見出し画像

不妊治療と仕事の両立について

自己紹介シリーズの途中ですが、女性のキャリア というテーマについて
「不妊治療と仕事の両立支援」という点で書いていこうと思います。

また、現在冬に開催する「不妊治療と仕事の両立支援」に関するイベントに向けて、アンケートを実施しています!
イベントはキャリアコンサルタント、企業人事、ハローワーク職員、大学職員など皆さんの身近で仕事や就職の支援をしている人が参加するものです。
支援者として、不妊治療と仕事の両立を支援することについて検討してもらいたいと考えています。

アンケートは現在不妊治療をしている方、過去に治療をしていた方向けの内容です。現在働いていないという方もOK!パートアルバイトもOKです!

アンケートは【匿名OK!】【会員登録なし!】ですので、お気軽にご回答ください。

不妊治療の大変さを想像できますか?

皆さん、不妊治療と聞くと「あ~大変だね」「可哀そう」「え?そんなことしなくても妊娠するでしょ」「治療したらすぐ妊娠するんだよね!頑張って!」とイメージする方が多いと思います。

現実は全然違います。

現在不妊治療をしている夫婦は、5.5組に1組と言われています。
体外受精で出生した赤ちゃんは14人に1人です。

皆さんの周りでも実は不妊治療を経験している方がいる可能性があります。

では、不妊治療は何が大変なのでしょうか。
大体下記の5点にまとめられると思います。
①通院の大変さ
②メンタルの大変さ
③身体的苦痛による大変さ
④周囲の理解不足による大変さ
⑤治療したからと言って妊娠できるとは限らない大変さ

①通院の大変さ

不妊治療はいくつかの段階があります。
・タイミング法
・人工授精
・体外受精、顕微授精

タイミング法は、医師によって妊娠しやすい日を指示してもらい、そこに合わせて性交渉をするものです。
人によっては卵を育てたり、排卵を促すお薬を併用する方もいます。
不妊治療のファーストステップとして使われる方法です。

人工授精は、男性が自己採取した精子を調整して女性の子宮内へチューブを使って入れる方法です。調整した精子を直接注入することができるので、性交渉にハードルを感じている夫婦や、男性不妊の夫婦に使われる方法です。

体外受精は、女性の卵巣から穿刺して採取した卵子と、自己採取した精子を使って体外で人工的に受精させる方法です。受精卵が無事にできたら、それを改めて女性の子宮内にチューブで移植します。
顕微授精は、体外受精と大きくは変わりませんが、男性不妊の夫婦や受精障害がある場合に、卵子に直接精子を注入し受精させる方法です。

どの段階でも通院は必要不可欠になってきます。特に通院負担が大きいのは女性です。
タイミング法や人工授精の段階では、女性の排卵日を予測するために高頻度での通院が求められることもありますし、「明日また来てください」と言われることもあります。
仕事をしている方にとっては、「明日来てね」という言葉はとても負担です。シフト制の勤務形態の方もいますし、大事な会議が入っているかもしれません。
職場の上司や同僚に頭を下げて休みを確保することに、強いストレスを感じる方も多いです。

また、このように通院スケジュールでの大変さだけではなく、”待ち時間”という問題も厄介です。
人気のクリニックになると待ち時間が2時間~3時間ということも通常です。
「半日休みで大丈夫かな~」と思ったら、全然間に合わないということもあります。通院時間が読めないということも大きなストレスであり、通院の大変さの一つです。

さらに、体外受精になると卵子を育てるために毎日注射を打つ必要がある方もいます。
中には自宅で自己注射ができる場合もありますが、自己注射が不安な方やクリニックの方針によっては毎日注射のために通院する必要もあるのです。
これをフルタイムで働きながら行うこと、皆さんは想像できますか?

②メンタルの大変さ

これは言わずもがな不妊治療は精神的にとてもハードなものです。
性交渉で妊娠できないこと自体が「自分は妊娠できない」「人間として欠陥がある」と思っている方も多いです。
親戚の集まりや会社の同僚から「子どもの予定はないの?」と言われるつらさ、友人たちがどんどん妊娠出産していくのに自分は・・・と考えてしまう孤独感。
街中で見かける妊婦さんや小さな赤ちゃんを敵視してしまう方も、中にはいらっしゃいます。
「不妊治療をしている」と他者に伝えると「女性側の問題」と言われることに苦痛を感じる方もいます。
(ちなみに不妊治療をしている夫婦の、不妊原因の半数は男性です。当たり前です。男女での治療なので原因は各々にあるのは当然です。)

このように外部からの刺激だけではなく、夫婦間の温度差でも精神的苦痛を感じている女性は多いです。
女性が「今日医師から排卵日が近いから性交渉するように言われた」と言っても、男性が「疲れたから今日は無理」と言って断ったり、女性が不妊の原因を探る検査をたくさんしているにも関わらず、男性は精子検査を嫌がって受けてくれなかったり。
「子供が欲しいと思っているのは私だけなのかな?」と思い悩む女性もいますし、不妊治療に対する姿勢が違いすぎて離婚する方もいます。

このように不妊治療は精神的苦痛がとても大きいのです。

③身体的苦痛による大変さ

不妊治療は身体的苦痛も大きいです。
・痛みを伴う検査
・卵子を育てるための服薬や注射
・卵子を採取する【採卵】の痛み
・受精卵を戻す準備のための服薬

上記の苦痛の中でも、多くの人がハードルに感じるのは【採卵】だと思います。
これは体外受精や顕微授精で行われるもので、女性の膣から針を入れて、卵巣を刺し卵子を直接取り出すものです。
静脈麻酔を使えるクリニックもありますが、局所麻酔や麻酔無しで行うクリニックも多いです。
筆者は静脈麻酔と無麻酔で採卵を行いましたが、無麻酔の採卵は呼吸を整えるのが大変な痛みがありました。
採卵後も翌日までは腹痛があり、歩くと腹部に鈍痛が生じるほどでした。
想像できますか?
麻酔をせずに体内の臓器に針を刺し、内容物を取り出す行為…。
しかも、1度の採卵でたくさん卵子が取れる方は良いですが、数が少ない方は毎月採卵をしないといけない場合もあります。

