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作家は確定申告を忘れるのか?

またしてもクリエイター界に衝撃が走る事件が。
某なろう小説のコミカライズ漫画家の脱税である。
軽くだが私が読んだ記事を要約すると、その漫画家は漫画家歴は10年以上。2019~2021年の確定申告をやっておらず、税務署から指摘され2022年に本税、延滞税、無申告加算税を含めた全てを納付した。
しかし今年2月、国税局は所得税法違反の疑いで福岡地方検察庁に告発。
こういった流れです。

さて、会社勤めの方は大体税金関係は会社がやってくれるので、確定申告の事とかはよくご存じないかと思います。私もウェブで書いた小説が書籍化するまではそうでした。まぁ普通自分の人生に関係のない事はわざわざ調べませんよね。
なので、この脱税事件がどれほど信憑性があるのか分からないと思います。
SNSを見ていると、このニュースが出た初日はファンによる擁護が目に付いた。
「忙しいと忘れる事もある」「漫画家よりも国会議員のやつを訴えろ」「見せしめだ」などという意見が多かった。
・「見せしめだ」→これに関しては、その可能性は十分にあると思う。よく聞くのは、他に取り上げたい相手がいるなどする時に著名人を取り上げ注意喚起をする、という手だ。これは大いにあり得るだろう。
・「国会議員の方が」→それとこれとは違う話だ。「他の人もやってるんだから」は言ってもしょうがない話。
そんな事よりも気になる意見があった。

「忙しいと忘れる事もある」
これだ。

これを言っているのは恐らく会社員か学生辺りで、確定申告とは関係の無い職種の人だと思う。思いたい。
結論から言うと、自営業(漫画家も小説家も)が確定申告を忘れる。なんて事は無い。
あり得ない。いくら忙しくても、いや忙しいからこそあり得ない。
まず、確定申告というのは前年度の売上や経費などをまとめて税務署に提出するシステムなのだが、これの締切は基本的に3月15日。
つまり、3カ月強の猶予があるのだ。
いくら何でも3カ月あって確定申告が出来ない、という事は無い。

スケジュールが詰まりまくった売れっ子作家などならあるだろう、という意見もあるかもしれない。
それも無い。
なぜなら、売れっ子作家は基本的に確定申告などは税理士に丸投げするからだ。
何なら確定申告だけではなく、年契約をする。
そうすると、年明け早々税理士から「確定申告に必要な書類送ってください」という連絡がじゃんじゃん来る。大口契約である売れっ子作家なら、なおさら来るだろう。
その連絡を無視し続け、SNSや現実で同業者が「確定申告まだだ~」などと話題に上がるのも目にも耳に入らず、3カ月強思い出さない事はあり得ない。

そうは言っても、思い出してやろうと思っても忘れを繰り返すとか、税理士を頼もうとは思っているけどどうやって探したらいいか分からなくてそのまま……なんて人もいるだろう。
ただそれは、国民の義務である『納税』を軽視した”怠慢”に過ぎないのではないかと思う。
そう言えば、SNSの意見で「売れっ子作家には出版社がちゃんとフォローしてあげなくてはいけないだろう」というのも目にした。
これは恐らく先日の原作改変事件で出版社への不信感が募った人の意見だと思うのだが、考えてもみてほしい。
作家と出版社は、専属契約を結んでいる訳ではないのだ。
出版社にそこまでする義務は無い。
だからこそ『フリーランス』なのだ。
とは言え、出版社も鬼ではないしノウハウは心得ているので、もしも税理士をどう探したらいいか分からないなどと思う人がいたら、聞いてみると良い。紹介してもらえる。
実際、知り合いの漫画家さんは探し方が分からず出版社にお願いしていた。
ちなみに私は『税理士ドットコム』というサイトで紹介してもらった。

私自身は、本が出る時と専業になる時それぞれに、一通りの税金・年金・保険関係については勉強した。
その他にも、色々不安で出版社とのやり取りとかそういうのも調べまくったのだけれど、クリエイター界の事って結構表に出てないのでなかなか苦労はした。
あとSNSで流れてくる情報は自分に当てはまらない事もあるから、ちゃんと調べた方がいいと思います。
少し前にウェブからの書籍化作家たちが「白色申告で十分でしょ」と発信していたが、私には当てはまらなかったから他にも当てはまらない人もいますんで、ちゃんと青色白色の違いから調べようね。

まぁそんな訳で、デビューしたての作家や売り上げがあまり無いと思っている作家以外で、確定申告を忘れてやらない、という可能性はほぼゼロだと私は思う。
実際不動産とかにも手を出しているそうなんで、この件については擁護は無理です。

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