詩 陽はまた沈む

だいじょうぶ
陽はまた昇るよと
夕べ友が
私の肩をたたいた
いつものメロディーで
目を覚ますと
友の言ったとおり
陽は昇った
カーテンのすき間から
さしこむ光の矢印が
洗面所を指している
顔を洗い化粧をし
フレークを食べて服を着る
陽は昇った
陽はまた昇った
陽はまた昇ってしまった
だから私は駅に来た
夕べの友に代わって
私は言う
陽はまた沈む
陽はまた沈むよと
乗りこんだ快速電車
満員なのにしんとしている
朝日だけが快活に
窓から窓へ通りぬける
駅が一つ後ろへ飛んだ
もう一つ後ろへ飛んだ
だから陽はまた沈むよと
私はささやきかける
猛スピードで
夜へ向かって逃げている
目の前の動かないスーツの肩にも

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