さらに、採卵に向けて注射をしないといけないと前述しましたが、筆者の場合は毎日自宅で自己注射をしていました。
予防接種で使うような普通の注射器で、自分のお腹に注射をします。
これがとても痛くて、あざができてしまうことも良くあります。
その他、服用する薬による副作用で苦痛を感じる方も多くいます。

不妊治療の身体的苦痛が大きい理由としては、これらの治療が1回だけではなく妊娠するまでずっと続くことです。
終わりの見えない治療。これを続けていくことの身体的苦痛、想像してみてください。

④周囲の理解不足による大変さ

不妊治療の本当の大変さを理解している方は、経験者や関係者以外ではなかなかいないと思います。
それによって当事者が何気ない言葉で傷つくことや、苦しむこともあります。

筆者の実体験ですが、当時勤務していた会社の上司に「不妊治療をしたいから仕事を調整したい」と伝えたところ「今業務が立て込んでいるし、半年後なら良いと思う」と言われ衝撃と共にとても傷つきました。

「え?なんでダメなの?」と思った方もいるでしょう。
想像してみてください。
会社の上司に「不妊治療をしたいから仕事を調整したい」と申し出る時点で、こちらはとても切羽詰まっている状況なのです。
また、妊娠できるタイミングは1年間で12回のみ。
それを「半年後で」と言える想像力の欠如には驚きました。

他にも「不妊治療をしたいから仕事を調整したい」と申し出た際に、「妊娠の仕方も知らないの?(笑)教えてあげようか!」「とにかく体を冷やさないようにしたら良いよ」「排卵日2日前が妊娠しやすいらしいよ!」「子供は授かりものだし、気にしなかったらその時に来てくれるよ~」と言われたという声も耳にします。
良かれと思っての言葉なのかもしれませんが、不妊治療をしている当事者にとってはとても傷つくものですし、それによって会社を休みにくくなり、結局退職した方もいます。

子供を持つ女性への職場でのサポートや制度は徐々に整ってきました。
また、子供を育てることの大変さは経験している方も多く、想像しやすいということもあります。
一方で不妊治療についてはなかなか理解や認知が進まず、苦悩する方も多いです。
さらに、不妊治療は「病気ではない」という扱いで、会社を長期間休んでも傷病手当や病休を使えないという不公平さもあります。
少しずつ周囲の理解や制度が整って、治療する方が安心して治療できる世の中になってほしいです。

⑤治療したからと言って妊娠できるとは限らない大変さ

「不妊治療をすれば100%妊娠するんでしょ?」「治療するってことはすぐ産休だよね?」こう思ってしまった方は、この先を熟読してください。

治療したからといって治らない病気は山ほどあります。
不妊治療もその一つです。
治療したからといって、すぐに妊娠できるものではありません。
何年治療しても妊娠しない方もたくさんいます。

体外受精や顕微授精で受精卵を子宮に移植しても、妊娠できないことは山ほどあります。一度や二度ではありません。
そのたびに治療当事者は傷つくのです。
メンタルどん底になるのです。
生理予定日が近づくと「今回こそは妊娠しているかな?」とソワソワして待っていても、生理がきてしまい「私は妊娠できない体なのか・・・」と自分を責める人もいます。

また、見過ごされがちですが【不育症】という方も多くいます。
妊娠しても何度も流産や死産を繰り返してしまうという病気です。
体外受精や顕微授精で「やっと妊娠できた!」と思っても、赤ちゃんが大きくならなかったり、感染症などに罹患して流産や死産をしてしまうこともあるのです。
筆者も1度目の体外受精で妊娠しましたが、赤ちゃんが大きくならず流産をしました。

流産や死産の喪失感はなかなか想像できないと思います。
幸せな気持ちから一気にどん底に突き落とされる感覚です。
少し前まで「妊娠したんだ!おめでとう!」と言われたのに、少し前までは悪阻があったのに・・・!なんで!という悔しさや悲しさなど、色々な感情が渦巻くのです。
初期流産の原因は、大半が赤ちゃん側の染色体異常と言われています。
ただ、少しの間でも命を宿らせた母体である女性としては、「自分の子宮が悪かったのかな」と自分を責めてしまうものです。

不妊治療と不育症治療は自己肯定感を保つのが、とても難しいです。

周りのちょっとした配慮や、職場の支援体制、夫婦間の相理解があれば、もしかしたら少し前向きに治療を受けられるかもしれません。

どうか、職場の同僚や部下、上司が不妊治療をしている状況である場合は、今回の記事の内容を思い出して接するようにしてください。
自分の憶測や知識で、その相手に諭したり、アドバイスをするのではなく、当事者の声に耳を貸してください。
丁寧に傾聴をして、当事者が求める支援を聞いて検討してみてください。

企業が子育て支援に力を入れるのと同様に、不妊治療をしている人に対する休暇制度や時間単位有給の取得推進など、使える制度を増設したり、整えてほしいと思います。
また、制度の整備だけで完結せずに当事者の業務負担の見直しや、周囲の理解促進も合わせて遂行していただけると、当事者の負担感は軽減されます。

どうか不妊治療が理由に退職する人が、一人でも減る社会が来るよう心から祈っています。

#女性のキャリア

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートは不妊治療で悩む方のキャリア支援をするための活動に、充てさせていただきます!