見出し画像

Vol.1 トライアスロンを始めてみたいけど、ちょっとなぁ、と考えている人に読んでもらいたいストーリー。【泳ぎ方は二の次】

トライアスロンを始めてみたいけど、なんだか色々大変そうだなぁと二の足を踏んでいる人は少なくないはず。確かにトライアスロンを始めるにはそれなりの覚悟がいる。スイムは苦手とか、バイクを含む様々な道具を用意しなければならないし、さらに安い買い物ではないなぁとか。私もその一人だった。以前から、漠然とトライアスロンに対する憧れのようなものがあった。理由はかなり他愛のないもので単純に「トライアスリート」という響きの格好良さ。でもなぁ・・・とやらない理由を挙げればきりがない。

数年前、何を勘違いしたか道具もないまま思い切って始めてみた。いざ始めてみると確かに大変なこともあるが、その分、達成感も極めて大きい。「トライアスロンやってるの、凄いね」と周囲の見る目も変わってくる。些細な事も多いが一度始めると継続するモチベーションには事欠かない。詰まるところ、はじめの一歩をどうやって踏み出すかと言うことに行き着く。と言う事でトライアスロンしたいけど・・・と思っている人に気軽に初めの一歩を踏み出してもらうべく、私のかなり情けないトライアスロンの話をシリーズでお届けしたい。

マジで考え始めた切っ掛けは、フルマラソンの完走。初めてのフル挑戦で望んだロサンゼルス・マラソンで、そこそこのタイムで完走出来た。すると、なんだか何でもできる気になった。そこで以前から憧れていたトライアスロンに挑戦しようと言う事に。問題は、泳ぎはかなり苦手。更にまともなバイクも持ってない。要するに、できるのは走る事だけ。まぁ自転車はマウンテン・バイクでいいかと、かなり気楽に考え、それよりも泳ぐ練習。ということで、会員になっていたが殆ど行っていなかった近所のジムのプールで、泳ぐ練習を始めるとともに、ビギナー向けのレースを探し始めた。

幸いにも4ヵ月後の7月に、家から程近い距離で、波の穏やかそうなビーチで開催されるストローベリーフィールド・トライアスロンという可愛い名前のレースが見つかった。先ずは気が変わらないうちに申し込みをした。場所はと言うと、ロサンゼルス近郊のオックスナードというパタゴニアの本社があるヴェンチューラの隣町。海から少し内陸に入るとイチゴ畑が広がる。400mスイム、イチゴ畑の周りをバイクで20km、最後に海外沿いの5kmのランで締めくくる、所謂スプリントと呼ばれる一番距離の短い初心者向けのレース。

とりあえずは、25mプールを何往復もして、1km程度は泳げる準備をし、バイクは、隣に住むLAPD(Los Angeles Police Department)勤務の友人がロードバイクを貸しくれて練習も順調。更に一番安いウェットスーツをXterra のオンラインサイトにて100㌦程度で購入し一応レースに参加できる準備完了。

自転車には子供の頃から乗っているし、走るのはフルマラソンを完走して自信満々。その一方で、レースが近づいてくると、海や湖といったオープンウォーターで泳いだ経験が殆ど無いので、だんだん不安になってくる。「塩水を飲んだらむせてパニくるだろうなぁ」とか、「足が届かないところで溺れたらどうしよう」とか、不安は増すばかり。

そこで、メキシコに住む沖縄の離島出身の親友にメールをし、海での泳ぎ方のコツを請うと・・・子供の頃から銛で魚を突いて食料を確保していた海人(ウミンチュウ)らしく、「簡単だよ、波の上がり下がりを見て、うねりが上ったときに一気に沖に向かって泳ぐんだ」との事(正直、こういうアドヴァイスだったか、今となっては良く覚えていない)。そもそも、メールで泳ぎ方を教えて貰おうという試みに無理があったようで、不安は一向に解消されないままレース当日を迎えることに。

レース当日は、波の穏やかな快晴、絵に描いたようなカリフォルニアの夏。実は少し前に、よせばいいのに、サンタモニカの隣のベニスビーチという所で開催されるロサンゼルス・トライアスロンという大会を見に行った。当日、海は大しけで背丈ほどの波がビーチに次から次と打ち寄せ、選手たちは最初の波を超えるのに一苦労。中には制限時間内に最初の波を越えられずDNF (Did Not Finish)になった選手も。スイム・バイク・ランのレーニンに励んだ結果が、海に出ることも出来ずに敗退では悲しすぎ。このシーンが海に対する恐怖と不安を増幅させる結果に・・・ 

