の粉にもなって光りながら舞っているからこわくないよ!ぼく、君のような子をずっと探していたんだから。
そうだ、そこにはね蓮華畑もあってね、そこの蓮華の蜜は琥珀色が濃ゆくて太陽だってそのまま見ることが出来るんだ。
蓮華の花びらに乗せた蜜を飲むと、それはそれは一番足が早くなるんだって。
それにね見たこともないような大きな大きな木があって、そこにはたくさんのツリーハウスがあるから君が好きなハウスを選んでいいんだよ。
その窓から外を覗くと月よりも遠くにある銀河まで見えるってクラスの子が騒いでいたんだよ。だから僕どうしても行ってみたいんだ。」
薄い紫色のベレエ坊にベージュの丸襟ブラウスの袖を揺らす少年は、すっかりその場所にいるように、光をあてたダイヤモンドぐらいに何色にも目を輝かせながら身振り手振り話すので、けん坊はもうすっかり目が覚めていてツリーハウスの話をしたくてたまらない気持ちでいました。
そうなったら、けん坊もクローゼットからフードパーカーと靴下を取り出してパジャマの上から羽織って出かける準備をしながらも
「ぼく、足は早いよ、でももっと早くなりたいね!
それに月より遠くの銀河も見てみたいしツリーハウスはママも行ってみたいって前に言ってたんだよね。木の上にある家でしょ?
あっ、靴は玄関に行かないと、とってくるね」
「ちょっと待って」と
ベレエ坊の少年がそっとしゃがんで、ぷっくりとしたけん坊の足に微笑み白い手をふわっと翳すとゆで卵が羽毛に包まれたような丸い光が少年の手とけん坊の足を包んだかと思うと、もうそこには毛で覆うわれた冬芽のようなしっかりとしながらも柔らかい靴を纏っていて
「あったかい。」
けん坊はすぐに気に入ったみたいで、何度かジャンプしてみせた。
少年はえらく嬉しいみたいで満面の笑顔になり
「さあいよいよ、あの月の麓までひとっ飛びさ。」と言い
けん坊の手をしっかり繋いだ。
二人は東向きの窓のカーテンを開けレースのカーテンをすり抜けそのまま
宙を待った、まっすぐ舞った。少年から先にだんだん高くなった、繋いだ手がけん坊の体も上へ連れて、迷いなく飛んだのだ。
そう、すでに空を飛んでしまったのだ。
けん坊は大興奮して
「ぼく夢が一つ叶った!空を飛んでみたいっていう夢が叶ったよ!すごい!
これは君のおかげだよね?君すごいね!
ママ、パパ、お兄ちゃん、行ってきます!」
「さあ、行こう。
まずは、僕と君が大好きなくじらの滑り台へ。」

#シロクマ文芸部初投稿

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