【アイマス1レスSS】音無小鳥の誇り
「……あら? プロデューサーさんと律子さん、年次有給休暇まだ1日も取ってないじゃない。これ、話して取ってもらわないと、あとで大変よね。
でも2人とも、休みたがらないからなぁ……」
私は、音無小鳥。765プロで事務員をしています。
「備品の注文は……と。コピー用紙があと1袋だけになったし、黒インクの消費はやすぎなのよね。
あとは……。ああやっぱり! タンポンがあと一袋しか残ってないわ。早めに買っておかないと」
「……んもう社長、キャバクラの代金は経費で下りないって何度言ったら!
……”接待費”とでも言えばまだ可愛げがあるのに。正直だから良いってものじゃないっつーの!」
「……はい、はい。……星井美希がドタキャン、ですか……!? 申し訳ありません!!
すぐに弊社のプロデューサーに確認いたします! たいへん申し訳ありませんでした!!」
給与計算に労務管理、備品管理の次は経費精算、さらにはクレーム対応まで。
地味な割に決して楽ではないし、辛いことも多い。そんな仕事です。
「あら、もうこんな時間」
今日も今日とて、気がついたときにはお空は真っ黒。
事務所にはもう、私以外だれも残っていません。
「でも、もうひと踏ん張りよ、小鳥!!」
辛い残業を乗り切りたいとき、私は、熱いコーヒーを淹れ、作業BGMを流します。
BGMに使うのは決まって、765プロオールスターライブのDVDです。
―― ♪ 輝いた ステージに 立てば 最高の気分を 味わえる
アイドルみんなの歌声を聴くと、なぜだか、どこからか、力が湧いてくるんです。
―― ♪ すべてが報われる瞬間 いつまでも続け
かつてのホワイトボード同様に空白が敷き詰められていた予定表を、軽快な打鍵音とともに、カラフルなフォントが塗り替えていきます。
―― ♪ 夢なら覚めないで いて!!
私の“今”が、この作業が、彼女たちの夢を、支えている。
……なんて、自惚れかもしれませんけれど。
それでも今は、この手を、止めたくはないんです。
私は、音無小鳥。765プロで事務員をしています。
地味な割に決して楽ではないし、辛いことも多い。そんな仕事です。
「―― ♪ 夢だけでは 終わらせたくない」
けれど私は、ここの事務員であることに、誇りをもっています。
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