一方、ストロベリー・フィールドはというと、打って変わって穏やかな波で、多少ながら気持ちはリラックス。とは言うものの、泳ぎが得意ではないのは紛れも無い事実。緊張のため心拍数は上り、口が渇いた状態でビーチで合図を待ち、いざスタート。

スイムは400m。一旦、西に向かって沖に出て、ブイを廻り北に方向に転換し、再度ブイを越えて東方向にあるビーチに戻るルート。他の選手に蹴られないよう、周りに気をつけながら、無我夢中で泳ぐ。時折、海水で咽ながら何とか進み続けること10分ちょっと。二つ目のブイを曲がった頃には、すっかり曇ってしまったゴーグルに正面から当たる日光が乱反射して、まったく前は見えない。ゴーグルの曇り止めなんていう気の効いたものは使っておらず、スイムの前に唾で代用。泳ぎながらゴーグルをクリアーするような高等技術は当然持ち合わせていない。

殆ど目をつぶった様な状態で、半ばパニック。足が着くのを期待して立ち泳ぎをしてみたり。海で目が見えないのがこんなに怖いものかと思い知らされる。実際には、おそらく2~3分の出来事だったのだろうが、怖いのなんの。漸く足が砂地が触れた時の安堵感は数年たった今でも鮮明に記憶に残っているほど。

漸く陸に上ったはいいが、酸欠と海水の大量摂取で吐き気に襲われること数分。何とかウェットスーツを脱ぎ、バイクに乗り換えイチゴ畑へと。涼しい風を浴びるうちに吐き気はなくなり、20kmのバイクを快走。この間の記憶は余り無い。最後に気温が上ってきたビーチ沿いを5km。これを以ってデビュー戦は、恐れていた海も何とか凌ぎ、ライフガードのお世話になることも無くめでたくゴール到着。

初トライアスロンの感想はというと、正直、「スイムはツライ、海は怖い、見えないのは更に怖い、溺れないように泳ぎ切るので精一杯、吐きそう」と余りぱっとしたものではない。その一方で、怖いもの見たさで参加した初レースを無事乗り越え、思い描いていたクールなトライアスリートからは程遠い出来ながら、達成感は大きい。数日後には、もう少し頑張ってみようと既にかなり前向きになれた。流石に自分のバイクを持っていないとトライアスリートとは呼べないので、まずはバイクを買て・・・と少しずつトライアスロンの道に嵌っていく。

ここから、鉄人レースとも呼ばれる、アイアンマン・トライアスロン完走までの長い道のりが待ち受けているのだが、それは未だ随分先の話。その前に、アメリカで一番タフなトライスアスロンと呼ばれるレースが待っていた・・・ 

ワンポイント・アドヴァイス

1. 泳ぎ方は二の次

トライアスロンは、様々な装備が必要で、ただでさえ始めるハードルが高いのに加え、スイムは多くの人が苦手とする難関。テレビでの中継などを見ると、みなクロールでガンガンと泳いでいる。私もレース参加前は、平泳ぎでも大丈夫かなぁとか考えていたが、実際に参加してみると(私のような)後方集団を形成する素人は、制限時間内に泳ぎきることが第一目標。平泳ぎはもちろんの事、長い距離のレースでは、背泳ぎとも言えない状態でラッコの様にプカプカ浮いて休憩している人も見かる。更にブイにつかまって息を整えるのもレース規定上はOK。誰も教えてくれなかった事だが、気合を入れて泳ぎ続ける必要がないと分かるだけで、随分気持ちが楽になる。また、クロールは前が見難いので、オープンウォーターで大分練習をしないと、どんどん曲がっていってしまう。一方、平泳ぎは前方確認が簡単。初めてのレース参加の方や、トライアスロン始めたいけど、スイムがなぁ・・・とお考えの方は、取り合えず、どんなスタイルでもいいので、溺れずに時間内に泳ぎきることを目標にして気楽に始めてみることを勧め。

2.ゴーグルは大事
初レースの教訓からゴーグルの重要さを痛感。曇り止めの良く効いた、顔にフィットするものは非常に大事。長い間一つのゴーグルを使い続けると曇り止め機能が落ちるので、普段のプールの練習では古いゴーグルを使い、レース用には出来るだけ新しい状態で使うのが望ましい。

それでは、楽しいレースを!

By Nick D.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?