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遠いところまで行こうと言った


一緒に遠いところまで行こう

そう言った。
体を前に出して、マイクをぎゅっと握っていた。

何かあったら、彼らの声を聞いた。何もなくても聞いていた。
彼らの姿を見て、ああ私も前に行かなきゃと思えた。

初めて彼らを私の眼だけを通して見たときは息ができなかった。
体は緊張のあまり止まっていた。

ずっとずっと憧れていた彼は画面で見たのより何倍も素敵で、表情が豊かで、自信に満ち溢れていて、大人だった。彼は私が信じていた通り現実世界にいた。

目が合ったときは心臓が止まった。
恥ずかしくて私の前にいた人に隠れたら、彼がクスっと笑ったのが見えた。

彼の一挙一動を見逃さないように、私は一生懸命になった。

3日前から準備をして、一番可愛くなれるワンピースを着て、お気に入りのイヤリングを付けて行ったけれど大丈夫だっただろうか。彼の目に映った私は「僕たちの大切なファンのみんな」の一人だっただろうか。

最後に彼は「一緒に遠いところまで行こう」と言った。

行きたい。どこまでかはわからない。

けれどとても好きだから、たまらなく好きだから、ずっとずっと彼らを見ていたい。一緒に遠いところまで行くのだから、追いかけるのではなくて横にいたい。

彼らがひとつ成し遂げるごとに、私も何かを手に入れたいし、彼らが努力を積み重ねているなら私もそうしたい。横にいるというのは、物理的な横ではなくて、同じことをするということ。

たどり着くのは同じ「遠いところ」なのかはわからない。

けれど彼らにとっての遠いところは、私にとっての遠いところのように今は手が届かない、でもいつかはと思う場所なのだろう。

彼が一緒に遠いところまで行こうと言ったのだから、私も早く行かなきゃいけない。



ちょろい女子大生の川添理来です。