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和歌が「わか」るための百人一首攻略3(大学受験生応援コラム7月)

「わか」らなくて当然のこともある

’*** 0 はじめに ***

◆今回はアジサイの花のお写真を拝借しました。記事内容とは全然関係ないのですが、ワタクシ、アジサイが好きなもので。

当コラムに目を留めてくださり、ありがとうございます。

本コラムは、高校生や大学受験生の役に立てればとの思いから書かれています。主に大学入学共通テストの国語を素材として、問題の解き方や勉強法のヒントになりそうなことを書いていきます。

先月から、「古文」の「和歌」を取り上げています。久しぶりの投稿になってしまいました。

百人一首を題材に、和歌を口語訳する練習をしてみよう、というのが主旨ですが、今回は少し趣が違います。


’*** 1 百人一首No.35再び ***

今回取り上げる和歌は、前回と同じものです。

人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける 紀貫之

まだ書くことあるんかい、という感じですよね。実は自分でもそう思っています。しかし、思いついちゃった…というよりも、思い出してしまった…ものですから仕方がない。


’*** 2 「ふるさと」とは? 「花」とは? ***

和歌というものは、必ずある特定の場面状況を踏まえて詠まれます。旅の途中に見た何かに触発されたとか、嵐の夜にそこはかとない寂しさを感じたとか、必ずきっかけとなる何かがあります。

従って、和歌に使われる語句も当然その場面状況の影響を受けることになります。今回の和歌もそうです。

第三句「ふるさと」には、辞書によれば「古くからのなじみの土地」(小学館『全文全訳古語辞典』)という意味があります。なじみの土地なんて人それぞれ。それがどこかなんて、説明がなければ分かるはずがありません。

同様のことは、第四句「花」にも言えます。平安時代においては、特に断りなく「花」といえば「桜」を指す、と私たちは古文の時間に学習します。今回の和歌は『古今和歌集』という平安時代に作られた和歌集に掲載されていますし、紀貫之といえば『土佐日記』などを書いた平安時代の人であると、学校では必ず習います。

従って、この和歌も、何も知らずに読めば「花=桜」と誤解してしまいます。

しかし、この歌の「花」は、梅なのです。それは、作者・貫之が目の前にある梅の花を見ながら作った歌だからです。

この「ふるさと」「花」に関する事情は、和歌の「詞書」に書かれています。古文なら地の文、和歌なら詞書。これを踏まえないと正しく意味を取ることはできません。


’*** 4 「わか」らなくて当然のこともある ***

今回私が問題にしたいのは、

「百人一首が和歌学習の基本であることは、教師たちの共通認識ではあるが、では詞書も含めてきちんと教授されているのだろうか?」

という一点に尽きます。

中高一貫の私立では、中学のうちに百人一首をきちんと教えて定期考査に出題するところがあります。この場合、大体中2くらいで古典文法を教えます。だから例えば中3以降、あるいは高校進学以降に、詞書も含めて教授することができます。少なくともカリキュラム上は矛盾なく「百人一首を教えた」と言えることになります。

一方、公立の中学・高校の場合、まず中学校では古典文法を教えません。そのため、古典文法は高校入学後、高1・高2のうちに教えることになります。

その途中で百人一首がカリキュラムの中にぶっこまれます。少しでも授業で触れられるならまだいい方です。前にも書きましたが、私の出身高校では、冬休みにうちに「覚えなさい」とプリントを渡されて終わりでした。

これで、「百人一首は和歌学習の基本。受験生なら知っていて当然。以上!」と流してしまっていいものでしょうかね?

実際、今回の和歌が問題に取り上げられている場合、私が「この花は何?」と尋ねると、古文をある程度勉強している高校生はほぼ100%「桜」と答えます。さもなくば、「分かりません」…あるいは無言…です。ようよう考えれば、「桜」と言えるだけマシじゃないか? と思えてきます。

だから私はある時期から、百人一首記載の和歌が出題されたときは、相手がそれを全然知らないものとして説明する方針に変えました。だって、習っていない可能性が高いから。プリントや冊子を渡して「読んでおきなさい」では、百人一首の重要性は伝わりません。


’*** 5 最後に(少しだけ告知) ***

久しぶりの更新でした。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

以前にも書きましたが、先月からずっと百人一首の教材を作っていました。そのせいもあって、更新が滞っています(出たよ、言い訳が)。

それがこの度、ようやく完成しまして、つい最近、某サイトで販売開始しました(今日のところは取り敢えず名前は伏せます)。経済情勢が厳しい昨今、私たちの業界も少子化圧力も加わり決して安穏ではいられません。自分で出来ることを取り敢えずやってみようと、敢えて和歌というニッチなところを攻めることにしました。

noteでも有料記事を販売する仕組みがありますが、そこにも出品してみようかしらと、今ちょっと考えています。

「別にそないに考え込まんと、取り敢えず売ってみたらええんちゃう?」と思われる方は「スキ」ボタンを押して知らせてください。コメントいただいてもいいのですが、その場合、私は現状、コメントを書き込める設定にしていないのでハートマークを押すことで返信の代わりとさせていただきます。

今回はここまで。次の更新は・・・いつだろう(汗)。いや、取り上げる和歌は決まっているんですけどね。


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