愚行権

当然のことながら私は死にたかった
大切なものをなくしたときに
私は誰のためでもなく
とにかく死を望んだ

償うこともできないなら
責任をとって辞任いたします
そのくらい私の存在は軽く
薄っぺらいものですから

そう思っても現実は不自由
私は愚行権の行使も許されず
生きなければいけないとのこと
少し融通きかせてほしいものだ

やむを得ず私はここにいる
生きて憶えていることが誰かを生かす
そんな詭弁を杖のようにして
仕方なくこの身を支えている

意気地なしと笑いたければ
是非とも盛大にどうぞ
一瞥もせず無視していただいても
あるいは汚い物を見るようにするもよし

今だってそう
無意味なことを繰り返しています
伝わらない言葉で手紙を書き綴る
少しの色をつけて手紙を送りつける
返事など来ないと知りながら

自分の価値などそんなところ
自分がしでかしてきたことの責任くらい
きちんととりたい所存でおります
詰るような返事でも来たらいいのに

というわけで本日も
私は生存し続けております
死にたくなるような心を未だ抱いて
理解されることのない言葉を書きながら
いつか来る終わりに向かいながら

(2023.10.30.10:11)